加藤嘉一「アメリカ社会における“親中度”は深いレベルにあります」

週プレNEWS / 2013年4月1日 14時0分

アメリカと中国に挟まれる日本にとって、両国の関係は決して他人事(ひとごと)ではありません。「日米同盟があるから大丈夫」というような単純な時代は、とっくに終わっているのです。

中国の第12期全国人民代表大会で、習近平(しゅう・きんぺい)氏が国家主席、李克強(り・こくきょう)氏が国務院総理に選出され、新体制が正式にスタートしました。外相には元駐日大使の“知日派”王毅(おう・き)氏が就任しましたが、米第2次オバマ政権との関係がどうなっていくのか、両大国に挟まれる日本も注目して見ていく必要があります。

表向きは牽制し合う米中ですが、本気でケンカをするつもりはありません。このたび、外相からワンランク上の国務委員(外交担当)に就任した楊潔チ(よう・けつち)氏は3月9日、国内外のメディアへ向けた記者会見で、「米中はイデオロギーの違いを乗り越え、旧態依然とした観念を捨て去り、相互の核心的利益と重大な関心事を尊重するべきである。アメリカには、特に台湾などの敏感な問題を妥当に処理し、中国と共に新しい形の大国関係を構築していってほしい」と述べています。アジア戦略を重視するオバマ大統領は、中国政治の不透明さや軍事的拡張を引き続き警戒しつつ、国際的なルールを守る“秩序ある国家”になるよう協調を促していくことでしょう。

そのアメリカが懸念しているのが日中関係。ぼくが話を聞いた外交関係者たちの多くは「第2次オバマ政権最大の外交案件は尖閣をめぐる日中関係」と語っていました。

安倍総理は中国に対して強硬姿勢を見せていますが、それが必ずしも中国との関係悪化を招くとは限りません。中国の初代国家主席の毛沢東(もう・たくとう)が、タカ派と呼ばれたアメリカのニクソン元大統領を「本音と建前を使い分ける左派の連中とは違う」と評価した、という逸話もあります。曖昧に妥協するのではなく、言いたいことを言い合ってこそ建設的な外交関係が築けるのだと毛沢東は考えていたのでしょう。

日本の民主党政権は発足当初、「内政干渉はしない」と、中国側を大いに期待させるような発言をしました。しかし、一貫しない政策や不安定なガバナンスが原因で支持率は低下し、それとともに結局、日中関係は悪化しました。だからこそアメリカも中国も、安倍政権の急進的な面を警戒しつつも、一方で期待しているというわけです。




ただ、ひとつ気になるのが米大手メディアの“親中”ぶりです。代表的なのが『ニューヨーク・タイムズ』で、以前からその傾向はありましたが、最近は特に中国に同情的な論調が目立つ。尖閣問題にしても、日本は(結果はどうあれ、狙いとしては)情勢を安定させるべく国有化に踏み切ったわけですが、同紙は「日本はトラブルメーカー、中国は被害者」という書き方をしました。

メディアだけではありません。ハーバード大学における知日派ですら、「日本は何をやっているんだ? 領土問題の存在を認めないと何も始まらない」とぼくに苦言を呈してきました。現場の皮膚感覚として、アメリカ社会における“親中度”は深いレベルにあります。

この背景に何があるのか? まずは米メディアにユダヤ系が多い現状が挙げられる。かつてナチスに迫害を受けたユダヤ系の人々は、戦時中の日本と中国の関係をそれと同じようにとらえ、同情的な感情を抱いている。それに加え、米中は共に戦勝国で、日本から直接攻撃を受けたという共通意識がある。

こうした理由から、中国に対する同情論が広まり、昨今の米中関係の緊密化の流れのなかで“世論の親中化”が派生的に起きている。以前、本コラムでぼくは「アメリカが日本の右傾化を警戒している」と書きましたが、それは日本のアメリカに対するスタンスではなく、中国への姿勢を見て「右傾化」と判断している、ということなのです。

多くの日本人が「日米同盟」に過剰な期待感を抱いているようですが、なぜ変わりゆく状況に危機感を抱かないのか、逆に教えて!!

今週のひと言




アメリカの“親中化”という現実を




日本人は直視する必要があります!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!

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