日本バスケ界の小さな巨人・富樫勇樹インタビュー「どんな形でもいい。NBAのコートに立つ!」

週プレNEWS / 2014年9月7日 15時0分

NBAサマーリーグに挑戦し5試合中4試合に出場を果たした富樫勇樹選手

田臥勇太以来の日本人NBAプレーヤーが誕生するかもしれない。今年7月、身長167cmの富樫勇樹が、NBAの登竜門といわれるNBAサマーリーグに挑戦し、2mを超す大男たちを相手に大きなインパクトを残した。10月からのシーズン開幕前キャンプへのオファーを待つ本人に、その手応えを聞いた!

――いきなり失礼ですが、やっぱり小さいですね……。

富樫 はい(苦笑)。

――167cmという身長について、どう思っていますか? やっぱり不利ですか? それとも小さいからこそのメリットもあったりするんですか?

富樫 背が低いのはハンデというか、ハンデでしかないというか。もう完全に不利だな?としか思いませんね(笑)。

――とはいえ、日本人として史上4人目の出場となったNBAサマーリーグでの活躍には驚かされました。

富樫 高校生のとき、テレビでサマーリーグを見てたんです。正直まさか、NBAに挑戦するための舞台に自分が立てるとは思ってもいなかったんで。緊張ってわけじゃないですけど、やっぱり最初は雰囲気にのまれましたね。

――でも、現地の観客から、「TOGA!」と大声援を受けるほどの人気でした。

富樫 うーん、あれは声援というより、アジア人で、しかもこの身長でっていうことで会場が沸いたというか……。大人の中に子供が交ざってる的な物珍しさでウケたんだと思います。正直、やりづらかったですね。

――なるほど。しかし4試合目、11分間の出場で3Pポイントシュート2本を含む12得点。胸を張れる成績だと思います。

富樫 僕はチームで3番手のPポイントガードG だったんです。それが、あの試合は集合時間に遅刻してきた選手がいて。試合前にコーチに呼ばれ、『今日は2番手で使うから用意しておけ』って言われ、出番が早まった。たまたま巡ってきたチャンスでしたね。

――その少ないチャンスをものにした、と。

富樫 それまで出場した試合で、シュートが打てる場面でも打たなかったり積極的なプレーができなかったんで、あの試合は最初から積極的にいこうと思ってました。それがいい結果につながったのかなって思います。









■僕はいつも一番小さかった

――「出場時間がもっと長ければ何点取れたんだ!」と思ってしまいました。

富樫 元NBA選手のダレル・アームストロングがアシスタントコーチだったんですけど、僕がベンチに戻ったとき、監督に「彼を代えるべきじゃないだろ!」って怒ってました(笑)。

――その試合で、208cmある相手選手のブロックをかわして決めたフローターシュートについて解説してほしいんですが。

富樫 あのときは、スペースもあったんで狙いましたね。

――高いループをかけてブロックをかわすフローターは、かなり難易度の高いシュートですが、得意としていますよね?

富樫 そうですね。確かに、普通のジャンプシュートより入る気はします。フリースローライン付近くらいからなら外す気はしないですね。

――2m以上ある相手選手がブロックに跳んできても?

富樫 目の前にいたとしても、タイミングをずらせばブロックされないんで。それはもう僕が今までずっとやってきたことというか。ブロックされないようにってことは、ずっと考えてきたことなんで。フローターなら相手が何センチでもブロックされない自信があります。

――小さくても、やり方次第では通用する、と。

富樫 はい。ただ、僕は小学校も中学校も高校も、いつでもだいたい一番小さかったんで。これが当たり前というか、小さいからこうしないととかあんまり考えたことないんです。

――では、サマーリーグでの活躍を受けて、にわかに「田臥勇太以来、日本人ふたり目のNBA選手誕生なるか!?」的な報道をされていますが、ご自身はどう思っていますか?

富樫 たぶん、NBAに挑戦する厳しさっていうのは挑戦した者にしかわからないというか……。多くの人は、サマーリーグに出たんでNBAに近づいたって感覚だと思うんです。でも、自分としてはまだまだだし、そもそもNBAへの距離を測るために今回サマーリーグに参加したんで、通用した部分、しなかった部分が見えたこと、課題が見つかったことが何よりの収穫ですね。今までよりNBAに近づいたことは確かかもしれないですけど、まだまだこれからです。

――具体的に通用した部分は?

