超絶マイチェン、スズキ「ワゴンR」の実力とは? “S-エネチャージ”は覇権を奪えるか!

週プレNEWS / 2014年9月2日 6時0分

ここ数年、自動車市場で大きなシェアを占める軽ワゴン市場。スズキ&ダイハツの2大巨頭のほか、近年はホンダ、それに三菱との共同による日産の本格参入もあって群雄割拠の覇権争いが繰り広げられている。

そこで他社を突き放すべく、スズキがやや低迷気味だった?「ワゴンR」を改良、マイナーチェンジモデルが8月25日、市場に登場した。

燃費の良さが売りの軽だが、今回のワゴンRのハイブリッド(以下、ハイブリ)はなんと32.0km/l。従来型ワゴンRやデイズ&eKワゴンの30.0km/lを大きく上回り、全高1.6m台の「ハイトワゴン」ではぶっちぎり低燃費を実現した。

その仕組みは「マイルドハイブリ」などと呼ばれるもの。エンジンにベルトがけした発電機を強化して、モーター/エンジンスターターとして機能させている。ただ、あくまでアシスト役なので、本格的なハイブリのように電気だけで走るわけではなく、モーター出力もわずか2.2馬力で、その分エンジンパワーを絞っている。だからこそ燃費もこれだけ良くなったわけだが、開発担当氏によれば「乗った分にはわかりません」と言う。

事実、走行感覚は従来のワゴンRとまったく同じ。助手席のシート下に設置した駆動用リチウムイオンバッテリーの容量も小さく、元気に走ると残量はすぐに半分くらいになる。そうなると、モーターでのアシストも自動的にお休みする(アシストはあってもなくても体感ではわからない)。

ただ、このシステムにはもうひとつ「滑らかなアイドリングストップと再始動」という副産物がある。むしろ、そっちは体感可能……というか、効果絶大。

今回搭載されたモーターは、前述のようにスターターにもなるが、始動のたびにギアをかませる従来型とは違うベルト駆動モーターなので、従来のエンジン再始動が「キュルキュル……ブオン!」なら、今回のワゴンRは「(キュルキュルなしの)ズルン!」だ。圧倒的に静かで滑らかで、始動レスポンスも明らかに素早い。

また、従来型ワゴンRのアイドリングストップは、クルマの完全停止前にエンジンが止まるので「赤信号で止まろうと思ったら、青信号に変わって再加速」といったパターンにハマると、エンジンが盛大にギクシャク……という場面があった。しかし、今回のハイブリではいつでもどこでも滑らかに何事もなかったように走る。

この「エンジンが止まりかけても滑らか」なのがベルト駆動モーター/スターターの恩恵。ここだけは新ワゴンRの貴重な「ちょっとだけハイブリ感?」だ。……と、新ワゴンRをあえて「ハイブリ」とここまで呼んできた。マイルド型といっても、技術的には正真正銘のハイブリだからだ。しかし、ワゴンRハイブリの正式名は「S-エネチャージ」で、クルマのどこにもハイブリの「ハ」の字すらない。

開発担当氏はその理由を、「このクルマは電気走行モードもなく、燃費もアルトエコの35.0km/lには届きません。これを大々的にハイブリッドと呼んでいいのか……と。“エネチャージ”という言葉も浸透していますし」と、説明する。

S-エネチャージのハイブリ感が薄いのは、駆動用リチウムイオンバッテリーが小さいからだ(だからアシストも限定的)。リチウムイオンの見た目も、従来のSのつかないエネチャージ(以下、素ネチャージ)のそれとほとんど変わらない。

「大電流回路のために、外側のボックスは少しだけ大きいですが、内部のリチウムイオンのセル数(≒電圧や容量)はこれまでと同じです」(開発担当氏)

これまでの素ネチャージは、減速エネルギーで回収した電気を、パワステなどの補機類にだけ使っていた。対する新しいS-エネチャージでは、その電気を駆動にも活用するのが特徴。だからこそハイブリなのだ。

前出のワゴンR開発担当氏によると、S-エネチャージの開発スタートは約3年前。しかし素ネチャージを搭載したワゴンRの発売は約2年前だ……。時系列から考えれば、素ネチャージのリチウムイオンは、最初からS-エネチャージへの発展を織り込んでいたのだろう。

「ご想像にお任せします(笑)。ただ、従来のエネチャージでは、リチウムイオンにためた電気を使い切れていなかったことは事実です」(開発担当氏)

そういえば、某ライバルメーカーのエンジニアが、素ネチャージを評し「この程度の燃費のために、こんな高性能バッテリーが必要ですかね」と不敵に笑っていたのを思い出す。さて、この戦国時代の軽市場のなかで、今回のマイチェン「ワゴンR」は軽トップを奪還できるのか?

確かにハイトワゴンぶっちぎりの燃費、その他の装備も大充実の力作!だが……。前出の開発担当氏はこうも話す。

「ウチのスペーシアはダイハツやホンダより、コンセプトが2世代分くらい遅れているのは否定しません。ワゴンRがずっと売れていたことで、どこかに慢心があったのかもしれません。まあ、NMKV(日産と三菱の折半出資による合弁会社)さんのクルマは、まだちょっと昔風ですけど……」。

こちらは余裕と焦りが入り交じった、なんともいえない表情で苦笑した。

大バトル時代に一時的にトップにはなれても、長期政権は微妙としかいえない。

(取材/佐野弘宗)

■週刊プレイボーイ37号「スズキ『ワゴンR』超絶マイチェンでますますヒートアップ! 『軽ワゴン』開発バトルの激アツすぎるウラ側」より

 

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