加藤嘉一「米債務危機は現代国家のふたつの“病”を浮き彫りにしました!」

週プレNEWS / 2013年11月11日 14時0分

世界の基軸通貨である米ドルを“人質”にして繰り広げられた、米議会での財政協議。その大混乱には、現代国家が抱えるふたつの“病”が投影されていました。

大いに混乱した米議会の財政協議。米国債のデフォルト(債務不履行)は10月中旬に土壇場で回避されたものの、半月以上も政府機関がシャットダウン(閉鎖)する異例の事態となりました。今回の騒動で、アメリカという国家、ひいては現代国家が抱えるふたつの“病”が明らかになったといえます。

ひとつは国際社会における「クレジット(信用性)危機」。先日、中国政府関係者から聞いた話ですが、米政府機関のシャットダウン中に中国で財務関係の会議を主催した際、アメリカからの参加予定者はこう連絡してきたそうです。

「Our government is closed」

つまり、シャットダウンの影響で渡航費が捻出できないため出席できない、というわけです。こうした話を見聞きした中国の政府関係者は、混乱するアメリカの状況を見て心底呆れ、ばかにすらしていました。普段は中国の外交姿勢や政治体制に文句を言うくせに、自国の統治もままならないじゃないか……と。

EUの金融危機しかり、日本の総理大臣が毎年代わってきたこともしかり、近年、世界的に「国家のクレジット危機」が続いています。仮にアメリカという超大国が今後、信用性を決定的に失墜させてしまったらどうなるか? 同盟国である日本はリスクヘッジができているのか? そんなことも考えさせられました。

もうひとつ、米議会の紛糾は「コンセンサスなき現代社会」を浮き彫りにしたといえます。

今回、野党の共和党は医療保険制度改革法(オバマケア)に大反対し、デフォルトも辞さぬ構えで激しく抵抗しました。アメリカの二大政党制においては「強い野党」の存在が不可欠ですから、与党と真っ向から対立すること自体は決して悪いことではありません。




問題は、共和党内においてもどのような方法論で民主党を説得するか、譲歩を勝ち得ていくのかといったコンセンサスがとれておらず、有効な代案を提示できなかったこと。結果的に、共和党内のティーパーティと呼ばれる強硬派の“暴走”ばかりが注目されてしまった。

次回詳しく触れる予定ですが、アメリカの世論において共和党バッシングは相当なものでした。一方、だからといって民主党が共和党との対話に成功し、何かしらのコンセンサスを醸成させたわけでもない。それにもちろん、財政危機について、与党や現職の大統領に一定の責任がないはずはありません。

英紙『フィナンシャル・タイムズ』の経済論説委員であるマーティン・ウォルフ氏は次のように述べています。

「米財政は実際には改善されており、デフォルトに陥るような状況ではない。本当の問題は、米国民がどのような政府を望み、そのためにどのように納税するか、にある」

デフォルトという最大の危機はとりあえず免れたが、どこに向かっているのかはわからない―。これがアメリカ世論の現状だと思います。おそらく、そもそも納税者の間でも「どういう政府を望んでいるのか」という点でコンセンサスが存在しない状態なのでしょう。これも前述のクレジット危機と同じく、先進各国に共通する“症状”といえるのではないかと思います。

それにしても、誤解を恐れずにいえばシャットダウンというのは新鮮な体験でした。当初、ぼくは何が起きているのか直感的に理解できなかった。日本に置き換えれば、霞が関の省庁(官僚組織)の大半がその機能を停止するような状態。常識的に考えて、日本で同じことが起きるとはとても思えません。

そんなことが現実になってしまうアメリカの政治は、やはり良くも悪くもダイナミックです。そのダイナミズムをうらやましく思わない人がいるなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も始動!

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