加藤嘉一「報道官を重視する米中、ポストすらない日本。差は歴然としています!」

週プレNEWS / 2014年7月7日 11時0分

政策をつくり、実行するのは政治家や官僚の“専門分野”。ただ、それを世にどんな形で発表していくかというのは、また別の“専門性”が必要な仕事です。

6月18日、近く退任するカーニー米大統領報道官が“最後の記者会見”を行ないました。5月末にオバマ大統領自ら退任人事を発表した際には日本でも報道があったようですが、政治家ではないひとりの報道官の動向が異国でニュースになるというのは、考えてみれば興味深いことです。日本でも、“ホワイトハウスの顔”として各種記者会見に臨んでいたカーニーの顔に見覚えのある人は多かったでしょう。

ホワイトハウスの報道官の任期は通常2年ほどですが、カーニーは約3年4ヵ月も在任した。それだけ有能な重要人物だったということでしょう。彼はかつて『TIME』誌のワシントン支局長を務めたジャーナリストで、メディアが何を考え、何を求めているのか熟知していた。それをホワイトハウスにフィードバックすることで、“政策の代弁者”としてオバマ政権を支えたのです。

カーニー退任のニュースを見て思い出したのが、同じくすでにホワイトハウスを去ったオバマ大統領の“相棒”のこと。2004年に23歳の若さで、当時民主党上院議員だったオバマのスピーチライターに抜擢(ばってき)されたジョン・ファヴローです。もともとスピーチに定評のあるオバマ大統領が、若いファヴローの言葉には素直に耳を傾けたといいますから、その才能に対する信頼は絶大なものがあったのでしょう。

このふたりを見てもわかるように、ホワイトハウスの人材登用は実に柔軟です。才能と適性があり、大統領と馬が合う人物なら、たとえ民間人でも政界でのキャリアに関係なく、大統領を直接補佐するレベルの要職を得ることができる。こうした官民の人材移動ダイナミズムはアメリカ独特のものですが、日本が学ぶべき点も少なくないと思います。

社会主義国家の中国でも、報道官というポストを大変重視しています。中国では各省庁に専任の報道官がいて、発表事項があったり、問題が生じればメディア対応をする。最近の日本では、毎週定例記者会見を主催している外交部(外務省)の女性報道官・華春瑩(かしゅんえい)氏が有名でしょう。

米中両国の報道官のひとつの共通点は、(声や雰囲気も含めた)パーソナルな特徴が重視されることです。十分な能力を持っていることが大前提ではありますが、その上で、ルックスや声、たたずまいの善し悪しというような点も起用の判断基準になっているのでしょう。

報道官の仕事は「政治家に代わり、政策を外に向かって伝える」こと。誤解を恐れずにいえば、政策をそのまま伝えるだけなら誰でもいいわけですが、結局、最後は人間対人間です。メディアや国民にとっても、周囲に好印象を与えるような人物の言葉には耳を傾けやすいわけで、国家の側から言えば「報道官の印象がよければ、メッセージが国内外にストレートに伝わりやすい」ということになります。

一方、日本ではどうでしょうか。首相官邸や内閣に報道官はおらず、政権のスポークスマンの任を負うのは、スピーチやメディア対応の専門家でもなんでもない、ひとりのベテラン国会議員であるナンバー2の官房長官。日本という国家は、政策や戦略をどのように国内外に伝えようとしているのか。同じ内容でも、どう伝えるかによってその効果は天と地ほど異なるはず。こうした意識が希薄なことと、最近の日本がアメリカをはじめ諸外国から「何を考えているかわからない」と評価されてしまっている現状は、決して無関係ではないと思います。

日本にもメディア関係者をはじめ、スピーチやコミュニケーションのプロは民間に山ほどいるはずです。こうした分野を政治家や官僚が独占している現状は実にもったいない。ダイナミックな官民連動なくして健全な国家運営ができるというなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も活動中!




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