加藤嘉一「『対日批判』の裏にある中国側の“本音”を見逃してはいけません!」

週プレNEWS / 2014年4月7日 11時0分

中国共産党指導部にとって、対日関係は内政の改革と並ぶ重要テーマ。表向きは強硬な発言が目立ちますが、その裏に潜む“本音”を読み解く必要があります。

前回も触れたとおり、中国ではこの3月、日本でいう国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が行なわれました。その内容からあらためてわかったことは、2014年が中国にとって「改革元年」になるということです。

習近平(しゅうきんぺい)政権は、前胡錦濤(こきんとう)政権とは性質が異なります。習主席は胡前主席よりパワフルで、権力を自らの下に集中させている。李克強(りこくきょう)首相は温家宝(おんかほう)前首相よりも経済や法律の理論に精通している。政治と経済を担当する両リーダーが二人三脚で政権を運営できれば、改革の成果は期待できるでしょう。

組織面での注目点は、「小組」という改革執行のためのワーキング・グループの創設。その特徴は3つに分類できます。

一、トップダウン型の意思決定機関であること。各分野で決定の頂点に君臨しているのは習主席です。

二、中央だけでなく、主要な地方自治体(広東、重慶など)にも小組が創設されること。中央→地方という動線で改革を強力に推進するという意思表示でしょう。

三、分野が多岐にわたること。経済、軍事、環境、司法、文化、社会、サイバーセキュリティなどの分野で、それぞれの小組が改革のためのロードマップを作成し、実行することになります。

また、今後の政府の政策方針を報告する重要な場である「政府工作報告」のなかで、李首相が提起した「3つの一億政策」も興味深いものでした。

一、1億の農村戸籍人口を都市人口に編入する。

二、都市部のスラム街における1億の住居を改造する。

三、中西部(農村部)における1億の人口を都市部化のプロセスに引き込む。

いずれも内陸・農村・貧困地区の近代化によって産業を振興させ、内需拡大を狙う政策で、時期としては2017年くらいまでをひとつのメドにしているようです。「農村の工業化」をテーマに北京大学経済学大学院の博士論文を執筆した李首相にとって、「都市化」はライフワークともいえる分野です。

こうした改革関連の話題とともに、今回の全人代でもうひとつ見逃してはならないのが「対日批判」。3月5日、政府工作報告のなかで李首相は次のように述べました。

「第二次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序を守らなければならない。歴史を決して後戻りさせてはならない」

名指しこそしませんでしたが、歴史認識に関する最近の安倍首相の言動を牽制した内容であることは明らかです。

さらに、8日には元駐日大使で“知日派”として知られる王毅(おうき)外交部長までもが、「歴史と領土の問題をめぐっては妥協の余地はない」という習主席の意図を代弁した上で、こう語りました。

「2014年は1914年でもなければ1894年でもない。日本は第一次世界大戦前のドイツを持ち出して中国に対していろいろと言うくらいなら、第二次世界大戦後のドイツをモデルとし、そこから学んだほうがいい」

1月のダボス会議で、現在の日中関係を「第一次世界大戦前の英独関係」にたとえた安倍首相に対しての“カウンター”でしょう。

ただし、実際は共産党指導部も、日本との関係をこれ以上こじらせたくない。ここを読み違えてはいけません。人民たちが「反日」をきっかけに暴走するリスクを防ぐため、政府が弱腰だといわれないように対日批判を徹底しているのです。日本政府はこの“脆(もろ)さ”を認識し、慎重かつ大胆に対中関係をマネージしていく必要がある。言葉の裏を読まずして外交戦略を構築できるというなら、その理由を逆に教えて!!

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