「スクラム革命」で急成長中! ラグビー日本代表“エディージャパン”を世界が注目?

週プレNEWS / 2014年7月10日 6時0分

W杯で味わった悔しさはW杯で晴らそう! 来年9月開幕のラグビーW杯イングランド大会に向けて絶好調のラグビー日本代表“エディージャパン”。先頃、史上初めて世界ランキングのトップ10入りを果たした熱き男たち、その急速進化の秘密に迫る!

■世界で一番練習量の多い代表チーム!

大きな期待と注目を集めながら、ブラジルW杯ではグループリーグ敗退に終わったサッカー日本代表ザックジャパン。その結果もさることながら、持てる力の片鱗(へんりん)さえ見せられなかったもどかしい戦いぶりは、多くのスポーツファンを落胆させてしまった……。

だが、前を向こう! 日本にはまだ、来年のW杯で人々の心を震わせてくれるはずの“ジャパン”がいる。

そう、ラグビー日本代表「エディージャパン」だ!

オーストラリア代表ヘッドコーチ(監督。以下、HC)として、ラグビーW杯2003年大会で準優勝。07年大会では南アフリカ代表のチームアドバイザーとして優勝を経験。そんな世界的名将のオーストラリア人、“エディーさん”ことエディー・ジョーンズ(54歳)が12年4月からHCに就任するや、ジャパン(そもそも日本代表チームを「ジャパン」と称するのは、ラグビーが発祥だ!)はメキメキと力をつけた。

13年6月には、東京・秩父宮ラグビー場でのテストマッチで日本ラグビー史上初めてウェールズに勝利。さらに今年に入ると、格上のサモア、長年のライバルであるカナダとアメリカを撃破。続いて6月21日には、やはりこれまで一度も勝ったことのなかった欧州の雄・イタリアを秩父宮で下し、昨年秋から続くテストマッチ連勝記録を10に伸ばしたのである。

このうちウェールズ、サモア、イタリアはベストメンバーではなかったとはいえ、強豪国を撃破したのは紛(まぎ)れもない事実。こうした実績により、国際ラグビー評議会が発表する最新の世界ランキングで、日本はこれまた史上初の10位に躍進したのだ。

ジャパンをここまで引き上げたジョーンズHCは、いったい何をチームに注入したのか。専門誌『ラグビーマガジン』編集長の田村一博氏が解き明かしてくれた。

「世界の一流レベルを知る指導者である彼は、トップリーグのサントリーで指揮官を務めた経験(09~12年)から、日本ラグビーのことも熟知しています。そんなエディーさんにすれば、従来のジャパンのような体力や筋力だと、W杯では絶対勝てないことは明白でした」

そこで、彼はまずジャパンの選手たちのフィジカル面を徹底して鍛えた。一日3部練習は当たり前で、合宿期間中はオフ日も設もうけない。選手たちもよく言っているが、今のジャパンは「世界で一番練習している代表チーム」なのだ。

「エディーさんが目指すのは、細かくパスをつなぎ続ける攻撃ラグビーですが、それをW杯で実現させるためには、世界で当たり負け、走り負けしないフィジカルの土台がないと不可能なのです。そして一度目標を設定したら、絶対に妥協せず選手にやり切らせるのが、彼のすごいところ」(田村氏)

■日本しかやらないこだわりスクラム!

さらに個々のフィジカル能力向上と並行して、早い段階からジョーンズHCが着手し、現在のジャパンの快進撃を支える原動力となったのが、スクラムの強化だった。

ラグビージャーナリストの村上晃一氏が、その理由を語る。

「来年のW杯イングランド大会で日本が決勝トーナメントに進むには、予選プール(グループリーグ)で最低でも2勝し、2位以内に入る必要があります。しかし、プール戦の対戦相手はいずれも世界屈指のフィジカルアスリートがそろった国々。そんなチームと戦うには、ボールの起点を安定させるため、まずスクラムで対抗することが大事なんです。逆にスクラムが崩壊してしまうと、もうどうにもならない」

従来のジャパンは、強豪を相手にするとスクラムで押されるのが当たり前。だから、できるだけ敵と力勝負をせず、いかに早くスクラムからボールを出すかという発想でプレーしていた。しかし、そのようなスタイルではわずかなミスも許されず、どうしても試合運びが不安定になりがちだった。

