TPP交渉でアメリカが狙う「日本の保険業界」。儲けのカラクリとは?

週プレNEWS / 2013年7月30日 15時0分

7月23日、マレーシアで行なわれていた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉に、日本が初めて正式参加した。

とはいうものの、参加できたのは全11日間の日程のわずか2日半。しかも日本は、12番目のメンバーということで大きく出遅れている。今後、農林水産分野の重要5品目を守るため、関税撤廃の例外とするよう強く主張していく方針だが、すべての品目の関税撤廃を目指すTPPでは、厳しい交渉が予想される。

農業では守り、自動車では攻める日本。真逆のアメリカ。しかも参加12ヶ国には、それぞれ守るべき国益がある。どこで押し、どこで引くかという駆け引きが重要になってくるが、厚生労働省のキャリア官僚・K氏は、「アメリカの最大の狙いは、製薬も含めた医療業界と保険業界です」と警鐘を鳴らす。

「彼らは新薬や先端医療に関する日本の価格規制を撤廃・緩和させ、外資の参入を自由化させたい。さらに病院などの病床数(ベッド数)当たりの医師や看護師の数をアメリカ並みの基準(日本のおよそ4倍)に引き上げるよう要求すると思われます。新薬の認可基準が緩和され、先端医療も保険診療で受けられ、医師や看護師の人数が増えれば、患者にとってのメリットが増すように感じる人もいるかもしれませんが、とんでもありません」

その理由は、もちろん財源だ。

「高額な先端医療を健康保険でカバーすれば公費負担額が激増し、国民皆保険制度は破綻に追い込まれます。医師や看護師の人数が増えれば診療報酬にもはね返ります。新薬の審査基準を緩和すれば副作用のリスクも増加する。アメリカは診療報酬の基準も自由化するよう求めてきます。病院間の競争を煽(あお)るためです。診療報酬を自由に上げられれば医師や看護師の給料も上げられますから、優秀な人材の奪い合いが起きる。高額な先端医療機器も積極的に取り入れ、結果的に診療報酬の高騰は天井知らずになってしまう」(K氏)

国民皆保険制度は日本が世界に誇るセーフティーネット。これまで外資系の医療保険会社の参入が難しかったのも、この制度がしっかり機能していたからなのだ。しかし……。

「アメリカの狙いは日本の医療業界のサービス向上ではなく、診療報酬の暴騰なのです。医療費を飛躍的に上げ、日本が誇る国民皆保険制度をパンクさせたい。そうなれば日本国民は民間の医療保険に加入しなければならない状況に追い込まれる。そこにアメリカの保険会社が参入してボロ儲けしようという魂胆なのです。医療保険の分野では歴史も浅く競争力もない日本の保険会社は、間違いなく淘汰されることになるでしょう」(K氏)

時として、国家間の交渉では一手先、二手先どころか十手先まで見越す狡猾さが必要だ。一見、勝利を勝ち取ったように見えて、実は国家の根幹を揺るがす分野を抑えられていたとしたら……。日本の交渉力に期待したい。

(取材/菅沼 慶)

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