Tehuの「残念ながら、アイドルヲタです。」第20回:握手券がなくても僕らがCDを買う理由

週プレNEWS / 2014年4月25日 19時30分

みなさんこんにちは。AKB48の国立競技場ライブのレポートを書いて、体から魂が抜けきってしまったTehuです。今週は、僕のちょっとした「変わった趣味」をご紹介します。

CD不況が叫ばれて久しいですが、そんななかでもAKB48グループのCDは記録的なヒットを飛ばし続けています。その理由としてよく言われるのは、「AKB48のファンはCD自体ではなく、“握手券”を買っているんだ」というもの。いわば、ミリオン連発も握手券あってのものだということですね。

もちろん、もはや日本という国では、ギミック一切なしで100万枚や200万枚が軽く売れていくような楽園ではありません。僕が知る音楽業界の方々も、切羽詰まっているというほどではないにせよ、劣勢の雰囲気は感じ取っているとこぼします。加えて、「AKB商法」と揶揄されるように、何らかの“付録”に関連付けて販売する以外にはCDを売る術(すべ)はないんだ、というお話も何度も聞きました。

しかし、きちんとデータを見てみましょう。AKB48は握手券付きのCDだけを売ってきたわけではありません。握手券の有効期限が切れた旧譜の再発や、ユニット企画でそもそも握手券が付いていないCD(確率の低いイベント抽選券はあります)でも、ほかのアーティストに比べればかなり売れています。

昨年のブームにまでなった「恋するフォーチュンクッキー」は、握手券がなくなってからも週ごとに約5000枚ペースの売上を誇っていたし、ユニット曲は特典がなくても10万枚以上売れることだってあります。

「もしもAKB48(グループ)がニューシングルを総選挙・握手会なしで売ったらどうなるのか?」という疑問に対する数字を推定するための十分なデータは残念ながらありません。しかし単純に考えても、現状では30万枚~50万枚は売れると思われます(すごい量を買う人達がいると同時に、大多数のライトなファンは1枚しか買っていないため)。

さて、これに関連して僕にはひとつ変わった趣味があります。それは、握手券のないアイドルのCDを集めることです。

全体でどのくらいの数がいるのかはわかりませんが、僕は握手会には興味がないファンのひとりです。AKB48が好きな理由は「会いにいける」というポイントよりも、純粋に音楽的に好きだという要素が強いです。

AKB48関連のCDは50枚ぐらい持っていると思いますが、握手券付きのものでもまだCDに入ったまま。自宅の作業場の棚に並べて視覚的に楽しんでいます。

確かに、ももクロなど、特典なしCDに慣れているという理由もあるのですが、やはり僕が握手券のあるなしを気にせずにCDを買う理由はシンプルで、

「優秀なコンテンツには対価を支払うべきだ」

という気持ちの問題だと思っています。

普段はコンテンツを作る側として仕事をしているので、ネットではバカにされているかもしれないけれど、AKB48の音楽作り、映像作りというのも、演者とクリエイターの汗と涙が積もり積もって成立しているということは身に沁(し)みてわかっているつもりです。しかも、クオリティだってすごく高い。

だからこそ、自分が「いいな」と思った曲に対してはしっかり対価を支払う。これは、消費者としてゼッタイに失ってはいけない姿勢だと思うのです。それは握手券のありなしには関係がありません。

要は、僕はAKB48グループの作品が単純に「好き」で、「好きなものにはお金を払う」というスタンスでいるに過ぎないのです。こういう態度の人は、僕らの世代にもけっこういます。実際、iTunesなど音源をデータで買うことが普及した今だからこそ、あえてCDという“モノ”で買う人が珍しくありません。

それはデータでは「買った」という実感がなく、ただ音源を聴くだけでは十分な満足感を得られないからです。

また、最近ではオンラインで購入した曲は何度でも再ダウンロードができるようになりましたが、CDは失くしてしまったら終わり。そういった緊張感も「コンテンツを大事にしたい」という気持ちに直結するのではないでしょうか。

だから僕は、好きなアーティストの曲だからこそ、より「心して」聞くために、CDをいまだに買っています。握手券のあるなしは、あんまり関係がないのです。

若い世代に僕のような考え方の人はけっこう多いような気がします。灘高時代の友人たちを思い返しても、そう思います。

つまり結論として、AKB48グループのCDが異例のヒットを飛ばしている理由を、「握手券があるから」というだけで切り捨てるのは、何か重要なことを見逃してしまうことになるのではないでしょうか。

じゃあ、どうしてAKB48がほかのアーティストに比べて、CDを購入したいという気を起こさせるのか……? その理由が明確にわかったら、僕が実践しているんですけどね(笑)。しばらく、彼女たちの作品やライブを楽しみつつも、じっくり考えてみたい課題ですね。

<今週の気になるアイドルエトセトラ>

私事ですが、ティーンズ誌『HR』でアイドルに関する連載が始まりました。高校生がメイン読者ですが、アイドル情報もいっぱいなので立ち読みでもぜひ(笑)。

■Tehu(てふ)

1995年神戸市生まれ。慶応大学SFC在学中。デジタルクリエーターとして多くのプロジェクトに参加するほか、講演や執筆など多岐にわたって活動している。著書に『スーパーIT高校生“Tehu”と考える 創造力のつくり方』(Google日本法人元名誉会長の村上憲郎氏との共著)がある。

オフィシャルウェブサイト:http://tehu.me/

Twitterアカウント:@tehutehuapple

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