4.21「石巻市長選」直前レポート

週プレNEWS / 2013年4月18日 12時0分

石巻ではいまだ多くの住民たちが仮設団地での不自由な暮らしを余儀なくされている。彼らが市長に選ぶのは誰かー?

甚大な津波被害を受けた宮城県石巻(いしのまき)市で、まもなく震災後初の首長選が行なわれる。震災後の対応が問われる選挙になるが、評判最悪の現職が優勢だという。なぜだろうか。現地で取材をしてみると、どうも現市長と地元業者との“ズブズブな関係”が噂されていた……。

■「仮設じゃセックスもできない。若いやつは出ていってしまうよ」

東日本大震災の津波による被害が最も大きかった宮城県石巻市で、4月21日に市長選挙が行なわれる。今回の市長選には、現職を含め4人が立候補している。ざっと4人のプロフィールを見てみたい。

現職の亀山紘(ひろし)氏(70歳)は、元石巻専修大学の教授。

続いて立候補したのは、ボランティア団体「石巻市復興を考える会」代表の藤田利彦(としひこ)氏(50歳)。藤田氏は石巻市渡波町(わたのはちょう)出身で、津波によって母親など家族を亡くしている。

次に名乗りを上げたのは、70年代に石巻市長を務めた青木和夫氏の長女で、東北大学の非常勤講師である青木満里恵(まりえ)氏(58歳)。

最後に出馬を表明したのは、前石巻市市議で、震災後に市議会議長を務めた阿部和芳(かずよし)氏(53歳)だ。

震災から丸2年がたち、市民からは思うように進まない復興についてさまざまな声が聞こえてくる。

石巻の市街地北部の仮設住宅で暮らす50代の男性がこうこぼす。

「とにかく住む場所をなんとかしてほしい。仮設住宅はあくまで仮設。おならの音すら隣の家に聞こえてしまうようなプレハブの建物に何年も住むのは、心身ともにつらい。それこそ、若い夫婦なんかは、セックスもできやしないって言ってるよ。これは笑い事じゃなくて、若い世代がこれから石巻で頑張らなきゃいけないのに、このままだと、石巻から出ていっちゃう。すでに震災前に17万人いた石巻の人口も、今は14万人ぐらいまで減っている」

住宅再建できない被災者も問題になっている。石巻で、現在も仮設住宅に住む人は1万6000人を超える。

「今後、復興住宅に移るとして、土地は市が安く貸してくれても、建物は自分で建てないといけない。でも、私ら老い先短い年寄りに銀行が住宅ローンを組んでくれると思いますか? ニュースになっていないけど、石巻の仮設から自殺者も何人か出ている。仮設から先に行く場所がない人が大勢いるから、このままじゃ、そういう人だってもっと増えてしまう」(仮設住宅住まいの60代男性)

雇用についても、かなり厳しいようだ。石巻はもともと港町で、水産加工関連の仕事をしていた人が多かった。ところが、津波で港湾機能は壊滅的なダメージを受け、水産加工場も流されてしまった。

「港の復旧が遅れているから、水産工場で働いてた人はいまだに仕事がない。仕事があったとしても、日雇いの瓦礫(がれき)処理や建築業のアルバイトくらいで、先の見通しが立たない。だから義援金とか、家族が亡くなった人であれば保険金とか、そういうお金を食いつぶしてなんとか生活しているような状況」(石巻市内のタクシー運転手)

■週プレの直撃に市長は逃亡!

告示前の下馬評では再選濃厚といわれている亀山氏の評判を市民に聞いた。

「あの人は学者だから頭はいいかもしんないけど、政治家としての才能はまるでない。あの人は、避難所にも仮設にも全然顔を出さない。顔の見えない市長。実行力がないんだよ」(市役所1階にあるスーパーで買い物をしていた50代の主婦)

「被災して、みんな食べ物も着る服もないってときに、あの人は震災当日から3日間も日赤病院に避難してたのは有名な話。何もできなかったとしても、そういうときこそ先頭に立って動かなきゃ」(40代の商店街店主)

“顔の見えない市長”という認識は、市民の間でかなり広まっているようだ。

「いや別に本人が回ってこなくたっていいよ。いろいろ忙しいだろうから。でも、市役所の職員とか市議に号令かけて、今、仮設では何が問題なのか、住宅再建では何がネックになってるのかとか、雇用のこともそうだけど、被災者の生の声を集めるぐらいはできるはず。それすらない」(石巻北部の仮設住宅の自治会長)

こうした声に対して、亀山市長も黙ってはいない。3月24日に石巻市内にあるJAいしのまきで開かれた市長選出馬の決起集会では、会場に集まった市民(9割が高齢者)を前に、こう語っていた。

「市長の顔が見えないという声がありますが、私はどうしても目立つようなことが嫌いで、運転手とふたりで避難所を歩いていました。また、復興には財源の支援が必要です。そのため、私は県と国への要望に時間を割いてきました」

