GM作物調査の専門家・白井和宏が激白!「GM食品から逃れることはこれから難しくなる」

週プレNEWS / 2013年6月5日 19時0分

安全性が疑問視されるGM作物(遺伝子組み換え作物)が、日本の食卓を脅かそうとしている。我々はGM作物から逃れることはできないのだろうか。『遺伝子組み換え食品の真実』(白水社/アンディ・リーズ著)などの翻訳を手がけ、GM作物の生産、流通経路について、世界各国に現地調査に赴く、生活クラブ・スピリッツ株式会社の代表取締役専務、白井和宏氏に話を聞いた。

―GM問題について、どのような考えをお持ちですか?

「一番の問題は、本来、GM産業を管理すべき政府機関がバイオテクノロジー(バイテク)産業と一体になり、GM作物の安全性を確認するための試験を怠っていることです。それをいいことにバイテク産業は研究機関から出された研究結果に反論し、潰しにかかっています。さらに、私たちが食べている食品にはたくさんのGM原料が含まれているのに、その実態を消費者に伝える表示制度がないことも問題です」

―スーパー雑草&害虫という“副作用”も現れています。

「GM作物と自然界のイタチごっこです。すでにモンサント社は『スマートスタック』という新商品を開発しました。これは複数の害虫に殺虫性を持ち、複数の除草剤に耐性を持たせるため、8つの遺伝子を入れたGMトウモロコシです。しかし、遺伝子が作物の中でどんな作用を引き起こすのか、正確なことはわかっていません」

―日本にもGM技術を研究する動きがある。アメリカの政策に倣っているのでしょうか?

「政府は、もはや国内の農業を重視していません。現在の小規模農家が全滅しても大企業が農業に参画すればいいという考えです。農村の高齢化は激しいので、今後は農村票が選挙の大票田にはならないという政治的な判断が影響しているのでしょう。

そもそも現在のGM作物は大規模農業のための技術であり、平坦で広大な農地で手っとり早く作物を得るためのものです。日本の政府は規模拡大で競争力を高めるとうそぶいていますが、日本の農家一戸当たりの平均農地面積は2・27ha。片やアメリカはその75倍の約170ha、さらにオーストラリアはなんと1309倍の約3000ha。規模があまりにも違いますし、国土の70%が山地の日本で規模を拡大しようにも限界があります」




―日本はなぜ、EUのような厳しい食品表示をしないのですか?

「要は、アメリカ産のGM作物をスムーズに輸入して商品化するためです。表示を厳しくすれば行政も企業も仕事が煩雑になるからです」

―暗い気分です。何かいいニュースはないですかね?

「いいニュースかわかりませんが、かつて種子メーカーのトップだったパイオニア社という会社があります。今は化学企業であるデュポン社の傘下にありますが、そのパイオニア社がアメリカでもはや数%しか生産されてない非GMのトウモロコシ種子を作り続けているのです。

日本やEUから若干の需要があるためですが、バイテク産業が“保険”のために残しているのかもしれません。彼ら種子メーカーもいずれはGM技術が破綻するかもしれないと思っているはず。そのときの代替品として一般の種子を販売し続けているのかもしれません。あくまで楽観的な推測にすぎませんが(苦笑)。いずれにせよ、次々と強力なGM作物を開発し、さらに毒性の強い除草剤を使う限り、破綻は避けられないはずです」

―バイテク企業の破綻?

「いや残念ながらGM作物が破綻するということは、人体への大きな影響が明確になることです。原発事故と同様に被害者は原発メーカーでなく、市民です。その上、もしも、がんのような健康被害との因果関係が確認されても、GM食品から逃れることはこれからますます難しくなってしまいます。世界の主要な穀物輸出国であるアメリカ、ブラジル、アルゼンチンでは、ますますGM作物の栽培が盛んで、日本は世界で最も多量のGM作物を輸入しています」

―再び暗い気分です……。今、われわれにできることは?

「今なら日本でもまだ非GMの食品を手に入れることはできます。しかし食品表示を見ただけでは判別できません。その食品の原料はなんなのか、ひとりひとりが自分で判断できる知識を持つこと、そしてGMではない国産の食料を確保するためにも、TPPを阻止しなければならないと思います」

(取材・文/長谷川博一)

●白井和宏(しらい・かずひろ)




1957年生まれ。中央大学法学部卒業、イギリス・ブラッドフォード大学大学院ヨーロッパ政治研究修士課程修了。著書に『家族に伝える牛肉問題』(光文社)など

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