「足利事件」の“真犯人”は今も野放し状態。なぜ、警察は捕まえないのか?

週プレNEWS / 2014年2月25日 6時0分

「足利事件」を取材した清水潔氏が見た、警察のずさんな捜査と司法の深い闇、そして真犯人とは?

1990年、栃木県足利市で当時4歳の幼女がパチンコ店から連れ去られ、殺害された「足利事件」。犯人とされた菅家利和(すがや・としかず)さんはDNA型の再鑑定の結果、冤罪であることがわかった。

では、“真犯人”は誰なのか? 足利市や隣接する群馬県太田市では79年以降、4人の幼女が殺害され、ひとりが行方不明になる事件(北関東連続幼女誘拐殺人事件)が起きていた。

写真週刊誌の記者時代、「桶川ストーカー事件」(99年)で、警察よりも早く犯人にたどり着いた清水潔(しみず・きよし)氏は、綿密な調査取材により一連の事件が「同一犯」による犯行である疑いを抱いた。そして、雰囲気がアニメの主人公「ルパン3世」に似ている人物が浮上。しかし、警察は現在も動いていない。

『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』で「足利事件」を含む5件の連続事件についてまとめた清水氏に聞いた。

―取材のきっかけは?

「2007年、日本テレビ報道局で『action! 日本を動かすプロジェクト』をやることになりました。私は未解決事件を担当することになり、96年に太田市で起きた『横山ゆかりちゃん誘拐事件』を調べ始めたんです。すると、足利事件を含め、79年から96年の17年間に、栃木、群馬の県境の半径10km圏内で、手口の似た事件が5件起きていることがわかりました。

しかも、ゆかりちゃん事件は菅家さんが逮捕された後に起きている。『もし、真犯人が野放しになっているのであれば許せない』という思いで取材を続けました。でも、警察は足利市で起きた3件は菅家さんが犯人だと思っていた。そのうちの2件では菅家さんを不起訴としたものの、警察は新たな捜査をせず、ふたつの事件を『解決済み』としている状態です」

―清水さんは一連の事件の“真犯人”として「ルパン3世」に似た人物を特定しました。

「ルパンが真犯人である可能性は極めて高いと思っています。ただ、それは取材で判明しただけで、真実の証明はまだできていません。それに、私たちの仕事はあくまでも報道。犯人を捕まえることではない。

もし警察が捜査に着手し、事件が動きだしたら、われわれが、どうやってルパンの存在に気づき、どのように取材したのか、この本では書けなかった事件の全貌を書きたいと思っています」

―足利事件では科学警察研究所(科警研)の当時最新とされたDNA型鑑定に問題がありました。

「92年、福岡県で起きたふたりの小学1年生の少女が殺害された『飯塚事件』でも、同じ手法によるDNA型鑑定などを証拠にし、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受けました。

久間さんは、菅家さんが釈放される前年の08年、DNA型鑑定の再検証がされることなく、死刑が執行されてしまいました。この事件の証拠をあらためて確認すると、科警研によるDNA型鑑定のネガフィルムの一部が『切り取られて』いた。

その理由はわかりませんが、久間さんを有罪とした証拠には危うい要素がたくさんあったことは間違いない。情報公開請求して開示された法務大臣の『死刑執行命令書』なども、そのほとんどが『黒塗り』。隠されていることがあまりにも多いと思います」

―司法は誤ることもあると。

「捜査員も裁判官も、もちろんわれわれもミスを犯すことはある。神様ではないので、それは仕方がないことです。しかし、大事なのは、ミスを犯したときにそれを認めること。そして、なぜミスをしたのかを検証し、再発防止につなげることです。なのに、司法に携わる人間は、『入り口』であるミスを認めることすらしない。その硬直化した体質が日本の司法の大きな問題点だと思います」

(取材・文/西島博之 撮影/下家康弘)

●清水潔(しみず・きよし)




1958年生まれ。新潮社『FOCUS』編集部を経て、現在、日本テレビ報道局記者・解説委員。「北関東連続幼女誘拐殺人事件」報道、「足利事件」冤罪キャンペーン報道で「日本民間放送連盟最優秀賞」などを受賞している

■『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』




新潮社 1680円




本書は、1990年に発生した「足利事件」を含む5件の連続事件について、丹念な取材を基にまとめたもの。2009年には事件の犯人とされていた菅家さんを釈放へ導いた。また、取材の過程で見えた警察のずさんな捜査と司法の深い闇、そして真犯人とは?




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