加藤嘉一「『政治的に利用されない東京五輪』の実現には、何が必要でしょうか?」

週プレNEWS / 2014年3月10日 8時0分

冬季と夏季の違いこそあれ、6年後に東京五輪を控える日本にとって、ソチ五輪は貴重なケーススタディ。何を学び、何を反面教師とすべきでしょうか?

ソチ五輪が閉幕しました。時差の関係で寝不足になった人も多かったと聞きますが、今回あらためて実感したのは、日本人は本当に五輪が大好きだということです。

一方、アメリカは全参加国中2位となる28個のメダルを獲得しましたが、国内で盛り上がっている様子はない。ぼくが住むボストンでは、大会期間中も「ソチ」という言葉をほとんど聞きませんでした。

日米の温度差の背景には「愛国心」の問題があるとぼくは考えます。アメリカ人は普段から国旗を掲げ、子供たちは学校で国歌を歌う。日常生活が愛国心であふれている。五輪だからといって、そこがあらためて国威発揚の場となる理由はなく、国中を巻き込んだお祭り騒ぎにはなりようもない。

反対に、普通の日本人は日常生活において「愛国心」を意識することがない。だからこそ、五輪やサッカーW杯などにおいて一時的にナショナリズムが刺激され、大騒ぎになるのでしょう。

次に、開催国にとって五輪とはどんな意味を持つのかを考えてみます。2020年に東京五輪を控える日本にとって重要な視点です。

プーチン大統領率いるロシアにとって、ソチ五輪は重要な国威発揚のイベントでした。厳重なセキュリティを敷き、大会期間中に大きなテロ事件などを許さなかったこと自体、国民の愛国心を刺激し、国家運営にひと役買ったといえます。

1964年の東京五輪、西側諸国がボイコットした80年のモスクワ五輪(旧ソ連)、08年の北京五輪(中国)。これらの大会は、国家が発展していくさなかに開かれた政治的な意味合いの強い五輪です。ソチ五輪も、その延長線上に位置づけることができるでしょう。

ただ、20年の東京五輪はそうではありません。意味合いとしては12年のロンドン五輪(イギリス)に近く、成熟した先進国におけるポストモダン型の五輪。どちらかといえば、いかに政治色を薄くしていくかという部分がひとつのキーポイントになると思います。




逆説的な言い方になりますが、だからこそ日本は20年に向けて、国際関係を力強くマネージしていかなければならない。特に中国や韓国、そしてアメリカとの関係を丁寧に構築し、東京五輪を政治的に利用されることのないような状況を自らつくり出すべきです。

五輪というイベントは、国際的なアピールの場として利用されることがしばしばあります。ソチ五輪の大会期間中には、隣国のウクライナで大規模な反政府デモが勃発しました。デモ隊を警官隊が武力制圧したことで、親ロシアのウクライナ政府は国際世論から非難を浴び、五輪に出場予定だったウクライナ代表選手の中から、政府に対する抗議のために棄権する選手も出ました。

もちろん、どんなに国家同士の関係が悪化したとしても、特定の国の政府が直接、東京五輪を邪魔しようと何かを仕掛けてくる可能性は低いでしょう。しかし、国際社会に存在をアピールしたい反日活動家など、“非政府アクター”の中にもいろいろなことを考える人はいる。不確定でリスキーな動きを抑制するためにも、日本が国際社会でどう振る舞い、どういうシグナルを伝えていくかというのは戦略的に重要です。

大事なことのひとつは、日本政府と東京都が緊密にコミュニケーションをとっていくこと。大会運営に関するミクロな部分は東京都が進めていくと思いますが、外交が絡むファクターに関しては政府の力が不可欠です。東京五輪が平和的に成功することは当然、中央政府にとっても追い風となるのですから。

56年ぶり2度目となる東京五輪。旧来の政治的な意味合いを超えた斬新な“五輪像”を追求していきたいものです。開催国としてそれ以上に重要なことがあるというなら、逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も始動!




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