業績低迷のマクドナルドから放課後の高校生とスマイル0円が消えていく理由とは?

週プレNEWS / 2014年9月8日 6時0分

ビッグマックを“ごちそう”だと思わなくなったのは、いつからだろう?

「デフレ時代の雄」も今は昔。マクドナルドが絶不調だ。長引く業績低迷から抜け出せないどころか、中国産期限切れ鶏肉問題などの不祥事によって、さらに客足は遠のいている。

データを見る限り、マックの状況は想像以上に深刻だ。

2004年に原田泳幸(えいこう)氏が社長に就任して以降、“原田マジック”なる経営手腕を発揮し、悪化する業績をV字回復させたものの、売上高は2008年をピークに再び下降線をたどる。

2011年から2期連続で純利益減となると、昨年8月にはサラ・カサノバ氏が社長就任。期間限定メニューなど新商品を次々と打ち出したが、いずれも不発。今年上半期純利益は前年同期比59%減の18億円。さらに一連の不祥事を受け、今年下半期の決算予想を取り消し「未定」と発表する異例の事態に……。

なぜ、マックはここまで苦戦を強いられているのか。フードアナリストの重盛高雄氏はこう語る。

「マクドナルドは8月の記者会見で、売上減の理由に『コンビニとの競争激化』などを挙げていましたが、根本的な問題は客が来店する価値を提供できていないところにあります。

2006年に100円マックを拡充して成功を収めたことで、付加価値を商品ではなく価格に置いてしまった。それが『安い価格の商品を出せば、放っておいても客は来る』という“上から目線”のマーケティングとなり、顧客離れにつながった大きな要因だと思います」

しかし、最近はマックも高価格帯の商品を投入している。今夏に期間限定で販売したクォーターパウンダーハバネロトマトも499円という価格だった。

「もはやデフレ時代ではないとはいえ、マックの単品にその価格帯が求められているとは思いません。プチ贅沢(ぜいたく)志向の流行に乗ろうとしているのはわかるんです。実際、セールスレポートを見ると、客単価は上がっている。でも、客数は伸びていない。

それはつまり、期待してくれるお客さんがいて、試しに新商品を買ってくれているけれど、その期待をことごとく裏切り続けてしまっている結果なのではないかと思いますね」(前出・重盛氏)

ちなみに、ほかのバーガーチェーンの状況はどうか。

「ここ数年の業績を見ると、モスバーガーは好調。ロッテリアやフレッシュネスバーガーは横ばいか微減という程度。マクドナルドのひとり負けという印象が強いですね」(重盛氏)

今のマックが抱える問題は、商品だけでなく店づくりにもあるとか。

「昔は店内にも子供の遊ぶスペースがあるなど、家族連れが率先して行きたくなるようなお店が多かったのですが、今は悪い意味ですごく効率がよくて、おしゃれなつくりの店舗が増えています。通路を狭くして席数を多く確保した分、ベビーカーが通りにくかったりして、全然家族連れに優しくない

ファミリー向けコンセプトの店舗もありますが、マクドナルドはそれを明確にアピールしていないので、子供連れの親が新世代デザイン店舗に入ってしまうと、『マックは落ち着けないな。変わったな』と失望する」(重盛氏)

マーケティングコンサルタントの新井庸志(やすし)氏もこう指摘する。

おしゃれ路線に走ったことがマック低迷の大きなポイント。原田体制後期の2008年頃から『プレミアムローストコーヒー』を全店舗で提供するなど、過去に失敗している『マックカフェ』化を再び推し進めましたよね。一時、レジのカウンターにメニュー表を置かなくなったのは、おしゃれ感の演出という狙いもあったのですが、単に選びづらくなって、お客さんの回転が遅くなりマイナスにしかなりませんでした」

当時、一気に勢力を伸ばしてきたスタバなどのカフェ顧客も取り込もうとした戦略が裏目に出て、マックのメイン顧客であるファミリー層を失ったのか? 新井氏が続ける。

「私は複数店舗で店内の雰囲気を定点観測していますが、店員さんの雰囲気も変わりましたよ。どこも以前と比べてカフェ的なクールな接客というか、元気がない印象。

私たちの世代からすると、マクドナルドの店員さんは笑顔で元気なイメージでしたが、現在は原田体制時に一気に店舗のフランチャイズ(FC)化を進めたせいで教育が行き届かなくなり、店員さんのスマイルがなくなっているのでは」

スマイル0円といえば、それこそマックのカラーだったはずだが……。急なFC化による弊害は、ほかにもあるという。

「次々と新メニューを出したことで指導が追いつかず、商品の提供スピードが遅くなったんですよね。それを受け、マクドナルドは60秒以内に商品を提供できなかったらサービス券を配布するという例の『60秒サービス』を2003年1月に展開して、現場はさらに混乱。FC化推進で利益率優先体質になったものの、結果的には本部もFC店舗も現場スタッフも、誰も得をしない、今の状態に陥ってしまったんです」(新井氏)

まさに負のスパイラル……。

「不調とはいえ、今すぐ経営がどうこうなるということはないでしょう。ただ、従来のマクドナルドファンは子供の頃からあの味に親しんでいて、大人になってからもマクドナルドに通う習慣が身に染みついています。でも、今の子供たちにはその刷り込みが不十分。近い将来、“放課後にマックでだべる高校生”という光景が消えるかもしれません」(新井氏)

そんな苦しい状況を打開する人材として、昨年8月に社長に就任したのがサラ・カサノバ氏。だが、評判は芳(かんば)しくない。

「これまで米マクドナルドは日本には独自経営で任せてきましたが、テコ入れとして、過去に日本で『チキンタツタ』をヒットさせたカサノバ氏を送り込んだのです。しかし、彼女は残念ながら日本のマーケットをわかっていない。

例えば先月、『ビッグマック』や『えびフィレオ』といった定番メニューのセット価格を期間限定で値下げしたんですが、これは元の価格に戻ったときに割高感が出てしまう最悪なキャンペーン。さらに期限切れ鶏肉問題が発覚してから約1週間後に会見するという対応の遅さや、謝罪をしないまま『ウチの商品は安全だ』と宣言するスタンスなどに批判の声が上がっています」(新井氏)

カサノバ氏は就任した1年前からファミリー路線回帰をうたっているが、これまでのところ、うまくはいっていない。マックの復活にはまだまだ時間がかかりそうだ。

(取材/昌谷大介、武松佑季[A4studio])

■週刊プレイボーイ38号「緊急検証 どうした?ぐゎんばれ!俺たちの大好きだったマクドナルド!」より(本誌では、著名ファンからの応援&改革コメントも掲載!)

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