レジェンド参戦で世界が注目するインドサッカーを、地道に頑張る日本人選手ふたりがシビアに考察

週プレNEWS / 2014年11月17日 6時0分

インドに誕生した新たなサッカーリーグ「インド・スーパーリーグ(以下、ISL)」をご存じだろうか。サッカー後進国ながらも、破格のギャラで世界中からデル・ピエロやトレゼゲといった“レジェンド”の選手たちを集め、世界から注目されている。

では、現地での盛り上がりはどれほどか? 「百聞は一見にしかず」ということで、記者はインドを訪れ、計3試合を取材してきた。

インド南部のチェンナイを皮切りに、西部のプネーとゴアを回ったものの、広い国土、異なる言語と宗教が混在するインドのISLの印象をひと口に語るのは難しい。ただ、どのスタジアムでも観客の盛り上がりが計算ずくで生み出されているように感じられてならなかった。

スタジアム演出は、米国企業のIMG(錦織圭やタイガー・ウッズらも所属し、スポーツ事業を手がける米国企業)が手がけているだけに、極めてアメリカ的でド派手。選手入場の際や、得点が入った際には華やかに花火が打ち上げられ、チャンスの際にはDJが観客を煽(あお)る。

また、サッカーを観に来たというよりも、ハーフタイムや試合前後にピッチに顔を出す人気クリケット選手や人気俳優が目当てという観客も少なくないように見えた。

肝心のサッカーの質はどうなのかーー? こちらも単純比較は難しいが、多くのレジェンドがいようとも日本のJ2レベルといったところか。

ISLではルール上、インド人選手が常時5人出場していれば、あとはすべて外国人選手で構成しても問題はない。何しろマーキープレーヤー(看板選手)以外にも7人の外国籍選手の保有が義務づけられているほどだ。従って、多くのチームは5人のインド人選手に加え、6人の外国籍選手という編成で戦っている。サッカースタイル的には、インドはかつてイギリスの植民地だった影響からかサイドからのクロスが目立ち、ディフェンスラインはかなりアバウト。時には味方GKからのロングキック一本で相手GKと1対1の決定機をつくるシーンもあるなど、かなり大味だ。

マーキープレーヤーに往年の輝きがあるかどうかも気になるところだが、実際に目にしたなかで光っていたのは、取材時点で4試合5得点と結果を出していた元ブラジル代表MFエラーノ(33歳・チェンナイ)、動きは遅くなったがシュートチャンスをつくる技術は相変わらずだったトレゼゲ(元フランス代表FW・37歳・FCプネー・シティ)くらいか。

一方で、リーグ開幕以降、ケガで欠場が続いているリュングベリ(元スウェーデン代表MF・37歳・ムンバイ・シティFC)などは「すでに誰も彼のことを話題にしていない」(地元紙『デカン・クロニクル』のT・N・ラグー記者)といわれ、一番のビッグネームであるデル・ピエロ(元イタリア代表・40歳・デリー・ダイナモスFC)も、いかにも体が重そう。

いくらレジェンドとはいえ、現役引退間近のベテラン選手が大半で、コンディションや体力面の課題も少なくないようだ。

ちなみに、インドにはISLとは別に2007年からスタートしている従来のインドリーグ(Iリーグ)がある。

そのIリーグのFCプネー(ISLのFCプネー・シティとは無関係)には、インド人の父をもつハーフで、日本で生まれ育ちながらも2012年にインド国籍を取得した和泉新(2013年からインド代表にも選出)と、J2時代のアルビレックス新潟でのプレー経験がある末岡(すえおか)龍二という、ふたりの“日本人”がプレーしている。

和泉は2006~2007年シーズンから、すでにインドで8年を過ごしている。一方の末岡もインドですでに5年間プレー。サルガオカーFC時代の2010~2011年シーズンにはリーグMVPに輝く活躍で、チームを優勝に導いている。そんなインドを知り尽くしたふたりは、今回誕生したISLについて、どんな印象を持っているのだろうか。2007年のIリーグ誕生時も知る和泉はこう語る。

「IリーグとISL、両方の誕生を見たけど派手さが違う。これまでのインドではサッカーが新聞の1面になることなんてほとんどなかった。そういう面でISLの効果は大きい。ただ、賛成できない部分もある。インド人が5人しかプレーしないで、あとは全員外国人。それでインド・スーパーリーグといえるのかなって……。また、ISLは実質10週間。(好条件の)サラリーにつられてIリーグから移籍したインド人選手は先のことまで考えていないのでは」

和泉は実際にISLのチームからオファーを受けたものの、Iリーグに残留した。一方の末岡はこう話す。

「ISLはこの2、3年、毎年のように『今年こそ開幕する』といわれていただけに、正直、今回もISL開幕なんてギリギリまで信じていませんでした(笑)。ただ、サッカーの普及という点で考えると、ISLの誕生は相当プラスだと思います。何しろIリーグはインドの一般層に全然知られてなかったんですから。露出が増えたことだけでも大きい」

ISLのチームとも練習試合を行なったというふたりは、ISLのレジェンドたちのプレーぶりについては、どう見ているのだろうか。

「デル・ピエロは要所でうまさこそ見せるものの走れない。これまで本当に活躍しているといえるのは、エラーノくらいでは。あとは思ったほど目立っていませんね。みんな、もっと簡単にできると思っていたのではないでしょうか。長距離の移動に加えて、時には中2日で試合をこなす厳しい日程もある。試合を重ねるごとに、どんどんコンディションが落ちてきているように見えます」(末岡)

「年を重ねたとはいえ、彼らが来たことはすごいと思います。ただ、走れないとどうしようもない。いくらインドとはいえ、歩いてサッカーはできない。デル・ピエロやピレス(元フランス代表MF・41歳・FCゴア)、リュングベリはどうにもなりませんね。デル・ピエロの体形は、もう単なるオッサン(笑)。たとえ90分スタミナが持たなくても、たまにはマジックなプレーを見せてくれればいいんですけど……」(和泉)

さすがのデル・ピエロやピレスも40代。レジェンドたちに頼ってばかりでは、ISLの未来はまだまだ不透明といえる。

(取材/栗原正夫)

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