加藤嘉一「東南アジアをめぐる米中の摩擦は、日本にとって“追い風”です!」

週プレNEWS / 2013年12月2日 16時0分

経済圏として急速に発展し、国際社会でも存在感を高めつつある東南アジア。大国の思惑が摩擦するなか、日本はこの地域にどう関与するべきでしょうか。

日米中3ヵ国の間で、東南アジアが過去にないほど熱い注目を集めています。成長著しいASEAN(東南アジア諸国連合)は、経済的にも地政学的にも、日米中の未来にとって重要な地域になるでしょう。ぼくも6ヵ国を訪れた経験がありますが、中産階級の台頭や若い人口構成、民主化の流れなど、この地域に流れる潜在能力を肌で感じました。

11月に日本の安倍晋三首相はラオスとカンボジアを訪れ、これで就任以来、ASEAN全10ヵ国への訪問を達成。東南アジア重視の姿勢を国際社会にアピールしてきました。日中首脳会談がいまだ実現していない段階での日本側の素早い動きに対し、中国メディアは「中国包囲網だ!」と警戒感を示したほどです。

日本を牽制する意味もあってか、中国の習近平国家主席は10月2日から8日にかけ、APEC(アジア太平洋協力会議)の会合に合わせてインドネシアとマレーシアを訪問。10月9日から15日、今度は李克強(りこくきょう)首相がブルネイ、タイ、ベトナムを訪問しました。ぼくが記憶する限り、中国のナンバーワンとナンバー2が、日を空けずに連続して東南アジアを歴訪したことは過去にありません。

東南アジア重視を鮮明にする中国の狙いは、「ASEAN+1(中国)」あるいは「ASEAN+3(日中韓)」といった枠組みを構築し、自国に有利な状況をつくり出すことでしょう。

一方、日本はロシア、インド、オーストラリアを関与させた上で、最大の同盟国であるアメリカも引き込みつつ地域統合を進めていきたい。アメリカとしても、東南アジアで中国の影響力が過度に高まることは歓迎できず、ここに足がかりをもっておきたいともくろんでいる。

この地域では、米中の利害が衝突しています。南シナ海の領土問題をめぐっては、中国がベトナム、フィリピンといった当該国に「一対一の対話」を求めているのに対し、アメリカのジョン・ケリー国務長官は、「各国が国際法を尊重し、南シナ海での貿易の安全が保障されることを望む」と中国を牽制しています。

この米中の利害摩擦は日本にとって“追い風”となり得ます。

東南アジアにおける米中両国の利害と思惑を調整できる国力と意思を兼ね備えるのは、これまで企業投資や政府開発援助、人文交流などで東南アジア社会に貢献してきた日本だけ。両大国がどれほどもめていようとも、日本はこの地域における重要な会議にすべて参加して存在感を高め、東南アジアの利益を確保すべく官民一体で汗をかくべきでしょう。「真の意味でわれわれのことを考えているのは、米中ではなく日本だ」という印象を与えることが大切です。

先日、中国へ出張した際に北京大学の後輩たちと東南アジアについて議論しました。「この地域で中国は影響力を高めることができるか?」という問いに対し、面白いことに彼らは「無理だ」と即答したのです。

「国際社会で勢力範囲を広げるためには、政治力や経済力だけではなく、国境を超えて浸透していく価値観が不可欠。アメリカの『自由民主主義』という価値観は、東南アジアの軍事国家や独裁国家、社会主義国家にまで浸透しつつある。

中国が影響力を強めるためには、自由民主主義に代わる新しい価値観――それも、誰もが納得してついていきたくなる価値観を示さなければならない。しかし、現在の中国のやり方では、東南アジアに公共財をもたらすことは難しい」

後輩たちの意見にぼくも賛成です。

東南アジア問題は日本にとってウデの見せどころ。ここで存在感を示さずして、国際社会で影響力を高める方法があるというなら逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も始動!

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