『パズドラ』の祖、ガンホー・森下一喜社長「パズドラは課金したい人だけ課金してくれればいいんです(笑)」

週プレNEWS / 2013年4月15日 12時0分

「ブームがすぐに終わるゲームもありますが、パズドラはそうならないような仕組みのゲームにしています」と語る森下一喜社長

昨年2月のリリースからわずか1年ちょっとで、1100万ダウンロード突破(3月25日現在)という激鬼ヒット中のスマホアプリゲーム『パズル&ドラゴンズ』! てことで、あり得ないぐらいブームとなっているパズドラの秘密を暴くべく、バリバリのゲームクリエイターでパズドラの制作総指揮を執ったガンホー・オンライン・エンターテイメント、森下一喜社長に緊急インタビューを敢行した!

■課金は塾システム。裏口入学はない!

―社長! 大ヒットおめでとうございます!! 今のご感想は?

「どうもありがとうございます。純粋にうれしいです」

―意外とあっさりですね。もっとこう、たぎるパッションは?

「そうですね~。素直にうれしいとしか。私は社長業そっちのけで最初から開発チームを直轄して指揮していたので、うれしいはうれしいです。けれどそれ以上でも以下でもないといいますか(笑)」

―なんか冷めてるんですね?

「そんなことはないんですけど(笑)。ただ数字的な目標は定めずに、純粋に面白いゲームをという気持ちだけで作っていたんで、パズドラのヒットはともかく運がよかったという思いが強いんです」

―でも、運だけでこんな驚異的な数字は叩き出せないですよね。

「もちろん面白いゲームだという自信はあります。でもどんなに面白いものを作ってもヒットしないときはヒットしない。あとはタイミングをはじめとしたいろいろな運がうまく絡み合って、初めて達成できる数字だと思いますので」

―しかし、いくら社長は冷静でも、社内は大盛り上がりなのでは? パズドラの大ヒットにより先月初めにガンホーの株価は時価総額4323億円となり、グリーやDeNAを抜き去るという快挙を成し遂げているわけですし。

「ところが社内も淡々としてまして(笑)。2月20日のパズドラ1周年の日は開発スタッフが集まってお祝いをしたんですけど……」

―もしや六本木やら青山のオシャレなホールを貸し切って、盛大なパーティですか?

「いやいや、社内のリフレッシュルームにコンビニで買ってきたお菓子を並べて、コーラやウーロン茶で乾杯という質素な会で。私は自分でウーロン茶注いだり(笑)」

―まさかの中学生のお誕生会レベル! 浮ついてないですね。わが週プレでも、喫煙所でたばこ休憩ならぬ“たばこダンジョン”状態の編集部員やら、5万円、10万円とレアガチャにつぎ込みまくってる編集部員もおりまして、ぶっちゃけいつ仕事に支障をきたすか心配なんですが!

「それに関しては私からはなんとも(苦笑)。でもそこまでハマっていただけるのはありがたいです」

―くぅ~、完全に言いがかりなのに大人な対応! 確かに難癖つけたものの、パズドラの課金システムは“課金・課金・課金”とゴリゴリに迫ってくる感じはなく、“課金したい人だけしたらいいんじゃない?”的な一歩引いたスタンスで、アコギな感じはしないです。

「課金システムは後づけのようなものでしたから。モンスター集めでコレクター魂がくすぐられてガチャをするという声も耳にしますが、開発側としてはコレクション性というのを強く押し出したつもりはないんです。あくまでゲームを手助けする手段としての課金という位置づけ。特にコンティニューするための課金というのはゲームセンターの手法ですし、手助けという意味合いがより強いです」

―ガチャもユーザーのプレイのサポートという意味合いが?

「そうですね。もう絶対にあのモンスター倒せないからやめようかな、と思ったときに最後の望みをかけてガチャをする。そのガチャでいい感じのモンスターが出たら、これならクリアできるかも! とリトライしてもらえますよね。われわれにとって重要なのはそこなんです。つまりガチャは、より長くパズドラをプレイしてもらうために必要なツールなんですよ。だからお金をかけて強いモンスターを集めたからって、そのまますぐに使えるわけじゃない仕様にしてあります」

―強いモンスターを使うにはチームコストを上げる必要が。そのためにはコツコツ経験値を稼いでランク(レベル)上げしなきゃいけないですもんね。

「塾のシステムと同じなんですよ。大学受験をする高校生はお金をかけずに自分で勉強してもいいし、月謝を払って塾で勉強を教えてもらってもいい。でも、合格するためにはどちらにせよ努力が必要。課金のガチャで手に入れたモンスターでも、ランク上げという努力を経てから使えるようにすることで、達成感を味わってもらいたかったんですよね。そういうのがゲームの醍醐味(だいごみ)だと考えていますので。パズドラには“塾”はあっても“裏口入学”はないんです」

■“障害待ち”は違うだろ!と(笑)

―社長のSっ気が入ってると。

「いえいえ、僕は基本的にドMです(笑)。自分がやるゲームの難度はハードであればあるほど燃えますから。でもだからこそ、自分が楽しめるゲームというのを追求したら、ゲームの仕様で多少のSっ気が出たのかもしれないですね」

―Mだからこそ作れたSゲーム!

