自民党の憲法改正案で書き加えられた「公益・公の秩序」で、表現の自由が規制される?

週プレNEWS / 2013年7月1日 18時0分

先月23日に行なわれた東京都議選で、擁立した候補者59名全員が当選するという圧勝を収めた自民党。夏の参院選でもこの勢いは持続しそうだ。

その参院選で大きな争点となるのが、自民党が推し進める「憲法改正」だろう。まず最初に、平和憲法である9条を思い浮かべる人も多いだろうが、実は自民党の改憲案を見ると、ある意味、9条より深刻かもしれない問題点が潜んでいる。それが21条だ。

現行憲法21条では、【集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する】と定めている。

これに対し自民党の改憲案では、第2項として、

【前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない】

という条文を新たに書き加えている。

注目すべきは「公益及び公の秩序」である。実はこの言葉、12条「国民の権利及び義務」でも「公共の福祉」がこの言葉に書き換えられるなど、自民党の改憲案で何度も登場するキーワードなのである。

そこにどんな意味が込められているのか。弁護士の山口貴士氏はこう説明する。

「現行の憲法にある『公共の福祉』とは、『人権相互の調整原理』です。人権同士がなんらかの理由で衝突する状況において、ほかの人権を守るための調整が必要になり、その基準を意味します。自民党の改憲草案にある『公益及び公の秩序』は“公”、つまり国が考える公益なり公の秩序からの逸脱を抑制することが前提にあり、『公共の福祉』とはまったく異なる概念です」

ちなみに、「公共の福祉」の考え方については、「人権相互の調整原理」以外にも諸説ある。例えば、国家などの共同体が定める“公共”も人権を制限できる、というものだ。この場合、自民党改憲案の「公益及び公の秩序」との違いは名称以外あまりない。

しかし、「改憲派」の論客としても知られる憲法学者の小林節慶應義塾大学教授はこう言う。

「仮にその解釈を採るとしても、自民党がこれを表現の自由を定めた21条にまで適用しているのは、見すごせません。表現の自由は民主主義を支える基本的人権の中で、最も重要な権利のひとつです。そのため、現行憲法では『公共の福祉』という縛りを入れず、無条件に保障している。ところが、自民党案はそこに『公益及び公の秩序』という概念をねじ込んできた」

これでは「表現の自由」を保証するのは、あくまで時の政府や権力者ということになり、民主主義の理念と真っ向から対立する。

「そもそも憲法というものは国家権力を縛るものであって、国民を縛るものではないのに、自民党の憲法草案は国民に憲法遵守義務を課しているなど、立憲主義の基本を否定するかのような傾向がある。そうした文脈から見ても、表現の自由を定めた憲法21条に『公益及び公の秩序』という縛りを加える自民党改憲案の意図は明らかです」(小林教授)

つまり、国が定義する「公益」や「公の秩序」を害すると判断されれば、憲法21条で保障されている表現の自由が認められない。言い換えれば憲法21条の第2項を根拠に、国には表現の自由を制限する権限が与えられる、ということだ。

はたして、この言葉の真意はどこにあるのか、参院選までに十分な説明が必要だ。

(取材/川喜田 研)

■週刊プレイボーイ28号「『公益と公の秩序』が『国民の自由』をここまで縛る!!」より

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