「エディーさんはそうした先入観にとらわれず、スクラムをジャパンの武器にすると決めたんです。そこで元フランス代表のマルク・ダルマゾをスクラムコーチとして招聘(しょうへい)し、指導を任せました。己の方針を実現させるため、それぞれの分野に自分より専門知識のある人材を配置するマネジメント能力も、エディーさんが優れている点のひとつです」(村上氏)

ダルマゾコーチの指導の根幹は、スクラムを組むFW(フォワード)8人全員のパワーを、最も有効に相手に伝えること。

「同じ方向に力を集約できるよう、これまで以上に低く組ませたり、相手がスクラムをずらしてきても常に真っすぐ押し返せる足の運びを意識させたり。あるいは、前の選手のお尻のどこに体を当てて組むかとか、がっちりと組むために味方FWのジャージのどこをつかむかまで突き詰める。こんなところまで考えながらスクラムを組んでいる国は、世界でも日本だけだというのがダルマゾコーチの口グセです」(前出・田村氏)

その成果は着実に表れている。ヨーロッパの中でも、スクラムに特別なこだわりを持っているイタリアに対してさえ、ジャパンは互角以上に押し込めるようになったのだ。

「今のジャパンはBK(バックス)がパスミスをしても、スクラムで取り返せるので、ミスがあまり致命傷にならない。相手ボールのスクラムになっても圧力をかけられるから、試合に安定感があるんです。そこは、これまでのジャパンとまったく違うところですね」(前出・村上氏)

となると、チーム整備における次のターゲットは攻撃だ。

「エディーさんは『ジャパン・ウェイ(日本流)』というテーマを掲げ、日本人らしさを生かしたラグビーを目指しています。その基本は、連続的にテンポよく短いパスを回して相手のディフェンスを引きつけ、その結果できた狭いギャップを突いたり、守りが手薄になった外に展開したりしてトライを取るというもの。今後はそうしたパターンの精度を上げたり、状況に応じてはキックを的確に使ってチャンスを広げることが必要になってくる」(前出・田村氏)

そうした攻撃を担うBK陣に才能あふれる選手がそろっている。ニュージーランド、南ア、オーストラリアの3ヵ国間にまたがる世界最強リーグ「スーパーラグビー」のクラブでプレーするSH(スクラムハーフ)田中史朗(ふみあき)、SO(スタンドオフ)立川理道(たてかわはるみち)、CTB(センター)マレ・サウが海外組ならではの自信に満ちたプレーでチームを牽引(けんいん)し、不動のFB(フルバック)五郎丸歩(ごろうまるあゆむ)が正確無比なプレースキックを見せれば、福岡堅樹(けんき)、松島幸太朗という世界クラスの若いスピードスターたちは、チームにフレッシュなアクセントを加えている。

では、彼らによる変幻自在なアタックさえ完成すれば、来年のW杯でのジャパンは、初の予選プール突破が決まったようなもの?

「残念ながら、ラグビーは番狂わせが起こりにくい競技なんです。実力どおりにいけば、アメリカには五分五分以上の戦いができるはずですが、ほかの3ヵ国に対しては……。それでも勝ち目があるとすれば、スコットランド戦でしょうか。並外れたスピードを持った選手も、ものすごい個人技のある選手もいない。粘り強く戦って相手のミスを誘い、『これまでのエディージャパンで最高』と言えるようなパフォーマンスを披露できれば、なんとかなるかもしれません。南アが全勝で頭ひとつ抜け、スコットランド、サモア、日本が三つ巴(どもえ)の争いをする展開になれば、決勝トーナメント進出の可能性も出てきます」(前出・村上氏)

世界ランク10位でも、その程度の勝算しかないのか……。

ただ、6月21日のイタリア戦後の会見で、ジョーンズHCはこう語っている。

「サッカー日本代表のように、前評判は高かったけれどW杯の本番で結果を出せないチームにはなりたくない」

そう、彼は内容だけでなく、来年のラグビーW杯では本気で勝ちを狙おうとしているわけだ。

果たして、エディージャパンは、ラグビー界の常識を覆(くつがえ)せるのか? その挑戦から目を離すな!

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