半径5kmで生活が完結する「マイルドヤンキー」の生態

週プレNEWS / 2014年3月25日 16時0分

「マイルドヤンキーのライフスタイルを見習いたいという人は、実は世の中に大勢いるのかもしれません」と語る原田曜平氏

漫画『ろくでなしBLUES』に出てくるようなヤンキーは消え、やさしくて礼儀正しい「マイルド」なヤンキーが増えているという。彼らは消費意欲は旺盛で、仲間との絆を大事にする。これまで焦点を当てられてこなかった彼らの生態に迫ったのが『ヤンキー経済消費の主役・新保守層の正体』だ。著者の原田曜平氏に聞いた。

―なぜ今「ヤンキー」に注目を?

「私は広告代理店の社員で、若者が消費をしなくなって切実に危機感を覚えているメーカーさんと一緒に若者向けの商品開発をすることがあるんですね。彼らは売るために真剣ですから、既存のマーケティング調査では届かなかった層にもアプローチしようと試みる。すると、『地元族』ともいうべき層にぶち当たり、『気づいていなかったけど、実はこっちのほうが消費の主流なんじゃないか?』と思い始めたのがきっかけです」

―かつての「ヤンキー」と区別するため、新しい世代のヤンキーを「マイルドヤンキー」と呼んでいますね。この本では、「仲間を大事にする」「とても礼儀正しくやさしい」「地元志向」「環境を変えたがらない」「スマホを使いつつもITリテラシーは低め」などの特徴が挙げられています。なかでも興味深かったのは、「学歴は関係ない」「都市部にもいる」という指摘でした。

「低学歴の地方出身者の割合は高いと思います。しかし、大学は早稲田で、授業が終わったら真っ先に地元に帰って仲間とつるんでるという学生は大勢います。

また、新宿まで電車で20分ほどの上石神井(かみしゃくじい)に住む若者たちにインタビューしたことがあります。彼らのひとりは新宿の歌舞伎町の居酒屋で働いていたのですが、『今のお店には異動で勤めることになっただけ。上石神井に戻りたい』と言っていました」

―成り上がり願望もないと。

「地元の友達と地元のファミレスや居酒屋でだべり、地元の友達とミニバンで遊びに行く。子育ても地元でしたいと言います。彼らの世界は半径5kmで完結する。中学時代から地続きの生活をこれからもずっと維持したいんですね。

これは日本に限った現象ではありません。欧米では70年代からこの手のレポートが書かれていますし、現在では上海や台北、ソウルでも同様の現象が見られます。社会が成熟ステージに入ると、どの国もこういう人たちが増えるんです」




―本書を読むと、新しいものにアプローチしたがらない、彼らの保守的な面が見えてきます。それについてはどう思いますか?

「個人的には、もっと違う世界を見たほうがいいんじゃないか?とは思います。

でも、いろいろな企業の人にマイルドヤンキーの人々のVTRを見せたところ、彼らは口々に『うらやましい』と言うんですね。生まれ故郷から離れて、ずっと仕事のことばかり考え人と競争してきた……。そんな人たちからすると、競争社会を抜け出して、慣れ親しんだ土地で旧知の友達と楽しそうに生きてる彼らは本当にうらやましいと。

事実、マイルドヤンキーの生活満足度は高めです。兵庫県のある夫婦に聞いたところ、今の満足度は80点(夫)と90点(妻)。あと『5万円給料が上がるか家賃が1、2万円下がれば、百点満点になる』と言っていました。

日本はこれから大変になるのに、君たちが50歳、60歳になったときどうするの?という気持ちもあります。でも、彼らは上の世代が捨ててしまった地縁、血縁を大事に生活しています。そんなライフスタイルを見習いたいという人は、実は世の中に大勢いるのかもしれません」

(撮影/高橋定敬)

●原田曜平(はらだ・ようへい)




1977年生まれ、東京都出身。慶應大学卒業後、博報堂に入社。各部門を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『さとり世代』(角川oneテーマ21)などがある

■『ヤンキー経済消費の主役・新保守層の正体』




幻冬舎新書 819円




半径5kmから出ようとせず、生活の大半をそこで済ませるという「マイルドヤンキー」。そんな彼らの消費意欲は旺盛だ。既存のマーケティング調査からは抜け落ちていた彼らの生態を、徹底分析。マイルドヤンキー向けの新しい商品、サービスまでを展望する




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