海保法を改正しなければ尖閣は中国・海警局から守れない

週プレNEWS / 2013年4月17日 9時0分

国を挙げて“海洋強国化”を目指している中国。3月の全国人民代表大会では「国家海警局」なる組織も発表し、尖閣をめぐる争いへの強硬な姿勢を示している。

今後、中国側はどんな出方をしてくるのだろうか? 東海大学海洋学部の山田吉彦教授はこう予測する。

「海警局は、日本の海保を調べ尽くして足りないところを加え、不要なところを削った組織です。ポイントは“警察権”を幅広く適用し、尖閣を国内法の範囲内と位置づけて行動してくるという点。例えば、尖閣近海の日本漁船に対しては、『中国領海で不法操業をしている』という名目で拿捕(だほ)し、日本人船員を逮捕して中国本土に移送、拘束する可能性もあります」

海警局の公船の一部には、軍隊に近い装備が搭載される。それが“警察権”の名の下に漁船や海保巡視船に対して実力行使してくるとなれば、今の体制のままではどうすることもできない。ただし、だからといって日本側が自衛隊を出動させても、完全に中国の思うツボだという。

「海警局は習近平国家主席が率いる行政組織で、人民解放軍とは切り離されています。それに対して自衛隊を出動させれば、中国は『日本が先に軍事行動を起こした。先制攻撃を受けた』と喧伝(けんでん)するでしょう。この場合、日米安保条約第5条(共同対処宣言)は適用されず、米軍は動けない。中国は“やられっぱなし”という立場を取って国連安保理事会に訴えつつ、国内では反日を煽(あお)れます」(山田氏)

国際社会まで味方につけられたら、もうお手上げになってしまう。元自衛隊員の自民党・佐藤正久参議院議員は、こうした中国の動きに対処すべく、海保に自衛権を付与する必要があると語る。

「これは法律戦ですから、日本側も国内法を改正し、海自と海保の役割を現状に合わせて変えていかなければなりません。自民党内では、2009年の政権交代以前から、海保に一定の条件つきで自衛権を付与する『領海警備法』という法案を国会に提出すべく議論してきました」

この案では、尖閣上陸など“明らかな意図”を持って領海侵犯する中国の公船に対し、海保も自衛権の下で、幅寄せや放水など一定の実力行使が可能になるという。

「国連の海洋法条約では、公船が他国の領海を“無害通航”することが認められていますが、これは現在の尖閣問題のような事態を想定していません。明らかに意図がある場合は“無害通航”ではないと解釈し、領海・領土を守るために海保が自衛権を行使できるという狙いです。中国の公船からヘリなどが飛び立って領空侵犯をした場合も、すぐ近くにいる海保のヘリや監視機が対応できるようにするべきでしょう」

一方、前出の山田氏は、海保が自衛隊の指揮下に入る形の「領海警備法」では、結局中国の「相手は軍を使った」という主張を招くことになるとして、逆方向のアイデアを提案する。

「私はむしろ、海保法を改正し『他国の公船を含む船舶によって、領海内で日本人の生命・財産が危害にさらされる場合は、その船舶に対して法(警察権)を執行できる』という形にすべきだと思います。その上で“海上機動隊”のような組織を創設し、自衛隊の人員をそこに“出向”させればいいのです。警察官が海外の大使館警備に赴く場合、外務省に出向するように、自衛官に3ヵ月から6ヵ月の研修を受けてもらい、海保職員として投入するわけです」

つまり、中国が海警局でやろうとしていることを、こちらも海保でやるというわけだ。

「これなら、すぐに即戦力の海保2万人体制ができる(現在は約1万3000人)。あくまで警察ですから、中国側も国際社会に『軍隊が来た』とは言えませんし、日本の漁船が拿捕された場合でも、『不法な拉致・誘拐』として逆に中国公船から救出することができます」(山田氏)

いずれにせよ法改正、そして海自と海保の連携が必要なのは間違いないだろう。

(取材・文/本誌軍事班[協力/世良光弘、小峯隆生])

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