「カリスマ内定者」という言葉に微妙にイラッとくるのはなぜだろう?

週プレNEWS / 2013年4月4日 6時0分

人気企業の内定を複数もらった「カリスマ内定者」は、かなりおいしい思いをしている?

来年3月に卒業する学生たちの就活が、本格化してきた。ところで近年、人気企業から複数の内定を獲得できた学生は、就活生の間で「カリスマ内定者」と呼ばれ、憧れの存在となっているのをご存じだろうか。……ってこの時点で「ケッ!」と思った皆さん、もうちょい辛抱を。この後もっとイラッとする話をするので(笑)。ではさっそく、「カリスマ内定者」の話を聞いてみよう。

今月より大手代理店で働くK君(3月にA大学を卒業)は、ほかに大手PR会社、大手ゼネコンなど計5社から内定を得た、自他共に認める「カリスマ内定者」だった。服も髪型もそれなりにおしゃれだけど話し方はとてもマジメなA君は、卒業を控えた3月になっても「後輩の指導」に忙しかったという。

―“指導”ってどんな内容を?

K君「基本は、僕がどういうふうによい結果を出せたかって話ですね。昨年の秋は志望動機の話。12月から先月まではエントリーシートの書き方で、今の時期は面接の話が中心になってきます」

―面接の指導って何をするの?

K君「まず、みんなの勘違いを正すことからします。例えば、みんな『自己アピールしなきゃ!』って思うあまり、サークルで幹事長だったとか、バイト先でリーダーだったといった話を必死に語って“即戦力”をアピールしがちなんですが、面接官にとっては『学生レベルのアレができる、コレができる』なんてうっとうしいだけだよと。あと、自己アピールを“ストーリー仕立て”にしなくちゃいけないと思って、『情熱大陸』みたいな『挫折をバネに成長』って話をみんなよくしちゃうんですが、受験の失敗とか、バイト先で上司に怒られた程度の話をドラマチックに語られても、やはり面接官にはうっとうしいだけだよと。そんなことよりも、素直さとか適応力とか明るさを、“さらっ”とアピールしたほうがいいよって」

―(K君、頭いいじゃんか!と感心しつつ)“指導”はどういう形式でやるの?

K君「こないだは、渋谷の喫茶店に20人集めて。応募は100人以上きちゃって抽選したんですが




―100人応募? どうやってそんなに集まるの?

K君「僕は、企業の人事担当者も見ることを想定して、大学2年のときからフェイスブック(以下、FB)を続けているんです。今はけっこうみんなやっていますけどね。で、社名ははっきり書かないけど内定状況も書いていたら、FB友達経由で学内にどんどん広がって、同じ大学だけど知らない人からも就活相談が殺到して、だったら皆さんの熱いご要望にお応えして、セミナーでもやってあげましょうかって流れになったのがきっかけです。だから去年は同じ学年の人たちが対象だったけど、今は1年下の3年生が中心なんです」(←だんだん得意げになってくるK君)

―“抽選”ってどうやるの?

K君「やっぱFBで写真見て、かわいいと優先的に選んじゃいます(笑)。でも、すごくかわいいと直接メールして『メールだと伝わりづらいから直接会おうよ』みたいな感じにもなりますが」

―ずばり聞くけど、その相談にってるうちにヤレてるでしょ?

K君「そうですね。でも僕は6人ですけどね」

―(な、何ーッ!!と内心思いつつ)あの、“僕は”って?

K君「僕の友達の『カリスマ内定者』と呼ばれるヤツの中には10人以上ってヤツもいます。時々、各業界の内定者が集まって“合同セミナー”もやっていて“横のネットワーク”もあります」

***

それから2週間後、渋谷の喫茶店で開催されたK君主催の“セミナー”をのぞきに行ってみた(記者は、近くの席で普通の客のフリして座っていただけだが)。参加学生20人。かわいい女子もいる。

参加学生「D社とH社とT社だと、どこが一番働きやすいですか?」

K君「同じ業界でも社風はいろいろあるからさ。例えばD社は案外上下関係がはっきりしているけど、H社は風通しがよかったりとか」

(それって単に自分が会った面接官とOBの印象だけじゃねーか!と内心つっこんだりしつつK君のレクチャーを聞く木曜午後3時)




■SNSがカリスマを大学内に生み出す

ビジネス系ライターの片岡裕氏は、K君のエピソードを踏まえて、こう語る。

「昔から、OB訪問に来た就活中の学生に“盛りまくり”の自慢話をし、しかも相手が女子学生だと口説きまくる若手社員なんてたくさんいましたよ。むしろ、ネットが出てからは『○○社の××ってヤツが』みたく個人名で悪評が広まっちゃうので、以前よりおとなしくなっている印象さえする」

就活生を相手にすると、誰もが“盛りがち”になるわけですね。

「これには大きくふたつの理由があって。ひとつは、何も知らない就活生相手だと自慢し放題ということ。もうひとつは、内定学生はもちろんですが、入社1、2年目の社員だって『誇れる自分の仕事』などまだ何もないわけで、具体的な仕事の話では“自慢”にならないから、つい会社とか業界の、ムダにスケールの大きい話ばかりしてしまう。でも、そんな話でも就活生は感心してくれるんだから、ストレス発散には最高でしょうね(笑)」

しかし、K君のような「大学内でカリスマ化」というのは、やはり最近の現象のような気がする。

「もちろん就職氷河期の影響はあるけど、やはりK君も利用するSNSの普及が大きいでしょうね。というのも、昔からの学内の人間関係、つまり、いつもつるんでいる仲間だとそんな自慢ばかりできないし、サークル内でも、そんな何人もの女子に手を出せない(笑)。でも、SNSなら大学という空間がベースですが、知らない学生とも大勢知り合えるし、大学に行かなくても簡単に連絡をとれる。そして特にFBは、『自慢をしたい人』『その自慢を聞きたい人』のマッチング能力が非常に高い。まさに、今のK君のような人にとって最強のアイテムですよね」

最近は、「カリスマ内定者」チームで“有利な合コン”をこなす日々のK君にイラッとくる読者も多いかもしれないが、一方、彼は現状に極めて冷静だったりする。

「僕も今はカリスマかもしれませんが、4月からは組織の底辺ですから。今のうちに楽しんでおこうと思っています」

なんだかますますムカつくけど、これだけ優秀なK君、会社に入ってもけっこうしたたかにやっていきそうな気もするのだけど、皆さんはどう思うだろうか?

最後に。当然だが、有名企業の内定を複数獲得した学生が皆、K君(とその仲間たち)のような「おいしい思い」をしているわけではない。有名企業内定者がさほど珍しくない大学だったら、彼のように学内で「カリスマ化」されることもないわけで、同じ大学内に「有名企業の内定学生」と「まったく内定を得られない学生」が同居する、言い換えれば「内定格差」が生まれやすい一部の大学でしか、K君のようなパターンは生まれないことだけ、念押ししておきたい。どうぞ誤解のないように!

(イラスト/やまのうち直子)

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