『日本でいちばん大切にしたい会社』著者・坂本光司教授が考える“正しい会社”とは?

週プレNEWS / 2013年10月21日 12時0分

「大企業じゃなくたって、日本にはこんな感動できる会社がある」と熱く語る坂本光司教授

ブラック企業がまかり通り、社員を切り捨てる企業倫理が幅をきかすこの時代に「こんな会社がまだ日本に……!?」「泣ける!」「感動した!」と絶賛される『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズで知られる坂本光司教授が“正しい会社”を熱血講義!

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四十数年、中小企業の研究ひと筋できて多くの会社を見て突き詰めた結論は企業経営の王道とは「人を幸せにする」ことだと。儲かる、会社を成長させる、有名企業になることが使命というのは違う。それは結果としての現象にすぎません。

そういう「人を幸せにする」会社を世に知らしめるために書いた本のひとつが「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズです。そこで言い続けてるのは人本経営。社会的弱者の幸せづくりのために尽力している会社ほど正しいことはないんだよと。

社会的弱者のひとつは障害者。障害者が生まれる確率は遺伝子工学的に6%ですよ。生来の身体障害や知的障害に加え中途障害もある。自分がなるか、子供がなるか、友達がなるかだから見て見ぬふりなんてできないでしょう。

同時に、うつであるとか精神障害もすごく増えている。これは今の企業社会の問題ですよ。お天道さまが高いうちには帰ってくるなと営業マンに指示する、3人でやる仕事をふたりにやらせる、ベルトコンベヤーで流れる商品をひとり1時間で20個組み立てる……とかね。昭和30年代から始まったコストダウンはやり尽くしてるのに、さらに正社員がすべき仕事を非正規社員にやらせ、社内ですべき仕事を買い叩くために海外に出す。海外だっていやがりますよ。

つまり業績とかシェアとかランク、あるいは株主とかどうでもいいものを第一目標に経営をしてる企業社会がうつをつくってるんです。

私はその逆を証明しているだけで、人を大切にしている会社で滅びた歴史はないんだよと。社員、仕入れ先、地域住民、お客さまにこの会社があって良かったと思われる経営をすべきなんです。そういう会社は業績を追い求めてないのに結果として業績も高い。株主とかは一番最後でいいんです。

業績を求める経営を破壊するのが私の使命。本を書くだけでは足りないから「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞という表彰制度も審査委員長として始めたわけです。その応募基準を見て「世の中にこれに該当する会社があるんですか?」って驚かれるけど。

例えば、リストラを過去5年間で1度でもやった会社は申請できない。障害者雇用率2.0%以下の会社も、赤字を出していたり労働災害を出した会社も認めない。審査基準では、残業は月10時間以下と定めています。

いい会社を紹介することでいいかげんな会社を排除する。人をとことん大切にする会社を増やせば、この国に世界の人々が再び魅了されるようになるんですよ。

■経営理念が「社員の幸せ」=企業風土「社会貢献」

大賞にはこれまで毎年約50社が応募してますけど、ほとんど他薦。というのは、そういう会社はそこのけそこのけとか、俺が俺がって言わないからです。「障害者雇用といっても当たり前のこと。もっとほかのところを褒めてやってください」と。本当に謙虚ですよ。

NPO法人「多摩草むらの会」(東京都。第2回「大賞」審査委員会特別賞受賞)なんかは息子さんが障害で自殺を試みてね。以後、家族が集まると、私たちが死んでからこの子はどうするんだ、今のうちに自立の場をつくろうということで会社をつくって。不況でも必要な食品をと、寒天うどんから始めて障害者の就労、自立支援をやってる。その寒天を最初に無償提供したのが本にも書いている「伊那食品工業」(長野県)です。 仕入れを頼みにいっても、払えるかどうかわからなかったら普通は取引を断られますよ。でも伊那食品の社長が「あなた方はいくら給料をもらってるんですか?」と聞いて「うちは1円ももらえる状況じゃありません。ただ、この子たちに1円でも2円でもあげたい」と答えると「では、出世払いでいい。無償提供しましょう」と。尋常じゃなく立派な会社ですよ。

