「基地移設」に揺れた名護市長選。市民に広がる“静けさ”の正体

週プレNEWS / 2014年1月22日 6時0分

辺野古移設阻止を主張する現職の稲嶺進氏が再選。基地問題はどう動く?

1月19日、米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点になった沖縄・名護市長選の投開票が行なわれ、「移設阻止」を主張する現職の稲嶺進氏が、「移設容認派」で元県議の末松文信氏を破り再選。基地計画への影響は避けられない状況となった。

今回の選挙は、「県外移設」を公約にして当選したはずの仲井眞弘多沖縄県知事が、辺野古の埋め立て申請承認という“矛盾”を問うものとして全国的な注目を集めていた。

選挙期間中はさぞ両陣営や住民同士で激論が交わされたのかと思いきや、実はそうした動きはほとんど見られなかった。実際に選挙戦が始まってみても、通りを走る選挙カーの音が響くばかりで、街頭演説に立ち止まる人の姿はほとんどなかった。

本誌記者が選挙期間中の名護市を取材し感じたのは、選挙戦につきものの熱狂とはほど遠い、この奇妙な“静けさ“。その正体はいったいなんだったのか? 市民に話を聞いた。

「4年前の市長選もそうだったけど、稲嶺さんのほうは選挙の数ヵ月前から市内にナイチャー(内地の人)がやたらと増える。見たことない顔ばかりだよ。それで、住民票を移して投票するわけだ。名護市が乗っ取られた気分だよ」(末松氏の後援会会員・建設業)

告知日の1月12日、稲嶺氏の支援団体の事務所前で行なわれた「稲嶺ススム必勝出発式」に集まった人たちの中には、どう見ても“旅行者“といういでたちの、スーツケースを引く人も大勢いる。つまり連休を使い、県外から稲嶺氏の応援に来ているのだ。その数は約130人。市内や県内各所から来た人を合わせると、選挙戦初日には約450人が集まったという。

一方、稲嶺氏陣営に話を聞くと……。

「少し前から、建設関係では『末松を支持しないと仕事を回さない』という締めつけもあるようです」(稲嶺氏の選挙支部幹部)

「成人式を終えたハタチの子たちを招いて宴会を開き、さんざんタダで飲ませて、金まで渡しているらしいよ」(稲嶺氏の選挙事務所にいた主婦)

両陣営に飛び交うさまざまな怪情報。だが、「住民票を移して投票」「投票しなければ仕事を回さない」「お金を渡す」など、いずれもその事実を確認することはできなかった。誰が流しているのかはわからないが、明らかにネガティブキャンペーンともいえる噂なのだ。

こうした水面下での「噂合戦」とは裏腹に、4万6665人(1月11日現在)の有権者のうち圧倒的多数なのは、特にどちらの側にも深く入り込むことなく静かに見守っている市民だった。40代の男性(建設業)は、言葉を選びながらぽつりぽつりとこう話す。

「『基地と経済のどちらを取るか』ってことになっているけれど、どちらも深刻な問題。でも、表立って住民同士でそういう話ができない。仕事によっては利害関係がある人もいるし、会社では立場もあるからね。みんな意見もあるけど、それすら口に出せないよ」

前回(2010年)の市長選挙の投票率は76.96%、今回も76.71%と、市民の関心は非常に高かった。だが、口を塞(ふさ)がれた名護市民の間で議論が深まらない。この奇妙な静けさこそが、今回の市長選挙の“異様さ”の本質を最もよく表しているのかもしれない。

(取材/頓所直人)

■週刊プレイボーイ5号「基地問題はどう動く? 沖縄・名護市長選“大炎上”の舞台裏」より

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