肩書き捨てて「地獄」になった元官僚…生還に導いてくれた恩人は杉村太蔵氏

しらべぇ / 2014年12月7日 10時0分

「肩書きありきでやっていた仕事なのに、自分のチカラでやった仕事だと勘違いしてた」―。そう過去を振り返るのは、30歳の時に経済産業省を退職してからおよそ3年が経つ元官僚の宇佐美典也氏(33歳)だ。

現在は太陽光や小水力発電のプランニング業に携わる宇佐美氏だが、「官僚」という肩書きを捨ててからの数年間、“地獄”とも呼べるドン底の境遇を味わったという。このたび、その期間の体験談やそこから得た“生き方”や“働き方”に関する提言をまとめた新書『肩書き捨てたら地獄だった‐挫折した元官僚が教える「頼れない」時代の働き方』(中公新書ラクレ、12月9日発売)を上梓した宇佐美氏。

今回は、同書で書き切れなかった“地獄”期間の「人付き合い」について語ってもらった。(「」内はすべて宇佐美氏)

■経産省時代は感謝されていた人たちに…

「経産省時代、僕は新進気鋭の研究者や新しいことをやっている企業に結構予算を配分していました。もちろん確固たるポリシーを持って精査したうえで予算配分してたんですけど、やっぱり『宇佐美さんのおかげで…』って感謝される立場になるんですよね。それで調子に乗って、退職した後にそういった研究機関や企業に挨拶に行くと、『やめたくせに、何しに来たの?』という反応をされるんです。

キツいのは、直接言われるんじゃなくて、会った後にツイッターにボロクソ悪口書かれてたりするわけですよ。『何も考えずにやめやがって』みたいな感じで…。それを見た時は唇を噛み締めましたけど、悪いのは僕。経産省時代、組織の肩書きありきでやっていた仕事を、自分のチカラでやった仕事だと勘違いしてたわけですから。」

■自己紹介も他己紹介も地獄

“地獄”の試練は、プライベートな人付き合いにも及ぶ。

「これはまぁ、肩書きとは関係ないですけど、とにかくお金がなくて大変でした。大学時代の同級生の結婚式のご祝儀や会費が払えなかったほどです。で、つらいのは、そういう場、特に結婚式二次会とかでの、人との出会いですよね。友人のみんなは、銀行とかコンサルとか弁護士とか、社名を出して自己紹介したり紹介し合ったりしているのに、僕は『どうも、宇佐美です』と言うしかない。

そして紹介される時は、『元官僚の宇佐美』って、どうしても“元”が付いてしまいますよね。“元”まで付けて、過去の肩書きに頼らざるを得ないことに愕然としました。」

■恩人の存在

そんな宇佐美氏にとって、“地獄”期間から生還させてくれる恩人となったのは、元衆議院議員で現在は投資家・実業家、タレントとしても活躍する杉村太蔵氏だったという。

「杉村さんとは、経産省を辞めてから、BLOGOSがセッティングしてくれた対談で初めて会いました。その頃は、“元官僚”というのに自分も縛られていて、終始まじめな政治の話に徹したんですけど、杉村さんからは、『そんな姿勢じゃ面白くないよ。僕は、あなたはもっと面白い人間だと期待してました。もう官僚じゃないんだから、考え方変えなさい』と言われました。その物言いは、“上から目線”じゃなくとても丁寧で、すぐに人柄に魅かれましたね。

杉村さんは、とにかく一生懸命働くことでトイレの清掃員から議員にまで上がっていったという経歴をもつ人なので、こちらから言わずとも自分が“地獄”のような状況だと察してくれて、『目の前のことを、とにかくもっと一生懸命やりなさい。やることがないなら、なんでも探しなさい』とアドバイスをくれて、僕がお金がない時に凄くいいお店で何回も奢ってくれました。『いつでも電話してこい』という言葉は本当に有り難かったです」

杉村氏に、事業アイデアも含めさまざまな相談を持ちかけたという宇佐美氏。『石にかじりついてでも生きろ』という、テレビで見る杉村氏のイメージとは異なるような熱いアドバイスは、宇佐美氏にとって金言となっているそうだ。

言動で導いてくれた杉村氏の存在。宇佐美氏は、新著のなかで提言したいことのひとつに、「自分の所属する組織だけに依存したら、それがなくなった時にみんな離れていく。自分独自の人間関係をもつことが重要」ということを挙げている。肩書きをなくしてから初対面することになった杉村氏との出会いは、「どうも、宇佐美です」という自己紹介でも堂々と生きていけるきっかけとなる僥倖だったようだ。

※宇佐美典也氏プロフィール
1981年、東京都生まれ。東京大学経済学部を経て経済産業省に入省。企業立地促進政策、農商工連携政策、技術関連法制を担当したのち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)にて電機・IT分野の国家プロジェクトの立案などに携わる。在職中にブログで自身の給料や官僚生活を赤裸々に公開して話題に。退職後、『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』(ダイヤモンド社)出版。現在、株式会社トリリオン・クリエイションの代表取締役を勤めながら、テレビのコメンテーターなどへと活躍の幅を広げている。

(取材・文/しらべぇ編集部・宇佐美連三 http://sirabee.com/author/renzo_usami/ 、植岡耕一)

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