「草食男子」誕生から10年。名づけ親が語る本来の意味と真実

週プレNEWS / 2016年10月23日 6時0分

モテない女子の言い訳に使われるようになった「草食男子が増えた」

「草食男子」という言葉が誕生して今年で10年。皆さんは、この言葉に対してどんなイメージを持ちますか? 

実は、名づけ親はしっかりとした意味を込めて命名したそう。そこで、改めて今、「草食男子」の歴史をひもとく!

■本来の「草食男子」はポジティブな言葉だった!

2006年10月。『日経ビジネスオンライン』の連載コラム『U35男子マーケティング図鑑』の中で、「草食男子」という言葉は誕生した! それから10年…。世に完全定着したこの言葉をつくった深澤真紀氏に、お祝いを兼ねて伺ってみると意外な答えが…!!

戻れるなら10年前に戻ってあの原稿を破りたい。『草食男子』と呼ばれている人たちに申し訳ない気持ちでいっぱいです」

えっ! どういうこと!?

「当時39歳だった私は、バブル世代や団塊世代のオヤジから否定されていた20、30代の男性たちを肯定するためにあの言葉をつくったんです。“草食”という言葉も、日本人に根づく仏教マインド(不殺生など)に基づいてポジティブな意味合いで採用したものでした。

世間ではバブル時代を愛するオバサンが名づけたと思われているかもしれませんが、そもそも私は、世代はバブルでも、思想はくそ左翼のくそフェミニスト(笑)。モテることを自分の価値として、女性をトロフィー扱いするような団塊・バブル世代のオヤジたちに対して、女性をリスペクトでき、人間として対等に付き合える新しい世代の男性たちのことを正しく理解させたかったというだけなんですよ」

そう聞くと、確かに現在普及している「女に興味がない」「弱々しい」というような否定的なニュアンスとは大きく異なっている。では、なんでこのような広がり方をしてしまったの??

「ネガティブな意味合いで世に認知され始めたきっかけは、2007年に『non-no』や『an・an』といった女性ファッション誌が『私たちがモテないのは草食男子のせい』といった趣旨の特集を組んだこと。『男子のせいじゃなくて、あなたたちももっと頑張れよ!』と思ってはいましたが、女性ファッション誌での流行語が一般に広まることはあまりないですし、ただのキャッチーな言葉として消費されて終わるはずだと思っていました」

しかし、深澤氏の予想とは裏腹に、「草食男子」はさらにマイナスな意味合いを加速させることに!

「2008年のリーマン・ショックで景気が悪化したことが大きかったですね。『車が売れなくなったのは草食男子が増えたからだと新聞・テレビが取り上げたんです。その頃にはwikipediaに私が名づけ親だと書かれるようになり、取材も増えたので、責任感から『違います、褒め言葉ですよ!!』と慌てて火消しを始めましたが、間に合わず、燃え広がる一方でした」

そうして一気に世に浸透すると、2009年には流行語大賞トップ10に選出。

「誕生から3年もたってるのに、なぜという思いでした」

しかも、通常は流行語大賞に選ばれた言葉はすぐに消えるものなのに、10年たった今でも死語になっていない

「男からチヤホヤされないことに不満なモテない女性たち、何かあれば若者のせいにしたいオヤジたちの呪いを感じずにはいられません」

■草食男子はデキる。罪も犯さない!

ふむ。名づけ親の本心はわかったけど、現実として、(深澤氏が名づけた元の意味での)草食男子とは、結局、肯定すべき存在なの?

「ハッキリ言って、彼ら草食男子はバブル世代・団塊世代の男性などよりもずっと優秀です。『ドラえもん』を読んで育った世代と『DEATH NOTE』を読んで育った世代では、状況やルールの理解力が違います(笑)。私の世代だと、最初の放映時の『機動戦士ガンダム』を理解できていたのは学年でトップ10の秀才だけでしたから。そして、少年期に景気が右肩上がりの時代だった上の世代に比べ、草食男子は少年期にバブルもはじけ、オウムの事件や震災など大きな事件も経験しているという違いも大きいです」

草食男子は、社会を安全にしているともいう。

「草食男子世代は上の世代と比較して、犯罪率も非常に低いんです。酒や車にもあまり興味がないので、飲酒運転や交通事故も少ない。『今の若者はけんかもスピード違反もせず情けない』と言うオヤジをたまに見かけますが、おまえが情けないよと言いたい」

草食男子は上の世代のグチの標的になっていると?

「はい。さらに、『全然遊ばなくなった』ともよくいわれますが、そもそも、草食男子が上の世代と比べてセックスをしていないという認識は間違っています。バブル世代が20代だった頃の未婚男性の童貞率と、草食世代が20代だった頃の童貞率はそれほど変わりません

バブル世代の男性が昔からイケイケだったというイメージはつくり上げられたもので、彼らのなかには『共学だったけれど女子とは一度も話したことがない』なんて人も多く、女友達をつくれる草食男子よりも全然女慣れしていなかった。女性側も貞操観念が今より強かったですしね」

■「少子化の原因」もぬれぎぬだった!!

ということは、現代日本の大問題である少子化も草食男子のせいではない?

「そのとおりです。ジローラモのような情熱的な男性が多いイタリアでも少子化は進んでいます。兵役がありマッチョなイメージのある韓国でも少子化はかなり深刻な問題です。女好きだったり、マッチョであることで子供が生まれるわけじゃないんです」

とはいえ、日本人のセックスレス化は世界でも有名なはず。無関係じゃないのでは?

「関係ありません(キッパリ)。ギリシャ人は日本人の2.5倍セックスをしているというデータがありますが、少子化は進んでいます。結局、結婚や子づくりは経済面に強く関わることなので、できるかできないかは社会に影響される部分が大きい。個人の思想の変化なんかで解決される問題じゃないんですよ」



最後に! 10年前に「草食男子」と名づけられた彼らも、もうすぐアラフォー。草食男子の今後の人生は大丈夫?

「はい。なぜなら、ひとりで生きていけることも草食男子の大きな特徴だからです。

ゴルフや麻雀など人と集まる趣味しか持たず、家事や体調管理は奥さんに任せているバブル世代・団塊世代の男性からすれば不安に見えるでしょうが、彼らはひとりで楽しめる趣味を持ち、ランチもカフェでひとりで済ませられる。自ら健康診断に行き、自分の体脂肪率まで把握している。結婚せずともサバイブしていけるので心配無用です

また、結婚したとしても、奥さんに依存することなく、お互いに良好な関係をキープできる。そういう意味で草食男子って、上の世代よりもたくましいんですよ。つまり、強さを無駄に誇示するたくましさではなく、『月末まで3000円しかないからクーポンを使おう』というような、生きるためのたくましさだということなんです」

* * *

命名から10年にして明らかになった「草食男子」の意外な真実。その生きざまは間違ってはいないと深澤氏は断言する。悪評に惑わされず、堂々と生き抜け、草食男子!!

●「草食男子」名づけの親 深澤真紀(FUKASAWA MAKI)

1967年生まれ。東京都出身。コラムニスト、淑徳大学客員教授。いくつかの出版社で編集者として勤めた後、98年に企画会社タクト・プランニングを設立。著書に『女オンチ』(祥伝社黄金文庫)など

(取材・文/黄孟志 撮影/本田雄士 イラスト/福田嗣朗)

週プレNEWS

トピックスRSS

ランキング