消費社会研究家・三浦展「脱原発を望むならネガキャンはもうやめて、ポジティブ部分をしつこく言おう」

週プレNEWS / 2014年4月24日 6時0分

東京都知事選から2ヵ月。細川・小泉コンビが出馬表明をしたときは「脱原発の大チャンス!」と盛り上がったが、それも一瞬。投票までの数週間ですら、その熱を保つことはできなかった。確かに「脱原発」を望む人でさえ、細川・小泉にはノレなかったという人は多かったと思う。

でも原発はやっはり不安だ。じゃあどうしたらいいのだろう? この「ぼんやりした気分」を(かなり雑なまま)消費社会研究家の三浦展さんにぶつけてみた。

***

――都知事選の結果はどう思われましたか?

三浦 候補者の中で原発、雇用、福祉など各論の政策を提示できていたのは舛添氏と宇都宮氏で、そのふたりが得票率1位と2位だったのだから、都民もちゃんと考えて投票した結果だと思いますよ。

特に宇都宮氏が全世代の有権者から満遍(まんべん)なく2割とっているのは驚きで。だって共産党のいつもの支持率、固定ファンは3%くらいですからね。もし共産党の支持がなかったら宇都宮氏はもっととれたという説もあるけど、政党に関係なく、候補者の政策で投票した人が多かったという意味では、2月の都知事選はとても理性的な選挙だったと言えるんじゃないかな。

――しかし舛添圧勝という結果に「脱原発」を望む人はガッカリしてます。デモに参加してたような「ガチな反原発派」の人たちはもちろん、「原発は不安だけど、今の脱原発派にはノレないし、といって自分が先頭に立って新たに運動を起こすなんてあり得ない」という人たちも「これからどうすればいいのかなあ?」と。

三浦 でも、舛添氏は「都民が使う電力における自然エネルギーの割合を、6年後の東京五輪までに6%から20%まで引き上げる」と言ってるんですよね。3・11以前の消費電力全体における原発の割合が30%ほどだったから、これは脱原発に向けて、すごく意味がある発言です。

――ああ、脱原発派は最初から聞く耳もたずでその発言すら知らない人が多いかも。知っていても「そんな先の話、選挙で勝つため無責任に言っただけだろ」と信用してないだろうし。

三浦 だから脱原発を望んでいる人たちは、いつまでも舛添氏にネガティブキャンペーンを張るのでなく、むしろ“ポジティブな発言”をどんどん広めていくべきです。それで「舛添さんはこう言いましたよね!」と言い続けてプレッシャーかけるほうが、ずっと現実的じゃないでしょうか。

――デモより舛添オシのほうが実は効果あると。

三浦 デモは、ネット動員しているから今っぽく見えるけど、声をそろえて叫ぶというのは60年安保闘争の頃と一緒で、今の時代には濃すぎて近よりづらいと感じる人も多いです。まあ、若い人はもっとフラットな気持ちで参加していたと思いますけど、とはいえ、やはり集まる人数にも限界がありますしね。

それよりは、都知事選では細川氏も2割の票をとっているわけで、宇都宮氏と合わせれば4割。自民・公明のような大きな支持基盤がない状態で、合わせれば舛添氏とほぼ同じ得票率を得ているわけだから、その人たちが舛添氏の“ポジティブ発言”を後押ししていくほうが意味ありますよ。

――投票って「正解を持っている候補者を選ぶ」という感覚がありますが、三浦さんの考えは「当選した候補者を皆で育て、より自分が求める方向へ向かわせる」という感覚ですね。

三浦 政治家に限らずこれからのリーダーは、みんなの意見を聞きながら答えを見つけていく「協調型リーダーシップ」が大事になると思います。理想論に聞こえるかもしれないけど、これだけ浮動票が増えた時代に、固定支持層の声だけ聞いて政治をやっていたら、社会はどんどん閉じていきますから。

■体制追従もアンチも「どっちもイヤ」も社会は変えられない

――原発がまさにそうなんですが「イヤだなあ」という部分では同じ思いのはずなのに、「反○○!」とか「アンチ○○!」といった熱い人たちを見ると、なんか気持ちが引いちゃうんですよね。

三浦 「反対への反対」「アンチへの反感」は、安保闘争の頃からずっとありますよ。70年安保闘争の頃に学生だった村上春樹や姜尚中は、同級生から運動に誘われても行かなかったそうですが、政治の世界にも当然「右も左もイヤ」という人は昔からいて、60年に社会党内の右派が民社党を立ち上げたり(94年に解散)、70年代には自民党から新自由クラブが別れたり(86年解散)、新たな「中道」を求める人は常にいるわけです。民主党も元はそういう流れでした。

ただし、「どっちもイヤ」という気分はつまり砂のような浮動票だから、水を加えてもすぐボロボロになって、なかなか団子に固まらない。つまり「どっちもイヤ」をまとめる政党はあり得ない。どっちもイヤな人は、もう固まること自体がイヤなのですから。95年の青島(東京都)・ノック(大阪府)知事から小泉さんにかけては「官僚批判」がその団子を固める役割を果たしましたが、今は誰でも官僚批判するので、それでは「売り」にならないし。

――一方で、「現体制へのアンチ」から新たなメインストリームが生まれることはあり得ないですかね? 僕も当時の空気は知りませんが、67年から79年まで12年も、革新派の美濃部氏が都知事を務めた時代があるじゃないですか(支持基盤は社会党と共産党で、当然アンチ自民だった)。今じゃ考えられない話です。

三浦 一番大きな理由は、当時は東京に団塊世代を中心とした「若者」がたくさんいて、彼らが革新勢力を支持したことがあります。しかし結婚して子供ができたら郊外に家を買って出ていき、東京にいなくなっちゃったんですね。革新が退潮した大きな理由はそれだと思う。その論理でいくと、現在、そして近い将来も、若者の人口は非常に少ないわけですから、仮に若者が反体制のスタンスだとしても、当時のようなことが起きるとは考えにくいですね。

――いろいろ考えると、「ただ体制に従う」も「アンチ体制」も、まして僕のような「ぼんやり中道」も、脱原発においては有効でないってことですね。

三浦 安倍首相は「原発はアンダーコントロール」と言ったけど、現実にはコントロールできていません。でも批判だけでは効果がない。都政に関して言えば、舛添氏に「嘘つき!」と怒鳴るのでなく、「あのとき言ったことをやってくださいよ」と前向きに言い続ける。そういう考え方が、実は社会を動かす一番の近道だと思います。

●三浦展(みうらあつし)




消費社会研究家。1958年生まれ、新潟県出身。著書に『下流社会』『第四の消費』『東京は郊外から消えていく!』『データでわかる2030年の日本』『あなたの住まいの見つけ方:買うか、借りるか、つくるか』など

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