富樫 やっぱりスピードですね。そこは通用しました。外国人選手、特に黒人選手って、一瞬の速さがあるんです。でも、ずっと速いわけじゃない。トップスピードの持続力的な部分は日本人選手も負けてない。速さの種類が違うんです。一発で抜いてくるアメリカ人選手のほうが僕はつきやすい。日本人選手についているよりラクな部分はあります。

――では、反対に課題は?

富樫 もう行く前からわかってましたけど、この体格でやってるんで当たり負けする部分が出てくるんです。特にディフェンスで。いかに押し込まれないようにするかが課題ですね。体重をもっと増やしていかないと。









■小さかったら、点を取れ!

――もちろん、課題は多くあるでしょうが今、歩んでいる道はNBAにつながっていると思いますか?

富樫 そうだと願います。でも、今年全体6位でドラフト指名されたマーカス・スマートって選手がいるんですけど、実は高校時代に試合したことがあるんです。もうバケモノでしたね。同じポジションなのに、193cmあって体重も100kg以上。デカくて、速くて、強い。NBAって、そういう選手がひしめくリーグなんであまり大きなことは言いたくないですね。

――なるほど。

富樫 ただ、NBAは30チームあるわけで。チームのスタイルからベンチに欲しい選手のタイプや、ケガ人の有無によって補強したいポジションはそれぞれ異なってくる。単純にうまい選手が上から順番にNBAに入れるわけじゃない。

――つまり可能性はある、と。

富樫 僕はバケモノにはなれない。でも、だからといって絶対にNBAに入れないかといえば、そうじゃないはず。1チームで選手登録できるのは15人なんで、イメージでいえば、最後の1枠とか2枠を何百人が狙ってる感じ。少ないチャンスをものにした選手がその枠をつかみ取っていくんだと思います。だから、ホントに少ないチャンスというか、1回あるかないかのチャンスをつかめるかどうかが分かれ目だと思います。

――富樫選手のような小柄な選手でいうと、かつて170cmしかないのにNBAオールスターのスラムダンクコンテストで優勝したスパッド・ウェブという選手がいました。

富樫 知ってます。

――彼は「小さかったら高く跳べ」と言いました。富樫勇樹なら「小さかったら……」の後、なんと続けますか?

富樫 小さかったら……“点を取れ”ですね。

――その理由は?

富樫 ディフェンスのとき、小さいっていうだけで、ほぼ100%マイナスでしかないんです。技術的に成長したり、筋トレだったり、マイナスを少しでも軽減することは可能でもどうにもならない部分もある。だって、この身長はもう伸びないでしょうから(笑)。だから、どうにもならないことをどうにかしようと思うより、オフェンス面で補うべきだと思うんです。10点取られても20点取ってくる選手だったらコーチは使いますよね? 20点取られるんだったら30点取ればいい。オフェンスなら身長を技術でカバーできるから。

――なるほど。では、今後のスケジュールはどうなっていますか?

富樫 NBAのチームからキャンプに呼ばれれば最高なんですけど(笑)。現実的には11月初旬にあるDリーグのドラフトを待つ状態です。

――DリーグはNBAの下部リーグ的な存在で、NBA選手の約23%がDリーグでのプレー経験を有しています。活躍がNBAに直結しますね。

富樫 はい。Dリーグのトライアウトに呼ばれるとしたら10月なので、それに合わせて渡米すると思います。

――「俺が日本人ふたり目のNBA選手に!」という意気込みですか?

富樫 僕が絶対ふたり目に!とは思ってないです。ビッグマウスじゃないんで(笑)。ただ、自分の前に日本人が何人いるとか、そこはどうでもよくて。どんな形でもいいからNBAのコートに立つということが僕の目標ですから。






富樫勇樹




1993年生まれ、新潟県新発田市出身。21歳。小学1年からバスケを始め、中学時代に全国優勝。高校はアメリカの強豪モントロス・クリスチャン高校に進学。卒業後にbjリーグの秋田ノーザンハピネッツに入団し、新人賞、ベスト5、オールスターMVPなどを獲得した。今年7月にはNBAサマーリーグに挑戦し、ダラス・マーベリックスの一員として5試合中4試合に出場を果たす。ポジションはポイントガード。167cm、67kg

(取材・文/水野光博 撮影/ヤナガワゴーッ!)

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