だが、ある市議会議員の関係者によれば、亀山市政は自らが奔走して集めたという予算(税金)の使い道についても、厳しく批判されるべきだと話す。

「はっきり言って、亀山さんは復興の名の下に利権をむさぼる一部の連中にいいように使われている。あの人自身には、行動力もなく、政治的な理念もない。だから、“神輿(みこし)は軽いほうが担ぎやすい”とばかりに建設業界関係者を中心に地元の権力者が亀山さんを後押ししているんです。それが明るみに出たのが、『藤久(ふじひさ)建設問題』。これは、震災直後に立ち上がった『石巻災害復興支援協議会』(以下、協議会)の会長だった伊藤秀樹氏が、自分が経営する藤久建設に瓦礫処理を発注し、実際の作業は協議会が全国から受け入れたボランティアにさせておきながら、その費用を不当に市に請求していた詐欺の疑いがあるのです。しかも、請求額は約3億円にも上ります」

この問題については疑惑解明のための委員会が設けられたが、解決には至っていない。

「こんな重大な疑いにもかかわらず、いまだ伊藤氏は罰を受けていない。被害者である市が警察に被害を訴え出ないと、警察も捜査に乗り出せないのです。しかし、亀山氏は藤久問題については、口を閉ざし、訴え出ようとしていない。なぜなら、亀山市長の有力な支援者に、ある宮城県議がいるのですが、この県議は伊藤社長の身内なんです。ほかにも復興にかこつけた利権絡みのスキャンダルは、まだまだある。藤久建設問題は氷山の一角にすぎません。しかし、業界の強力なバックアップで、今回も票を集めるでしょうね」(前出・市議会関係者)

週プレは、JAいしのまきで開かれた亀山氏の決起集会で、支援者へのあいさつを終えた亀山市長に藤久建設問題について直撃した。最初こそ立ち止まって質問に答えていたものの、こちらが藤久建設の名前を出した途端、

「そんなこと知らない」

と言ったきり、週プレを無視して、まるで逃げるようにJAの建物内をあっちこっちと歩き回り、決して足を止めることなく、最後は車に乗り込んで去っていった。

■誰が市長になっても大して変わらない?

この“強力”な亀山陣営に対する3人の候補は、選挙戦をどう戦うのだろうか。

被災者でありながら、ボランティア団体を立ち上げて被災者の目線で活動を続けている藤田利彦氏に話を聞いた。

「真っ先に解決しなければならないのは住宅問題です。今、仮設住宅では、お年寄りのうつなど深刻な問題が起きています。とにかく一刻も早く仮設から住民を外に出すことが至上命題です。私は、復興住宅としてマンション群を石巻市街地の北にある開成団地という大規模仮設団地の場所に造るべきだと思います。それこそ1万人規模が入居できるマンションを建てるのです。震災のときも、開成団地までは津波は来ませんでしたから、また地震が起きても安心です」

正論だが、藤田氏は圧倒的に知名度が低い。ボランティア団体代表として関わった仮設以外の場所では、被災者にすら知られていない。

次に出馬を表明した元市長の娘である青木満里恵氏。仮設から抜ける見込みがなく、うつになる被災者への施策について尋ねると、「お年寄りが地域の人と触れ合える施設を増やしていきたい」

―うつなどになる根本的な原因は、仮設を出られる見込みがないからで、そこを手当てしなければならないのでは。

「仮設住まいの方の新しい住宅については、皆さんからいろいろ意見を集めて進めていきたいと思っています」

具体的な案が乏しいまま取材は終わった。しかし、地元の事情通によれば、青木氏は亀山氏の対抗馬になるかもしれないという。

「かつての青木市長時代の元市議や、役所のOBたちは彼女を担いで沸き返ってますよ。つまり亀山さんと同様、あまり政治的な理念のない満里恵さんは担ぎやすいってことでしょう」

最後の候補者である前市議会議長・阿部氏は出馬表明の記者会見で、「自らが先頭に立ち、厳しい現状を打破して復興を加速させる」と話し、被災地沿岸で漢方薬の生産を行なうことで産業再生を目指すとしている。

市議会の議長をやっていたのだから期待が持てるのかと思いきや、前出の市議会議員関係者が浮かない顔でこう話す。

「正直なところ、誰が市長になっても復興利権でずぶずぶになってしまった石巻を変えるのは難しいのではないか。むしろ、亀山さんが落選すると、復興は一回途切れるはずです。それほど、現在の業者と市政との癒着は強いといえます。悪い連中が私腹を肥やしてでも、復興が進むほうがいいと一瞬でも考えてしまうほど、今、石巻はひどい状況です」

震災から2年がたち被災地がメディアに取り上げられることも減ったが、やはり復興のかけ声の裏で悪い連中はうごめいているということか。

(取材・文・撮影/頓所直人)

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