消費税増税より効果的? 新しい税システム「政府通貨」の実現で格差社会は解消する

週プレNEWS / 2014年11月18日 6時0分

日銀による「異次元の金融緩和」で株価は上がったものの、景気回復の実感は乏しく、深刻な財政赤字は膨らむ一方で年金制度も崩壊直前……と、文字どおり問題山積のニッポン経済。

それらの諸問題を「政府通貨の発行」というウルトラCで解決してしまおうというのが「元国税調査官」の肩書を持つ大村大次郎(おおむら・おおじろう)氏の新刊『無税国家のつくり方』だ。

日銀じゃなく、政府が独自にお金を発行して、税金の代わりに使うという「政府通貨」だが、中東の産油国みたいに資源があるワケでもないこの国で、そんなのホントに「アリ」なんですか? 大村氏に聞いた。

大村 「アリ」です。なぜなら日本には個人金融資産が1500兆円、企業の内部留保金が300兆円と、合わせて1800兆円もの「財産」があるからです。これを担保に年3%程度の政府通貨を発行するのです。その額は約50兆円になります。

所得税、法人税、消費税という国の「基幹税」の総額は現在30兆円台後半です。仮に年50兆円の政府通貨を発行すれば、それらを廃止、縮小したとしても10兆円以上余りますから十分にやっていけます。減税されれば、低迷していた消費も回復し、「金回り」がよくなり景気回復にもつながります。それに、政府通貨は国債と違って返済の必要がありません。

―とはいえ、いくら日本政府が発行するといっても、一応「お金」ですから信用がなければ流通しませんよね?

大村 これも誤解している人が多いのですが、そもそも「お金」というのは皆さんが思っているほどちゃんとしたシステムがあるわけじゃないんです。

以前のように米ドルを一定量の金と交換できる、いわゆる金本位制度があった時代と違って、今はほとんどの先進国が「国の信用」だけを前提に貨幣を発行していて、金利を上げ下げすることで通貨価値を調整しようとしています。しかし、なかなか計算どおりにいってません。

世界的に見ても高い日本の貯蓄率と日本人の勤勉さというのは「資源」であり、国際的にも大きな「信用」になります。それを担保にして政府通貨を発行することに問題はないのです。また、こうした考え方は別に目新しいものではなくて、松下幸之助やノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・M・ブキャナンなど著名な経済学者も提唱しています。

―それにしてもなぜ、「政府通貨」なのでしょうか?

大村 元国税にいた人間として実感するのですが、そもそも「税金」を取るというのは非常に難しい作業なのです。税金は取るのも、その制度をつくるのも、その制度を公平にするのも難しい。例えば消費税は、税の専門家、学者はほとんど反対しています。

―消費税の何が問題?

大村 簡単に言えば「逆進税」だからです。例えば年収200万円の人だと、収入のほとんどを消費に使うでしょうから年収に対する消費税率は8%となります。でも、年収1億円の人が、5000万円を消費し、残りを貯蓄や投資に回したとすれば、年収に対する消費税の割合は4%となるのです。

年収200万円だと税率8%で、年収1億円なら税率4%……、同じことを所得税でやろうとしたら国民は大反対するはずなのに、消費税は間接税のためワンクッション入っているから気づかない。

実際、格差社会が始まったのは消費税が導入されてからで、それ以降、大企業と高額所得者の税金は下がっていますから、高額所得者の減税分を低額所得者が払っている、というのが消費税の実態なのです。

―でも、税金の代わりに年間50兆円もの政府通貨を刷ったりしたら、お金の価値が薄まってインフレが起きませんか?

大村 巷(ちまた)でいわれている制御不能な「ハイパーインフレ」になる心配はありません。私が示している政府通貨年間約50兆円という額は、今、日銀が金融緩和で市場に流し込んでいる額より少ないぐらいですし、そもそもハイパーインフレというのは極端にお金を刷らない限り、自然には起こらないものなのです。

単純な話、物価が100倍になるというのはお金の量が100倍になるか、モノの量が100分の1になるということですから、起こるべくして起こるのです。第1次世界大戦後にドイツを襲ったハイパーインフレも、中央銀行がお金を刷りまくった結果起きたことです。―今、日銀は金融緩和策で国債を買い取り、大量の資金を市場に流しています。それと政府通貨はどう違うのでしょうか?

大村 金融市場に資金を流し込む現在の金融緩和策では、金融機関にお金を流すことはできても、そのお金が社会に出回るかを政府はコントロールできません。当然、借り手がなければ、そのお金は「金融市場」で回り続けるだけで、一般社会にまで降りてきません。

一方、政府通貨は国が税に代わる財源として使えるので、社会保障費などの形で低所得者も含めた社会に直接届き、そのお金は消費に使われるので景気も刺激します。

―政府が独自にお金を刷れるとなると「無駄遣い」しちゃいそうな気もしますが?

大村 それを防ぐために「政府通貨」の発行額は厳密に制限しなければなりません。また、その用途も社会保障費、公務員給与、防衛費のみに限って、公共事業には使えないようにすべきでしょう。

日本では公共事業を持ってくる政治家がいい政治家になってしまっています。日本の膨大な財政赤字のほとんどは90年代に狂ったように行なわれた公共事業のための借金です。

―最後にもう一度聞きます、なぜ「政府通貨」なのですか?

大村 政府はしきりに「成長戦略」を強調しますが、そもそも成熟した先進国では新たな設備投資の需要も少なく、金融機関から社会にお金が流れづらい。終わりなき「成長」を前提とする資本主義は限界にきているのです。今、日本に本当に必要なのは「経済成長」ではなく「経済循環」です。

大企業や富裕層が大量の資産をため込んでいることが「経済循環」を妨げている原因なのですから、その資産の「信用」を活用して、金回りをよくすればいい。「政府通貨」はそれを実現する手段であり、日本の未来を救う新しい税システムだと思っています。

(構成/川喜田 研)

●大村大次郎(おおむら・おおじろう)




大阪府出身。元国税調査官。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。執筆、ラジオ出演、フジテレビ『マルサ!!』の監修などを手がける。主な著書に『税金を払う奴はバカ!』『あらゆる領収書は経費で落とせる』『税務署員だけのヒミツの節税術』『無税生活』『決算書の9割は嘘である』『税金の抜け穴』など

■『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!(2)』




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かつては松下幸之助も推奨していたという「無税国家」。税金をなくすことで、国民の勤労意欲、経済活動を促し、国家の財源は税以外の方法で確保するという内容だ。成長を前提とする資本主義が限界を迎えた今、「経済成長」ではない「経済循環」の必要性を説き、日本にある個人資産と企業の内部留保金を足した1800兆円を担保にした、政府通貨の発行を提唱する




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