加藤嘉一「世界の政治は『中道化』している。日本も例外ではありません!」

週プレNEWS / 2014年11月24日 11時0分

アメリカの中間選挙では「政治の中道化」という潮流がはっきりと見えました。議会政治は今、ひとつの分岐点を迎えているとぼくは感じています。

11月4日に行なわれたアメリカの中間選挙で、共和党が8年ぶりに上院で過半数の議席を獲得。下院でも議席数を伸ばし、オバマ大統領の民主党を圧倒しました。この結果によって、オバマ政権のレームダック(死に体)化が進むのではないかと指摘されています。

ただ、近年では投票予測が高度化しており、共和党有利は選挙前の段階で明らかでした。肝心の争点や論点については、あまり見るべきものがなかったという印象です。

アメリカ国内でも、「共和党のどこが民主党より優れているのか」といった議論は選挙前からあまり見られなかった。「イスラム国」に対して、より確固たる姿勢を示すべきだと主張し続けている点が指摘されますが、オバマ大統領も中間選挙を意識し、9月にはシリア領内でイスラム国への空爆を始めました。

この選挙は、議会における「民主党対共和党」という図式ではなく、単にオバマ大統領への評価を下すものだったという見方が正しいとぼくは考えます。結果として共和党の反オバマキャンペーンが成功した、というだけのことです。

実情を冷静に見れば、オバマ大統領は共和党政権下の2008年9月に起きたリーマン・ショックの直後に就任し、悪化した経済を立て直してきました。一時は10%を超えていた失業率は、今年10月の時点で5.8%にまで回復。対GDP比で10%以上あった財政赤字も、5%台まで圧縮しています。一方では貧富の格差が拡大したという面もありますが、少なくとも国内向けの財政・経済運営に関しては、オバマ政権は一定の評価を受けるべきハンドリングで成果を挙げてきました。

オバマ政権に対する批判は外交面に集中しています。アフガンやイラクからの撤退時期を見誤るなどして、中東情勢をいっそう不安定にさせてしまった。この点で共和党につけ入るスキを与え、支持を大きく失ったことが中間選挙のキャンペーンや結果に影響しました。

選挙後、ワシントンで政治世論を観察し続けていますが、「これで共和党は単なる“反対党”ではいられなくなった。法案を通すべく、実質的な行動を取らなければならない」という雰囲気が充満しています。党内分裂も懸念される共和党にとっての勝負はこれからといえるでしょう。

ぼくが今回の選挙を通して感じたのは、「政治の中道化」という時代の流れです。最近は民主党と共和党の間に、政策面で明確な違いが見いだしづらくなってきた。そんななか、有権者が何を思って投票したかといえば、おそらく多くはオバマ大統領個人への「信任/不信任」という単純な視点なのでしょう。

これはアメリカだけの問題ではありません。例えば台湾は、以前なら対中強硬派と接近派という明確な対立軸がありましたが、最近は独立の話も形骸化し、いかに中国とうまくやっていくかという議論ばかり。韓国にしても、かつては北朝鮮問題が与野党の大きな対立軸でしたが、最近は内政問題ばかりに目が向いている。政党が掲げる政策ではなく、指導者が好きか嫌いかという基準で議会政治が展開されています。

日本でも民主党から自民党に政権交代して以降、政策の争点がはっきりしません。今年は安倍首相も靖国参拝を見送りましたし、消費増税やTPPにしても、民主党時代から継続している政策です。

アメリカの場合、与野党の対立軸がおぼろげになることで、二大政党制のダイナミズムが失われつつあります。議会政治の機能はどうなるのか。有権者の意思はどう反映されるのか。ひとつの分岐点を迎えつつあるような気がしてなりません。

民主主義国家の有権者として、政治の中道化に無関心でいられるというのなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(KATO YOSHIKAZU)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。ハーバード大学フェローを経て、現在はジョンスホプキンス大学高等国際関係大学院客員研究員。最新刊は『たった独りの外交録 中国・アメリカの狭間で、日本人として生きる』(晶文社)。中国のいまと未来を考える「加藤嘉一中国研究会」が活動中!




http://katoyoshikazu.com/china-study-group/

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