これがAmazon「無人機配達」計画の全貌だ!

週プレNEWS / 2013年12月23日 12時0分

無人機は推定90×90cm程度。2.3kgまでの荷物を抱え、最長16km先まで届けることが可能。着陸するとアームが開き、荷物を自動的に離して飛び立つ

本やCDなどの商品を入れたケースを、GPSで誘導された無人機が配達してくる――。

完全にSFのような世界が、早ければ数年以内に現実になろうとしている。その計画の全貌を徹底検証した!

■誤差は推定8m四方。庭のある一軒家限定?

ネットで注文したら、無人航空機が30分以内に商品を自宅に配達してくれる!

米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEOが今月初めに発表した「アマゾン・プライム・エア」という夢の新サービス。8つの回転翼を持つ「オクトコプター」という小型の無人機が、配送センターから商品の入った黄色いプラスチックボックスをピックアップして空を飛び、配達先の玄関前に届けるPR映像をテレビで見た人も多いだろう。

発表によれば、無人機はGPS誘導により飛行し、物流センターから半径約16kmの配送範囲に、最大2.3kgまでの荷物を運ぶことができるという。

「ほぼ同等の性能を持つターボエース社製『X88-J2』という機体を参考に推測すると、無人機のサイズは縦横それぞれ90cm程度(回転翼は含まず)。高度60mから120mを最高時速48キロで飛行し、目的地上空で急降下して着陸。

荷物を切り離し、同じルートで戻る。高さ60m以上の建物や障害物を避けるように、あらかじめマッピングさえしておけばいいという至って簡単なシステムです」(航空評論家・嶋田久典[ひさのり]氏)

なんと、技術的には「至って簡単」なことらしい。

しかし、最新鋭の無人機を使ったサービスとなると、値段は相当高くなるんじゃ?

「高くつくのは配送システムの開発。アマゾンは昨年の春、物流センターの中を自律的に動くロボットを開発していたキバ・システムズ社を約800億円で買収しました。このシステムを物流センター外に拡張し、購入者の住所をマッピングする無人機配送システムを構築するものと思われます。

ただ、こうした開発費は、おそらく無人機配達というサービスのインパクトを考えれば“宣伝費”として考えているはず。ほぼ同等の『X88-J2』の場合、機体は1機3000ドル(約30万円)程度ですし、おそらくユーザー負担は年間数千円というレベルにとどまるのではないでしょうか」(嶋田氏)

そ、それは安い!




ただし、まだ法律面の整備は追いついていない。実は昨年、アマゾンより前にアメリカのロボット開発会社などがタコスを無人機で配達する「タココプター」というサービスを発表したものの、通過ルートの土地所有者の空中権など法律上の問題が浮上。現在、米連邦航空局(FAA)が2015年をメドに新たなルールを策定中なのだという。

もちろん安全性も重要課題だ。墜落により人や器物、あるいは配送商品に損害を与えた場合、着陸したところに子供が駆け寄ってきた場合、家の前に置いた荷物が盗まれた場合、悪ガキが“無人機狩り”を行なった場合、ほかの無人機との空中衝突、GPS電波ロスト時の対応行動……などなど、クリアしなければならない点は山ほどある。

ところで、当初はアメリカで開始予定の無人機配達サービス、日本に上陸する可能性は?

法的な問題を別としても、このサービスは広い一軒家が基本のアメリカ郊外での運用を前提としているため、少なくとも現段階では都市部での配達は難しそうだ。前出の嶋田氏はこう指摘する。

「無人機の着陸地点は、極端に切り立った建物の谷間などではないという条件が必要で、誤差は推定8m四方。一軒家で広い庭がないと難しく、集合住宅などは当然ムリでしょう(笑)。

仮に日本の千葉県市川市にあるアマゾンの物流センターから半径16km圏内に飛ばすとしても、都心部は難しい。また、運行可能な気象条件は風速8mまでなので、海風の吹く湾岸地帯やビル風が吹くルートは厄介です」

■物流の帝王・アマゾンの恐るべき野望とは?

しかし、実は無人機による配達というのはアマゾンだけでなく、世界的な潮流になりつつある。例えば現在、米大手貨物運送会社のUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)や中国のSFエクスプレス社も無人機を開発しているというし、ドミノ・ピザの英国法人も「ドミコプター」という無人配達機を発表済み。南アフリカでは、ビール会社が無人ヘリからパラシュートで缶を落として配達するシステムを開発中だという。

物流ジャーナリストの森田富士夫氏は、無人機配達ビジネスの実現性についてこう語る。

「無人機配達は、短時間で近所に有人配達するネットスーパーと競合する商品にニーズがある。アメリカでは大手量販チェーンのウォルマートが一部の店で宅配サービスを始めましたが、これもスーパーの宅配と競合するエリアだけにサテライトセンターを配置し、スーパーと競合する商品に絞り込んでいます。これが最も現実的な戦略ではないでしょうか」

いずれにしても、物流の帝王・アマゾンが無人機配達に本腰を入れ始めたことの意味合いは大きい。物流コンサルタントの田村隆一郎氏はこう語る。

「従来、配達というものにはどうしても人が介在せざるを得なかった。物流費のうち、配達運賃のコストは約半分を占めます。もちろん、無人機を使うにしても機械やオペレーションのコストは必要ですが、それでも運賃の大部分がいらなくなる。

本当に“物流革命”と言っていいのではないでしょうか。日本の場合、『近所の目についたらイヤだ』という人も多いでしょうから、一般消費者にすぐに受け入れられるかどうかは疑問ですが、企業や工場向けの配達なら可能性はあると思います」

おおっ! やはり日本でも、無人機が荷物を抱えて飛んでいく光景が見られる日は近いのか?

「また、実はアマゾンは倉庫内でのピッキングや梱包といったコストについても“無人化”を進めています。従来のように何千種類、何万種類の商品の中から人が選んで運ぶのではなく、ロボットが商品をピックアップし、運んでくるというシステムを一部で運用し始めているのです」(田村氏)

倉庫の中でも外でも、これまで人間がやっていた仕事をできる限りロボットに任せ、極限まで効率化を図る。一見、突拍子もないように感じられる無人機配達サービスも、あくまでもその一環だというのだ。アマゾン、恐るべし……。

(取材・文/世良光弘 頓所直人 写真/amazon)

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