原発ムラの思惑通り? 太陽光発電の買取り中止を経産省は2年前から知っていた!

週プレNEWS / 2014年11月18日 6時0分

固定価格買取制度(FIT)の問題について語る古賀茂明氏

『週刊プレイボーイ』で「古賀政経塾」の連載を持つ経産相の元幹部官僚が、今回は拡大版で再生可能エネルギーの施策における国と官僚の欺瞞をぶった斬る!

■メーカー保護が太陽光の割高を招いた

再生可能エネルギー(以下、再エネ)の固定価格買取制度(FIT)がスタートしたのは、2012年7月のことだった。

FITは再エネによる発電(太陽光、風力、水力、地熱など)について、電力会社が最長20年間、国の定めた価格で買い取ることを義務づけている。

再エネは「一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり、資源が枯渇しないクリーンなエネルギー」(資源エネルギー庁ホームページより)とされているだけに、普及すれば、原発や火力が中心だった日本の発電事情を一変させる切り札となる。

ところが、そのFITの先行きがにわかに怪しくなっている。この9月に、九電など電力会社5社が新規の買い取り手続きの中断を表明すると、それと呼応するかのように経産省もまた、FITの抜本的見直しに動きだしたのだ。

現在、経産省内では再エネの認定量に上限を設ける総量規制や、太陽光発電の買い取り価格を大幅に引き下げる案などが検討されているという。これらの案が採用されれば、再エネの普及に急ブレーキがかかることは間違いない。FITがスタートしてわずか2年の方向転換は、当初の制度設計がいかにズサンだったかを示している。

気の毒なのは、国を信じてメガソーラービジネスなどに乗りだした自治体や地域企業だ。

FITを前提に多額の資金を投じて発電事業をスタートさせたのに、いきなり見直しでは立ち行かない。倒産する事業者も出るだろう。事実、九電が10月に行なった説明会では、会場定員の倍以上の事業者が押しかけ、九電に抗議する光景が続出したという。

しかし、そもそも私に言わせれば、こうしたトラブルは起こるべくして起こったものだ。まずFITの仕組みを説明しよう。

FITの適用を受けるためには、第1段階として、その発電計画について経産省の認定を受けなければならない。さらに第2段階として、電力会社と接続契約(送電線につないで電力を買ってもらう契約)を締結して、はじめて再エネ事業者は電力を売ることができる。

今回、電力各社が買い取り中止に踏み切ったのは、太陽光発電の経産省による認定量が増えすぎたのが原因だ。

FIT開始から今年6月まで、政府に認定された再エネの設備の出力は7178万kW。今の原発1基の発電量が約100万kWだから、約2年間で実に原発72基分の再エネの発電計画が認定された計算だ。

そのうち太陽光発電のシェアは約9割、6604万kWにもなる。これほど太陽光に偏重したのは、1kW当たりの買い取り額が40~42円と欧州に比べて2倍の高値に設定されて、どうやっても必ず儲(もう)かる仕組みになっていたためだ。

例えば、九電管内では2014年5月末までに、なんと1782万kWの太陽光発電の申請が認可されている。

九電の真夏のピーク電力は1600万kWであり、認可された太陽光1782万kWだけでこれを上回る。需要が少ない時期の昼間電力使用量約800万kWに比べたら2倍以上だ。誰がどう見ても多すぎるのは明らかだろう。

そもそも、太陽光や風力は天候などによって発電量が大きく変動する。その割合が5~10%を超えただけでも電力の需給バランスが崩れて周波数や電圧が乱れ、大規模停電や発送電設備の故障につながるので、そのような危機を防ぐために、再エネの新規受け入れを中止するというのが、電力会社の言い分である。

彼らの言葉はまやかしだらけだが、少なくとも経産省はこの事態をとっくに予測していたはずだ。

太陽光発電の価格が高くなったのは、実は、割高な日本製太陽光パネルを採用したいという経産省の思惑が働いたからだ。本来なら、再エネ後進国の日本はこの分野で先進国のドイツの価格水準(日本の発電コストの半分)を目指すべきだった。

だが、その低価格ではバカ高い値段の日本製太陽光パネルは使えない。当時、パネルメーカーは経営危機を迎えていた。そこで経産省は買い取り価格をわざと高く設定し、OBも多数天下りしている日本メーカーを救済しようとしたのだ。

■経産省の本音は“原発ありき”

太陽光発電が増えすぎるという問題を経産省がなんの対策も打たずに放置してきたのには、もうひとつ理由がある。

FITをスタートした当初は反原発の世論が非常に強かった。そんな時期に「太陽光を増やしすぎるのはやめろ」と言えば、反原発派から「原発を再稼働させたいからだ」と批判され、脱原発の流れを加速させる恐れがあった。経産省はそれがいやで、あえて沈黙を守り通したのだろう。

その後、14年4月に、エネルギー基本計画で、原発は「重要なベースロード電源」とされ、川内原発の再稼働も確実になった。さらに、太陽光が一部地域でピーク電力さえ上回る状況にまでなった現状ではFITの制度見直しに、もはや誰も反対できない。今こそ、安心して再エネにブレーキをかけられる。これが経産省の判断だ。

ちなみに、事業者から損害賠償訴訟を起こされたとしても、経産省は一定の基準を満たした事業者に認可を与えただけで、契約するかどうかは電力会社の判断だと逃げを打てるし、電力会社はFITの条文に「安定供給に支障があるときは接続を拒否できると書いてある」と言えばいい。つまり、誰も責任を取らずに済むのである。

だが、こんなことを許せば、すべては原子力ムラの思惑どおりになってしまう。

私は日本の電力を再エネにシフトさせることは十分に可能だと考えている。なぜなら、ヨーロッパなどでは発電量における再生エネのシェアが2、3割を超え、5割超を目指す国も多い。送電技術などを革新し、日本の電力会社が主張するような大規模停電が起きないよう努力し続けているのだ。技術大国の日本がそれをまねすることはたやすい。

各電力会社間の連携線を太くして、電力を融通し合ったり、管区内の送電網の容量を増やせばよい。高性能の蓄電池を開発して、余剰電力を蓄えておくなどの対策も有効だろう。

本来ならば、国はFIT施行と同時に発送電の分離を断行した上で、原発事故の全コストを原発コストとして上乗せし、原発への補助金支出もやめ、火力にはCO2削減のための炭素税をかけて、真の発電コストによってすべての種類の発電を競わせるべきだった。

だが、経産省はそれを意図的にサボタージュし、再エネの買い取りが不可能となる状況をつくった。それは、原発再稼働の追い風になる。

ドイツが再エネ関連で20万人の雇用を生み出したように、原発から再生エネへのエネルギーシフトをやり遂げることができれば、日本にも新たな成長エンジンとなる有力産業が登場することだろう。

FITの見直しに臆することなく、日本は再生エネ開発にいっそうの力を注ぐべきだ。

■古賀茂明(こが・しげあき)




1955 年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011 年退官。著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。新著『国家の暴走』(角川oneテーマ21 )が発売中。『報道ステーション』(テレビ朝日系)のコメンテーターなどでも活躍

(撮影/山形健司)

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