言論の自由が遠のく中国メディアの実態

週プレNEWS / 2013年10月24日 12時0分

中国でメディア規制がこれまでになく活発になっている。

習近平(しゅうきんぺい)政権が、全国の報道機関の記者25万人にマルクス主義などを学ぶ18時間以上の研修後、試験を行なうと発表したのだ。

中国では、会見取材時などに記者証を示すことになっている。企業のスキャンダルを取材し、それをネタに金品をせびるニセ記者が横行したため、本物の記者を識別する目的で全国統一の記者証が2009年から発行されるようになったのだ。

この記者証は取得時こそ資格試験を設けていたが、その後の更新は5年に1度申請するだけでOKとされており、次回は来年の2014年2月となっていた。

ところが今回、習近平政権はその更新に手を入れてきたのだ。

著書に『対中戦略』(講談社)などがあるジャーナリストの近藤大介氏が、その背景を語る。

「今年5月に北京で1万人規模のデモが起きました。安徽(あんき)省出身の22歳の女のコが集団レイプされて死亡したのですが、公安当局は自殺として処理してしまった。それに対して、地元メディアが家族の証言などを基に真相を暴いたところ、北京市内の安徽省出身者が怒って暴動になってしまったんです。この背景にあるのは貧富の格差。特に安徽省のような貧しい地方は習近平体制への不満を高めている。今回の決定はこうした当局の方針と合わない報道を防ぐためのメディア引き締め策と考えられます」

拓殖大学客員教授の石平(せきへい)氏もうなずく。

「中国のメディアは、政府の宣伝機関という位置づけでした。ところが中国国内も市場経済化し、視聴率や部数を伸ばさないと生き残れなくなってしまった。そのため、メディアは民衆の声を代弁する動きを強めていました。これが習近平政権には気に食わない。それでこの夏、メディア掃討(そうとう)作戦とでも呼べる取締りを行ない、政権に不都合な発言をした人物数百名を逮捕したのです。

今回もこうした動きの一環。言うことを聞かない記者に『おまえは国民ではなく、政府のために存在するのだ』と、戒めようとしているのです」

なるほど、メディアに圧力をかけ、反政府報道を抑えようとしているわけだ。




ところが、ジャーナリストの福島香織氏はこんな証言をする。

「記者証がないということは、必ずしも取材において問題になるわけではありません。私の心証では、官僚の汚職のようなスクープを飛ばすデキる記者ほど記者証を持たない。なぜなら、それがなくても十分に取材はできるし、あったところで政府とのあつれきの原因にしかならないからです」

しかし、デキる記者であっても受難は続くようだ。

10月に政府高官の腐敗などをインターネットで告発していた広東省の新聞『新快報(しんかいほう)』の劉虎(りゅうこ)記者が逮捕され、騒ぎとなっている。罪状はデマを流布した誹謗容疑。もちろん、彼の告発は事実であり、西側メディアでは優秀な記者と称賛された。それでも、中国では犯罪者扱いとなってしまうわけだ。 また驚くべきことに、現在、中国版のツイッター「微博(ウェイボー)」では「言論の自由」という語句の使用・検索を禁止している。

さらに、習近平政権では「世論分析官」という資格を設定し、200万人もの「微博」監視要員を配置。今年9月の最高裁の取り決めでは、ソーシャルメディア上で国家を中傷したコメントに500人のリツイート、もしくは5000件の閲覧数のいずれかを常習的に超えた場合には、配信者の政治的権利を剥奪するとしている。

一般人を含めたこうした圧力に加え、さらに研修・試験が課されるとなれば、25万人の記者の萎縮が進むことは容易に想像できる。このような厳しい状況下にある中国の記者だが、案外オイシイ存在でもあるという。

「中国での記者職は案外儲かるんですよ。政権発表をそのまま報じている『新華社通信』『中央電視台』以外は政治取材にほとんど関わりません。大半は、自動車メーカーなどの取材をして、相手企業から取材の謝礼をもらってるんですよ。月給が日本円で8万円程度なのに、1億円の家を建てた人もいます(笑)」(前出・近藤氏)

要は権力に盾突くようなことさえしなければ、記者という仕事はけっこう安定しているわけだ。

試験を受けて1億円の家か、逮捕か。難しい判断なのかもしれない。

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