「あっ、でもやっぱり現場の開発スタッフにはドSだと思われていたかもしれません。開発中に私が『ここは面白くないから変えよう』と言ったら、下のスタッフが『そこの仕様は、先週、社長が面白いからやろうって言ってたとこじゃないですか!』と。でも私は『そう言ったのは先週の俺。今日の俺はもう違うから』と突っぱねて、結局変更させたり(笑)。森下ふざけんなこのヤロー、ぐらいは思ってたかもしれませんね(笑)」

―社長にそんなドSっぷりがある一方で、パズドラの運営は“神運営”と呼ばれることもしばしば。サーバー不具合などの緊急メンテナンスでゲームができない時間帯ができると、ユーザーへのお詫びとして魔法石が配られています。

魔法石とはガチャをしたりコンティニューしたりする際に必要なアイテムで、有料で販売しているものだから、つまり売り物をタダで配っているようなもの!

「われわれにできるお詫びとしたら、魔法石を配るのが一番だろうと。それでユーザーが溜飲(りゅういん)を下げてくれるとも満足してくれるとも思ってませんが、素直な謝罪の気持ちを表したかったんです」

―1個85円(iOS版85円、Android版99円)からの魔法石を一気に10個も15個も配ることもあり、その大盤振る舞いに特に無課金ユーザーは食いついてますよね! むしろ今では緊急メンテが起こるとみんなウキウキになったり♪

「それは私どもとしては複雑な心境(笑)。障害は極力起こしてはいけないものですし、リリース当初は障害が起こると当然クレームが来てたんですが……。でも今ではユーザーさんたちから『障害来い来い!』とか『緊急メンテありがとう』なんて声があるぐらい。障害を起こしておいてなんなんですが、メンテを期待するのはちょっと違うだろ!と(笑)」

―そんな“障害待ち”という現象まで巻き起こしているパズドラですが、スマホゲームははやり廃(す)たりが激しいもの。もしすぐにブームが終息してしまったら、“その後”の経営の舵(かじ)取りが難しいのでは?

「確かにブームがすぐに終わるゲームもありますが、パズドラはそうならないような仕組みのゲームにしています。ですから楽観はしていないですが、そう悲観もしていません。例えば課金システムひとつとっても、先ほど申し上げたように、とにかく課金に誘導しようとするゲームとは違う方法論にしています。むしろ、実はユーザーの方々の平均課金単価が、一定金額以上にならないよう配慮してるぐらいなんですよ」

―えぇ! 株式会社という利益を追求する組織である以上、収益を少しでも多く上げようと考えていると思っていましたが。

「何も儲けたくないわけじゃないんです。ただ、よりたくさんの人に細く長く遊んでもらったほうがいい。短期間で爆発的に儲けるより、長期間にわたって儲けが出るようにしようと考えたわけです。基本無料のアイテム課金制ゲームは短期間に多額の売り上げを上げるものほど、ブームが終わるのも早い傾向にあります。課金してくれるユーザーがそれだけ早く息切れしてしまうんでしょうね。だからパズドラでは長期的に売り上げを上げられるようなゲームシステムにしているんですよ」

―お~! しかしロングタームで収益を得ようという発想は、“ゲーム自体の面白さ”によほど絶対的な自信があるからこそ!

「リリースしたらそこで終わりじゃなく、パズドラはリリース後に運用フェーズへ入っているんです。パズドラを生み出した後は、今度は長く愛してもらうように育てていく。今後もより面白くなるように開発を繰り返していきますよ。また、ゲーム内だけでなくリアルのイベントを開催したりグッズを販売することでも、パズドラを育てていきたいと思っています」

―森下社長のゲームクリエイターとしての矜持(きょうじ) 、ここにあり!

■森下一喜(もりした・かずき)




2002年にガンホー・オンライン・エンターテイメントを創業し、オンラインRPGの金字塔『ラグナロクオンライン』を日本国内でプロデュース。2011年に『ケリ姫クエスト』、2012年に『パズル&ドラゴンズ』の制作総指揮を執る

(取材・文/昌谷大介 照井琢磨[A4studio] 撮影/高橋定敬)

 

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