伊那食品の経営理念は「我が社の目的は社員の幸せを通して社会に貢献すること」。これが組織風土や文化として根づいてる。

理念が組織文化になった事例としては「富士メガネ」(北海道。第3回「大賞」経済産業大臣賞《最優秀賞》受賞)も素晴らしい。ここに社会人学生たちを連れていったら「世の中にこんないい会社があるとは」って感動してましたよ。

発展途上国で視力検査したり、メガネをプレゼントすることは本でも書きましたが、それだけじゃなく入社試験で落ちた学生のフォローまでするんです。最近の話ですが、小学校の頃から富士メガネに憧れていたコが採用で落ちてアルバイトでもいい、憧れの企業でスタッフの方と一緒にやるのが私の誇りですと訴えた。

でも担当者は彼女から来たメールの20倍くらい返事を出してるんです。「新しい道をめざしたほうがいい。自分もいろいろあって富士メガネは3回目の職場だけど、この国には440万も会社があって、これ以上うちに固執すると幸せじゃなくなる。あなたには幸せになってもらいたい」とね。

“メガネを通じて、見る喜びに奉仕して社会の人々を幸せにする”のが経営理念ですが、この事例は会社の職務を超越してますよ。それがやれるのは社員満足度が高いからこそでしょう。

■「正しいことをしている」人を大切にする会社か?

今日お渡しした名刺ですけど、従業員7人くらいの「日新堂印刷」(北海道)という会社が作ってる。

点字が入っていて、紙はバナナの茎が原料です。アフリカのザンビアの女性たちの就業支援として、乾燥させたバナナ茎から繊維質を取り出す技術指導をしてましてね。日本で古紙と混ぜてバナナペーパーという名刺の原料にする。それに点字を視力障害や知的障害のある若者たちが一枚一枚丁寧に入れてるんです。一枚50円だけど、リピーター率は9割近いそうです。

この会社、この国の宝ですよ。潰しちゃいかん。だから消費者になることで支えるんです。本を読んだ主婦なんかも「私たちはいいかげんな会社の商品を平気で買っていました。買い物で世直しできることがわかりました」と連絡くれたりね。

日本では大きな会社ほど意識改革が難しい。それが先日、韓国のサムスン電子のお偉いさんが取材に来て「なぜ日本のP社やS社はおかしくなったのか? わが社がああならないためにはどこに気をつければいいのか? 先生、教えてください」と頭を下げたのにはびっくりしました。サムスンはそのときに話した映像を40万人の社員に見せるそうです。

日本でも大会社からの講演依頼が増えてはきてますよ。先日も従業員2万人の会社で話したら翌日、日本自動車部品工業会から「新春講演会に来てください。私たちは間違った道を歩んでいました」って電話がありました。間違った道とは規模拡大とか、いかに相手を負かすとかシェア優先の考えですね。それが多くの人を不幸にしているわけです。

本を書いたり講演をすると、スゴい数のメールやFAXが来ます。学生からは「会社の選び方が間違っていました」「人殺しをしている会社に有名という理由で入ってしまいました」と。「もう一度就職を振り出しに戻します」といった手紙もありますよ。

これまでは業種や規模、ブランド力、賃金がどうとかを物差しにした会社選びだったのがゆっくりではあるが着実に変わってきてる。やはり2年前の3・11以降の歴史的変換も大きいでしょうね。

会社を選ぶときに一番重要視すべきは本当に正しいことをしているかどうか。人を大切にしているかどうかなんです。少なくともその会社の4、5年間の状況を見て、リストラをしている会社に入ったら自分がリストラされるか、自分がリストラする羽目になる。離職率が高い会社は問題ありです。理想は5%以下ですが、私が知っているのはゼロの会社ばかりですからね。

会社を選ぶなら、できれば実際に行ってみないとわからないですよ。社員の目つきや顔つきを見て奴隷のようにじゃなく生き生きと人間らしくしてるかです。

さっき話に出た伊那食品には7000人も応募します。寒天の原料は海でとれるテングサだから泥だらけ。だけど、工場での仕事が3Kとか5Kが問題じゃないわけです。 本当に会社が世のため人のために役立っているか、そこにようやく気づき始めたという感じがしますね。

●坂本光司(さかもと・こうじ)




法政大学大学院政策創造研究科教授。講義や公務のほか中小企業の支援、紹介に各地を飛び回り、現在までに全国7000社超を訪問。講演では「リストラやるなら一緒に社長も路頭に迷え!」と経営者を一喝することも

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