「安全のため」の一点張り。安倍首相の強引な“改憲”が逆に日本を危険にさらす?

週プレNEWS / 2014年5月20日 6時0分

集団的自衛権の行使容認を目的とした「憲法解釈変更」の動きがひとつのヤマ場を迎えつつある。

5月15日、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、通称“安保法制懇”が憲法9条の解釈変更を求める趣旨の報告書を提出。これを受け安倍首相が記者会見を行ない、

「総理大臣である私の責任は国民の安全を守ること、急激に変化するわが国の安全保障環境に対応するために、より現実に即した憲法解釈を検討したい」

と、国民に向けて「集団的自衛権行使容認」の必要性を猛アピールした。

今後は憲法解釈の変更に難色を示している連立与党の公明党を説得し「遅くとも夏までには閣議決定に持ち込みたい」(自民党関係者)意向だという。

だが、今回の報告書をまとめた「安保法制懇」は安倍首相が自ら指名したメンバーで構成された、いわば「お友達会議」。その結論が首相の意向に沿った形になるのは初めからわかっていたことだ。

しかも、首相は去年の8月、これまで「集団的自衛権の行使は憲法9条で認められていない」との解釈を示してきた内閣法制局長官のポストに、集団的自衛権の行使容認に積極的といわれる外務省出身の小松一郎氏を指名した。

有識者会議に加え、「内閣の法の番人」を務めるべき内閣法制局長官まで首相の意向に沿った人選なのだから、すべては憲法解釈変更に向けた出来レースと思ったほうがいいだろう。

こうした安倍政権の動きに対し、「これは憲法のハイジャック! 内閣が勝手に憲法解釈を変更できるならば憲法は空洞化してしまう」と怒りを露(あらわ)にするのは「改憲派」の憲法学者として知られる小林節(せつ)・慶應義塾大学名誉教授だ。

「安保法制懇の報告書は日本を取り巻く国際情勢の変化に対応することが必要だとしていますが、本当に集団的自衛権の行使が必要なら憲法改正を正面から訴えるべきで、内閣が勝手に解釈を変えていいはずがありません。また『憲法9条の解釈は一貫してはいなかった』との指摘もありますが、少なくとも『海外派兵は認めない』というのは憲法制定以来、一貫した解釈だと言っていい」(小林氏)

安倍首相は15日の会見で「現状では国民の安全を守れない」「他国からの攻撃の抑止力向上につながる」として集団的自衛権の必要性を主張しているが、小林氏は、「政府が挙げている具体例のほとんどは憲法9条で認められた個別的自衛権や警察権を運用すれば対応できるはずです。

また報告書ではそれ以外の集団的安全保障、イラクのクウェート侵攻といった場合でも『わが国が具体的な行動を採ることを可能にする憲法解釈や法整備』が必要としていますが、仮にそれが憲法解釈で認められるなら、憲法9条は事実上政府の行動を何も縛らないことになってしまう。これでは憲法解釈の変更どころか、憲法の破壊です!」とバッサリ。

「そもそも今回の報告書をまとめた安保法制懇の委員のうち、憲法学者はわずかにひとり。そのメンバー構成や報告書の中身を見ても、戦後の憲法学者、憲法学会が積み重ねてきた議論を尊重しているとは言えない。これでは『有識者会議』ではなく『無識者会議』と呼ばれても仕方ないでしょう」(小林氏)

「正式な手続きにのっとって憲法改正していたら、時間がかかりすぎて中国、北朝鮮の脅威から国家・国民を守れない。ここは批判を浴びても、自分がやるのだ」

安倍首相にはこんな「危機感」「使命感」があるのかもしれないが、「安全のため」を理由にこんな強引な手法が認められるのなら、日本は果たして民主主義国家・法治国家と言えるのか? 太平洋戦争も同じような理屈で始められたのではなかったか? 現行憲法はその反省の下に制定されたはずなのだが……。

(取材・文/川喜田研)

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