プロ野球12球団の公式ファンクラブ全部に10年間入会した男・長谷川晶一を直撃!

週プレNEWS / 2014年6月19日 6時0分

「各球団担当者からの“呼び出し”におびえる毎日です」と笑う長谷川晶一氏

先月、発売された異例の野球本が球界内外で話題となっている。なんでも著者が私費を投じ、12球団全部のファンクラブに10年連続で入会。12球団×10年間=120年分のサービスを徹底比較した、日本初の「プロ野球ファンクラブ本」だという。

いったい、著者はなぜ、こんなことをやろうと思ったのか? さっそく取材依頼してみると、現れたのはスーツに覆面という元レスラー議員のような中年男性だった……。

■「アンチ巨人」がいつしかマザー・テレサの心境に

―あの……、12球団ファンクラブ評論家の長谷川さんですよね?

長谷川 はい、長谷川です。今日はどうぞよろしくお願いします。

―そ、それは、なんのマスクですか? 普段からマスクをかぶってお仕事をされているんですか?

長谷川 これは06年楽天・カラスコクラブの特典「カラスコマスク」です。かぶるとテンションが上がるので、気合いを入れるときには使います。もちろん合法です。

―そもそも、どうして「全球団のファンクラブに入ろう」とお考えになったのですか?

長谷川 きっかけは04年の球界再編騒動ですね。近鉄の身売りや1リーグ構想などでプロ野球界が揺れていたこのとき、「本当のファンサービスってなんだろう?」と疑問が芽生え、「ファンサービスを知るにはファンクラブに入会することだ」となり、「じゃあ全球団に入れば各球団の哲学がわかるのでは?」と単純な三段論法の末に、入会を決意しました。

―ずいぶん、崇高な理念の下に始められたんですね。

長谷川 ……というのはすべて後づけで、本当は「誰もやっていないし、楽しそうだから」と、酒に酔った勢いで始めました(笑)。

―本書を読むと、長谷川さんは子供の頃からのヤクルトファンだとか。巨人のファンクラブに入ることにためらいは?

長谷川 いい質問です。大いにありました。ヤクルトは巨人になかなか勝てない時代が続いていて、むしろ僕は「アンチ巨人」だったから、しばらくの間は背徳感に苛(さいな)まれていましたね。でも11年をきっかけに心境が変化しました。

―何があったのですか?

長谷川 僕は巨人ファンクラブの開幕戦チケットプレゼントに抽選で当たっていたんです。でも、この年は東日本大震災の影響で開幕戦は延期。チケットは無効になりました。それは仕方のないことですから、別になんとも思っていなかったんですが、その直後、巨人からお詫(わ)びの手紙が届いたんです。

―不可抗力の開幕延期なのに、お詫びの手紙ですか?

長谷川 しかも、バット型のボールペンまでついて。手紙には「震災の影響で中止になりました。申し訳ありません」と書かれていました。どう考えても巨人の落ち度ではないのに、この誠意ある対応。このとき、僕の中の背徳感は薄れ、「いいものはいいと認めよう」とマザー・テレサの心境になったんです。

■巨人は「出来杉くん」、広島は「赤貧芸術家」

―本書では各球団ファンクラブのカラーの違いも明確に指摘されてますね。

長谷川 巨人は野球だけではなくファンクラブでも物量で圧倒。広島はファンクラブにお金をかけない代わりにアイデアで楽しませてくれる。オリックスは「来場特典」を充実させて、あの手この手で観客動員増を図ろうとする。阪神は入会継続年数を重ねるほどグレードが上がり、「ファンの忠誠心」を大切にしている……などなど、それぞれのカラーがありますね。

―巨人は「のび太が逆立ちしてもかなわない出来杉くん」、オリックスは「取材厳禁。来店者のみ厚遇の頑固ラーメン店」など、わかりやすいたとえが痛快でした。今年、躍進を続ける広島は「才能あふれる赤貧芸術家」だとか。

長谷川 先ほど述べたようにアイデアがすごいんです。特典アイテムは毎年、「メッシュジャージ」と呼ばれるユニフォームなんですが、そのデザインが秀逸なんです。ホームとビジターユニフォームを一枚にしたり、選手のプレー写真をコラージュしてチームロゴとしてあしらったり、毎年、あの手この手で感心させてくれる。だから「才能あふれる赤貧芸術家」なんです!

―本書の発売後、各球団の職員の方からも反響があったとか。

長谷川 発売後の10日間で、4球団の球団職員の方から連絡をもらいました。いずれも「本を読みました。とても興味深い内容でした。つきましては一度、お会いしたく存じます」という文面でした。

―うれしい反応ですね!

長谷川 いや、油断するのはまだ早いですよ。この本では好き勝手なことばかり書きました。担当者からすれば、きっとお怒りの点、不満な点も多々あるはず。せっかくのお誘いですから、皆さんとお会いするつもりですが、会った瞬間に殴られないか? 軟禁されないか? そんな不安も正直あります(笑)。いずれにしても、反響があるというのはうれしいことです。ぜひ、その顛末(てんまつ)もレポートするつもりです!

(取材・文/雪之丞華之介 撮影/下城英悟)

■長谷川晶一(はせがわ・しょういち)




1970年5月13日生まれ。出版社勤務を経て、03年にノンフィクションライターに。05年よりプロ野球12球団すべてに入会する試みを始め、10 年連続継続中。主な著書に『夏を赦す』(廣済堂出版)、『マドンナジャパン 光のつかみ方』(亜紀書房)、『最弱球団 高橋ユニオンズ青春期』(白夜書房)などがある

●『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!~涙と笑いの球界興亡クロニクル~』




(長谷川晶一 著 /集英社 本体1200円+税)




物量で圧倒する巨人、時代の先をいくロッテ、松坂マネー投入の西武、暗黒に光が見えたDeNA、アイデア勝負の広島、忠誠心を求める阪神……ほか、各球団のチームカラーと10 年間の浮沈がハッキリわかる! 自腹60 万円を散財してわかった激動の平成裏プロ野球史




●6月25日(水)書籍発売記念 トークイベント開催!




6月25日(水)19時から東京・芳林堂書店高田馬場店8Fにて著者・長谷川晶一さんと、同書の編集も務めた雑誌『野球太郎』編集者・菊地選手のトークイベントを行ないます。詳しくは芳林堂書店HP【http://www.horindo.co.jp/】

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