相次ぐ老舗の倒産、国産オーディオメーカーに再生の道はあるか?

週プレNEWS / 2014年8月1日 6時0分

かつての栄光も今は昔。現在、量販店で入手可能な「SANSUI」ブランド製品は低価格のスピーカーくらい

SANSUIよ、おまえもか……(涙)。今年6月の名門パイオニアのAV事業撤退に続き、老舗オーディオメーカー・山水電気が破産。かつて世界を席巻した国産オーディオメーカー勢が迎えた危機、そして巻き返しの可能性を探る!

■超優良メーカーが凋(ちょう)落した3つの理由

「ニッポン! ニッポン! ニッポン! ……チクショ~!!(泣)」

家電量販店の店頭で泣いているのは、毎度おなじみ国産家電信奉者にしてAV家電ジャーナリストの、じつはた☆くんださん! ブラジルW杯での日本の戦いぶりは残念でしたけど、さすがにそろそろ吹っ切れないと……。

「違いますよ! SANSUIですよ、SANSUI! 日本の誇るオーディオ(音響機器)メーカーの雄、あの名門SANSUIがついに倒産かと思うと悲しくて……。(今年6月の)パイオニアのAV部門撤退に続く衝撃です」

はて、SANSUI? 耳なじみのない会社ですが。

「山水電気をご存じない……。でも、その反応こそが、国産オーディオメーカーの現状を物語っていますね。トランス(変圧器)づくりを得意とする山水電気はその技術を生かした高性能アンプで名を上げ、1980年代の全盛期には、ケンウッド(現JVCケンウッド)、パイオニアとともに『オーディオ御三家』と呼ばれ、世界市場を席巻しました。人気アイドル、早見優さんをイメージキャラクターに起用して話題になるなど、84年には年間売り上げ500億円を超える優良企業だったんですよ」(じつはた氏)

へぇ~、パイオニアとケンウッドは知っていましたが、もうひとつ世界的に有名な国産オーディオメーカーがあったんですね。でも、どうしてそんな優秀なメーカーが凋落したのでしょうか?

「原因は大きく3つ。ひとつは90年代のバブル崩壊から始まる世界的な不況。贅沢(ぜいたく)品という位置づけだった高級オーディオは一気に売り上げ激減となりました。

もうひとつは、2000年頃から現在まで増え続けているiPodやiPhoneなど、MP3プレイヤーとスマホの台頭です。ポケットサイズの機器にイヤホンかヘッドホンというお手軽な組み合わせで、そこそこの音質を楽しめる。そうした新製品の登場によって、フルサイズのオーディオやミニコンポは、完全に前時代の遺物扱いされてしまった。

そして3つ目は、山水電気が本業のアンプづくり以外に見向きもせず、ひたすら技術と性能を追求し続けたために、経営を立て直せるような売れ筋商品づくりへのシフトが遅れてしまったということです」(じつはた氏)

確かに、最近は音楽を聴くならほとんどスマホという生活が定着。イヤホンも高音質化が進んでいます。狭い部屋をさらに狭くするホームオーディオひと筋という経営方針は無謀だったのかもしれません。

ってことは、ほかの国産オーディオメーカーも、もうホームオーディオ以外の道を探すしかない?

「いや、それは逆ですね。MP3やスマホの便利さは否定しませんが、イヤホンで音楽を聴いているだけでは耳が疲れるし、音楽の大きな楽しさを見失ってしまいます。それに、邪魔に感じる各オーディオ機器の大きさにもちゃんと意味がある。例えばアンプ。あの大きくて重い箱には、トランスやコンデンサー(蓄電器)が入っています。ものすごく乱暴に説明すると、トランスはゆがんだ音をキレイにし、コンデンサーは音を元気にします」(じつはた氏)

つまり、スマホのイヤホンで聴く音楽は、本来の音の姿から少々ズレているということ?

「原音から目立つ音だけを強調してデフォルメしている感じですかね。一度、スマホの音源をDAC(デジタル・アナログコンバーター)などの機器を通して、スピーカーで聴いてみてください。普段聴いている曲が、まるで別の曲のように鮮やかな音に感じられるはずです。実際、少し前から音楽好きユーザーの間では、デジタル離れ、イヤホン離れが進んできています。そこに国産オーディオ業界復活のヒントがあるはず」(じつはた氏)

さらに、じつはた氏は続ける。

「メーカー側を見ても、国産オーディオ復活の兆しはある。埼玉県越谷市に本社を置く『トライオード』は、デジタルサウンド、MP3全盛の現代に、旧技術であるはずの真空管を使った高音質アンプで売り上げを伸ばしています」

■“アナデジ混合”のニーズが増える

確かに最近、家電量販店で売られているイヤホンの人気商品にはお値段ウン万円というものも珍しくない。なかには10万円以上する商品もある。それだけの予算を音楽にかけられるなら、マイルームに高音質のアンプやスピーカーを置くという選択をするユーザーがいたっておかしくはない。そこに国産オーディオメーカーの活路があるということでしょうか?

「今後はデジタルをソースとして、アナログスピーカーの良質な音で楽しむという“アナデジ混合”へのニーズが増してくるはず。そうなると、技術とノウハウを蓄えた国産オーディオメーカーの出番です。先ほど述べたトライオードのように小メーカーながら、世界に誇れる技術を持つメーカーは国内に多数ありますから。

例えば、かつてのケンウッドの技術者らが創業した超高音質高級アンプメーカー『アキュフェーズ』(神奈川県横浜市)や、『D&Mホールディングス』(神奈川県川崎市)のように複数メーカーがタッグを組み、技術と競争力を高めている例もあります。個性的なのは『ラックスマン』(神奈川県横浜市)で、同社の伝説のアンプM-800A(実売85万円前後。生産はすでに終了)は、約40cm四方で重さはなんと、48.5kg! 徹底的に音質にこだわった製品をつくっています」(じつはた氏)

中国や韓国などの新興メーカーにはマネのできない、日本人ならではのきめ細かな感覚でつくられたオーディオが、再び世界を席巻することも夢じゃない!?

先ほどじつはた氏が紹介したトライオードも、94年の創業以来、MD、MP3と激変する音楽ソースに惑わされず、頑として音楽を聴く者の感性に訴え続ける製品づくりを続け、受け入れられてきた。同社の製品の中心にあるアナログ、真空管といったキーワードが、そのまま国産オーディオメーカーが生き残るためのキーワードになるのかも。

「今はカーナビに経営原資の主軸を置いているパイオニアやケンウッドも、スマホがカーナビの代用となりつつあり、カーコンポの主体もスマホへと移行しつつあるので、先行きは順風ではない。今こそ初心に帰り、日本人にしかつくれない、深みのある音のオーディオ製品をガンガン世界に送り出してほしいものです。いっそ個人的には、オールジャパン体制の『Jオーディオ』で世界と戦うくらいの心意気を見せてほしいですね。それならマジで世界に圧勝なのですが(笑)」(じつはた氏)

家電量販店では、少しずつだがDAC、真空管アンプといった商品の売り場スペースが増えつつある。土俵際いっぱいに追いつめられてはいるが、国産オーディオの灯は消えていない!

(取材・文/近兼拓史)

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