核燃料取り出し作業で懸念されるジルコニウム火災と再臨界のリスク

週プレNEWS / 2013年11月20日 10時0分

11月18日、東京電力は福島第一原発4号機の燃料プールにある核燃料の取り出し作業を開始した。その安全性を巡っては、計画段階から多くの声が上がっていたが、具体的にどんなトラブルが予測できるのか?

福島第一原発4号機の原子炉圧力容器設計者で、国会の原発事故調査委員会のメンバーも務めた田中三彦氏は、「ジルコニウム火災」の危険性を指摘する。

「東京電力は1533本の燃料の取り出しを約1年で終えるとしています。これは一日に4、5本の燃料を引き抜き、約5日間に1回、90トンのキャスクをつり下げる作業をするという計算。かなりの頻度といえます。

もし、その間に大きな地震があってキャスクがプールに落下したらどうなります? プールの底に大きな穴が開けば、もはや水を入れて冷却することもできなくなる。燃料ペレット(直径1cmほどの円筒状に成形された核燃料)を包むジルコニウム金属製の被覆管は800~900度くらいで損傷が始まり、燃えだすのですが、こうなるともうお手上げです。場合によっては大規模なジルコニウム火災となり、大量の放射性物質が外部環境にまき散らされることになります」

クレーンから90トンのキャスクが落下するというリスクだけではない。その前段階、燃料をプールのラックから抜き取る作業工程にも危険が潜んでいる。

「東電はプール内にあるがれきを除去したと言いますが、小さいがれきなどはまだ残っているはずです。燃料を抜き取る際、そのがれきがラックのすき間に落下し、別の燃料を覆うジルコニウムを傷つけて穴が開きでもしたら、やはり大量の放射性物質が漏れることになります」(田中氏)

同様の懸念を、中部大学の武田邦彦教授も隠さない。

「クレーン操作のミス。それが一番の心配です。2010年8月に、高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)が運転休止に追い込まれたのも、メンテナンス用のクレーンによる事故が原因でした。一部部品を炉心内に落としてしまったのです。4号機プール内には目視できないがれきがまだ残っているかもしれない。また、ラックも事故時にゆがんでいるかもしれない。もし、引き抜き作業の途中で、燃料棒がどこかに引っかかり、にっちもさっちもいかなくなったら大変なことになります。無理やり引っこ抜きでもしたら、破損しかねません。そうなれば、大量の放射性物質が出て、プールには人がもう近づけなくなるでしょう」

容器仕立てピットでのボルトの締めつけ作業後、キャスクを地上に下ろす作業もリスクだらけだ。前出の田中氏が語る。

「プールは地上32メートルの高さにあるのに、東電はあろうことか、キャスクの強度を調べる落下実験を17メートルの高さでしか行なっていないんです。これでは32メートルからキャスクが落下した場合、収納した燃料が破損したり、ふたが外れて内部から燃料が飛び出さないとは言い切れません。空気中に露出した燃料からは、近寄った人間が即死するレベルの放射線が発せられることになります」

そして、もっとも心配されるのが再臨界だ。燃料が破損してペレットがむき出しとなり、それらが重なり合うようにたまった場合、再臨界状態になるという最悪のリスクもゼロではない。ある原発技術者がささやく。

「東電は今年3月29日に作成した燃料取り出し作業の安全性に関する資料で、『再臨界はない』としています。しかし、本当にそれを信じてよいのかどうか。事実、この東電資料内に登場する原子力ムラの御用学者ですら、キャスクの落下事故に臨界安全(再臨界とならない諸条件)をきちんと確保できていない危険性があると指摘しています。そして、4号機プールには未使用の燃料が202本もあります。これは使用済み燃料と違って、これから燃えるもの。それだけに落下時、むき出しになった燃料ペレットが強い圧力で重なるなどすれば、条件によっては再臨界になる可能性は否定できません」

ジルコニウム火災に再臨界の危険性。一歩誤ると、地獄にもなりかねない危険な作業が続く。

(取材/姜 誠)

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