北朝鮮の中国船拿捕で「中朝友好」は完全崩壊?

週プレNEWS / 2013年5月30日 12時0分

中国と北朝鮮が小競り合いをしている。

トラブルの発端は5月5日。朝鮮半島と中国に挟まれた黄海(こうかい)で、北朝鮮の警備艇が中国漁船を拿捕(だほ)、釈放の条件として5月19日の正午までに60万元(約1000万円)を支払えと船主に通告したのだ。

これに中国外務省が激怒し、20日に会見を開いて即時釈放を要求。翌21日になって中国漁船と乗員16人は無事に釈放された。結局、金は支払われなかったという。

この事件の背景について、中国に詳しいジャーナリストの富坂聰(とみさか・さとし)氏が解説する。

「中国は今年3月、国連の北朝鮮制裁決議に賛成しただけでなく、4月には国内主要銀行4行の対北朝鮮取引を中止するなどの措置も取りました。北朝鮮はそんな中国の対応に反発を強めているんです。今回の拿捕はそうした反発の現れのひとつでしょう」

ただし、拿捕トラブルそのものは珍しいことではない。あるコリアウオッチャーが言う。

「昨年5月にもやはり黄海で3隻の中国漁船が拿捕され、北朝鮮は一隻当たり40万元(約670万円)の金を船主に要求しています。ガソリン不足でろくに操業できない北朝鮮漁船に対して、中国漁船は北朝鮮の経済水域にまで侵入し、ごっそりと魚をかっさらっていく。それを苦々しく思う北朝鮮海軍が中国船を拿捕しては“身代金”を要求してきました。金が手に入らなかったとしても、船内にある網、食料品、ガソリンなどは根こそぎ没収します。北朝鮮海軍は金欠に苦しんでいますから、中国船拿捕は外貨稼ぎの側面もありますね」

とはいえ、中国がこうした拿捕トラブルを表沙汰にすることはめったになかった。中朝関係に配慮していたためだ。中国と北朝鮮は友好国というのが世界の常識。今は亡き金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)もたびたび中国を訪問していたし、中国もそんな北朝鮮を手厚く支援してきた。




ところが、今回は内外に事件の存在をはっきり伝える形で抗議行動に出ている。中国は何を考えているのか? 北朝鮮専門ニュースサイト『デイリーNK』の高英起(コ・ヨンギ)東京支局長が説明する。

「このタイミングで中国が記者会見まで開いたことに注目すべきです。国連による北朝鮮への経済制裁に同調した。銀行取引も中止した。中国は国際社会に対して、核開発をする北朝鮮とは一定の距離を取っていると表明してきたんです。そこに今回の拿捕事件が起きた。だったら、今回はヘタなかばい立てなどせずに堂々と公表し、北朝鮮にひと言文句を言ってやろうと考えたのでしょう」

では、中朝の友好はとっくに過去のものになったのだろうか? この疑問に前出の富坂氏が答える。

「友好も何も、もともと中国と北朝鮮はそれほど仲はよくないんです。北朝鮮は12億人の大国である中国をずっと警戒してきたし、中国は隣国をアンチ中国に追いやって、アメリカの軍事基地などができたら困るからむげにせず、支援を与えてきただけのこと。表向きはニコニコと握手をしている印象のある中朝でしたが、腹の中は探り合いの連続なんです。その本音が北朝鮮の核開発をきっかけに、表面化したにすぎません」

こうなると、北朝鮮はツラい。たとえ“建前”だとしても友人と呼べる周辺国が存在しないからだ。

「この数ヵ月間、北朝鮮はミサイル・核外交をしてきましたが、その結果、多くの実利を失いました。中国は離れ、韓国と共同で運営してきた開城(ケソン)工業団地も閉鎖となり、5万人の雇用と年間約80億円の外貨収入を失った。金正恩(キム・ジョンウン)は明らかに判断ミスを重ねていますね」(前出・高氏)

5月22日、さすがに焦ったのか、金正恩第一書記は自らの特使として崔龍海(チェ・リョンヘ)朝鮮人民軍総政治局長を急遽、中国に送っている。

関係修復を狙ってのことだろうけど……後の祭りなのでは?

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