韓国のおいしすぎる“チョコパイ”が北朝鮮と一触即発の時限爆弾に?

週プレNEWS / 2014年11月6日 6時0分

韓国の定番お菓子が、事実上の“第2の通貨”として北朝鮮市民に大人気だという。

北朝鮮南部の開城(ケソン)市郊外にある開城工業団地。南北経済協力事業のシンボルとして、韓国が資本と技術力を、北朝鮮が土地と労働力を提供し2004年6月に造られた大規模工業団地である。

その開城工業団地を舞台に、韓国と北朝鮮がチョコパイをめぐって激しく火花を散らしているという。韓国紙の東京特派員が語る。

「今年5月、北朝鮮が突然、韓国企業が北朝鮮労働者に“おやつ”として支給していたチョコパイの搬入禁止を宣言したんです。それ以降、韓国企業はチョコパイの支給を一時ストップしていました。ところが、この10月になって、さらに北朝鮮が新しい要求を突きつけることに。

今度はチョコパイではなく、自国の製菓メーカーの製品をおやつに採用しろと言ってきたのです。北朝鮮は2011年にもチョコパイの支給中止を求めて韓国側とトラブっています。とにかく北朝鮮は、開城工業団地から韓国製のチョコパイを排除したくて仕方ないみたいです」

ごくありふれたお菓子にすぎないチョコパイに、どうして北朝鮮はそこまで警戒を強めるのか? 北朝鮮情報専門サイト『デイリーNK』の東京支局長、髙英起(コウ・ヨンギ)氏が語る。

「韓国製と北朝鮮製のお菓子の味の差は歴然としている。たかがお菓子とはいえど、金正恩(キム・ジョンウン)政権にとってこのチョコパイは南北の経済格差を北朝鮮国民に思い知らせるものであり、韓国経済力の象徴です。そのチョコパイが開城工業団地を通じて国内に広がれば、体制にダメージを与えかねないと北朝鮮は警戒しているのでしょう」しかし、韓国企業がおやつとして北朝鮮労働者に支給しているのはチョコパイだけではない。ソーセージやインスタント麺、インスタントコーヒーなども配っている。なぜ、チョコパイだけを執拗に排除しようとするのか? そのワケを前出の韓国紙東京特派員が明かす。

「韓国製のチョコパイはおいしいと評判になり、北朝鮮国内では1個700~1000北朝鮮ウォン(実勢レートで約8~13円)で売買されています。そのあまりの人気ぶりにチョコパイを買い取る専門市場も登場したほどです。つまり、チョコパイは単なるお菓子ではなく“第2の通貨”として大規模に流通しているのです。

賞味期限が6ヵ月と長く、アルミ箔で個包装されて持ち運びやすいこと、韓国企業の支給数がピーク時、ひとりにつき一日20個、月間トータルで500万~600万個に達したこともチョコパイが擬似通貨として流通する追い風となりました」

だが1個10円ほどで流通するチョコパイ、北朝鮮ではどれほどの価値があるのだろう? 北朝鮮情勢に詳しい『アジアプレス・インターナショナル』大阪オフィス代表の石丸次郎氏に聞いた。

「北朝鮮の労働者の平均月収は3000北朝鮮ウォン(約38円)ほどですが、社会主義下での計画経済が崩壊し、米1kgの実勢価格は6500北朝鮮ウォン(約81円)に高騰しています。国から受け取る公定給与だけではとても暮らせないのが実情です。

そのため、物資を横流しして闇市場で売ったり、さまざまな副業をするなどして生活費を稼がざるを得ない。そんな北朝鮮の人々にとって、換金できるチョコパイが貴重な収入源であることは間違いありません」石丸氏によると、米30kgの実勢価格は20万北朝鮮ウォン(約2500円)ほどだという。米30kgあれば、4人家族が1ヵ月間、飢えることはないが、その米を買うのにチョコパイが200~280個程度、つまり支給ピーク時10日間強分のチョコパイさえあれば事足りる計算だ。

「このままだと、チョコパイを介して韓国の優越性、先進性が北朝鮮国民にさらに浸透しかねない。それは金正恩政権の崩壊を意味します」(石丸氏)

だが、前出の韓国紙東京特派員によると、韓国企業にもどうしてもチョコパイを配らなければならない事情があるらしい。

現在、開城工業団地には125の韓国企業が入居し、約5万2000人の北朝鮮労働者が働いている。その平均賃金は月1万4000円ほどだ。

「ただ、その賃金が直接、労働者の手に渡ることはありません。まず全額を北朝鮮政府が受け取り、その後、北朝鮮当局によってその3割ほどが労働者に分配されるのです。つまり、7割は金正恩政権がピンハネするというわけです。しかも、分配されるのは現金ではなく北朝鮮製の品質の悪い生活必需品としか交換できないクーポン券です」(韓国紙東京特派員)

いくら働いても大部分を国にピンハネされ、クーポン券しかもらえないのでは労働者もヤル気が出ない。当然、残業や夜勤などもやりたがらない。

「そこで韓国企業が、少しでも北朝鮮労働者の労働意欲を引き出す策はないかと悩んだ末にたどりついたのが、おやつの名目でチョコパイを現物支給するという方法でした。これなら確実に北朝鮮労働者の手に渡り、北朝鮮政府もピンハネできない。狙いは当たり、多くの企業で生産性が飛躍的に向上しました。それだけに韓国企業もチョコパイの支給をやめろという北朝鮮の要求を簡単にはのめないのです」(前出・同)

あくまでチョコパイの搬入中止を求める北朝鮮と、チョコパイ支給をやめられない事情を抱える韓国。南北チョコパイ問題に、“甘い”解決策は見いだせそうにない。

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