【インド女性に学べ!】もう絶対怪我しないための走法「チーランニング」入門

しらべぇ / 2014年12月6日 17時30分

ランナーの中には、大会を前に怪我に苦しむ人も少なくない。疲労の蓄積、あるいはオーバーワークなどが主な原因であり、それらがランニングを辞める理由にも繋がっている。これは非常にもったいないことだ。

現在、ランニングには実に様々なメソッドが存在する。今回は“怪我予防”に着目した『チーランニング』というメソッドをご紹介しよう。

国内唯一のインストラクター

ワークショップでチーランニングを教えるのは、“国内唯一”のインストラクターである中島 貴裕(なかじま たかひろ)先生。東京都内をはじめ、国内各所でワークショップを開催しているという。

中島先生は以前から右足に怪我が多く、足首は靭帯断裂後に関節不安定となり捻挫が多発。さらに、膝は半月板損傷で摘出手術している。そのため、走った後はどうしても膝や足首に痛みがあった。

そんな中で出会ったのが、水泳のトータルマネージョンスイミング。「本当に効率的な泳法で、水泳が楽しくて仕方ありませんでした。」と語る中島先生は、そこでチーランニングを知ったという。すぐにチーランニングについて調べてDVDを購入。説明通りに走ったところ、その素晴らしさに驚いたそうだ。

「当時は踵からの着地が一般的でしたが、“足裏全体で着地”“絶対に蹴らない”“足は平行に揃えて走る”という点を正すだけで、右足の痛みが出なくなったんです。」
この実体験から、正しい走り方を習う機会を一般ランナーにも提供すべく、彼はインストラクターを志した。現在、チーランニングの正式なインストラクターは国内にただ一人だという。

チーランニングとは?

チーランニングとは、“タイチー(=太極拳)”の身体操作術や身体の使い方を、ランニングに応用したものだという。米国ダニー・ドラヤー氏によって創設されたメソッドで、米国ではメジャーなものだ。特にウルトラランナーやトライアスリートを中心に広まっている。チーランニングとは走るための“スキル”であり、その根幹である『アライメント』と『リラクゼーション』を習得すれば、怪我を未然に防ぎ、かつ効率的に走れるようになるというのだ。

「市民ランナーは、すぐ走り出してしまう人が多いですよね。しかし他のスポーツと同様に、ランニングにも技術があります。しっかりと怪我なく走り続けていくためには、そのための準備が必要です。」

ランナーはどうしても体力重視の傾向にあるが、パフォーマンスを上げるにはスキルという見えない部分も大切。その上でチーランニングは、『力と調和する』太極拳を取り入れている。

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「人は立っているとき、下への重力と調和しています。力に頼ればこの調和に逆らって走ることとなり、その分だけ筋肉が疲労します。例えばパンチを受けるときに、手を引いて力を逃がすと、受け手側もそこまで衝撃を受けませんよね。これも1つの調和であり、練習するほどに上達します。」

つまり、チーランニングは重力に逆らうのではなく、むしろその力を上手く使って(調和して)走るというもの。身体を前傾させると頭が重力に引っ張られて、身体が倒れようとする。その倒れこみを瞬間的にだけ足で支え、それを繰り返すことで前に進んでいく。「自分が走っているというより、道路がその速度で向かってくる感覚です」と教えてもらったが、確かに重力が走る力になるのであれば、筋肉疲労も軽減されて怪我も防げるかもしれない。

ワークショップの中身を覗き見!

今回有り難いことに、皇居で行われたワークショップを取材することができた。すべて公開することは出来ないが、基本部分やトレーニングの一部をご紹介したい。

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まずワークショップは、次の4パートに分けて行われた。

1)姿勢の作り方
2)前傾の仕方
3)脚の使い方
4)腕の使い方

チーランニングを理解するうえで、それぞれ少しずつ触れておこう。

1)姿勢の作り方

特に重要なポイントであり、骨盤を起こした真っ直ぐな姿勢を作ることで、脚への負担を減らすことができる。

「インドなどで、頭に水瓶を乗せて歩いている女性を見たことがありますよね?彼女たちは何も筋肉が発達しているのではなく、むしろ非常に華奢です。では、なぜ重い水瓶を乗せても平気で歩けるのか。それは姿勢が真っ直ぐで、“骨に乗っている”からなんですよ。」

言われてみれば確かに、である。疑問に思ったことのある方も少なくないだろう。

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「姿勢作りに大切なのが、アライメントです。ボディパーツをすべて進行方向に向けること。つま先が開いたり、あるいは内股になって走ったりしている人が非常に多いですよね。前に進むのにつま先が異なる方向を向いていると、捻れが生まれて膝の外側が痛みます。」

怪我の中でも、膝を痛めるランナーは非常に多い。足を並行に揃え、膝、腰、上半身、そして顔までを進行方向に向ける。頭上に低い天井があることをイメージし、そこにつむじを押し当てるように立てば良い。ここでポイントなのが、軸がブレないようにコア(=体幹)でしっかり維持することだ。

2)前傾の仕方

姿勢を維持したまま、足首から(踵を着けて)前傾させる。壁に向かって倒れるか、誰かに支えてもらうと良い。

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チーランニングでは、この前傾角度でギアを切り替え、スピードを調整するという。ギアは『1.ジョギング』『2.会話を楽しめる』『3.レースペース』『4.一生懸命なペース』の4段階。しかしその角度は、それぞれ2.5cm前傾にさせるだけだ。

3)脚の使い方

脚の基本的な使い方について、中島先生は『ヒールUP&ニーDOWN』を上げていた。つまり踵をお尻の方に上げ、膝が地面に向けられた状態で走るのだ。ここで、目を疑う意外なアイテムが登場したのでご紹介しておこう。それが…

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“一本歯下駄”である。これを履くことで自然と着地が身体の真下となり、立ち姿勢のまま真っ直ぐに進んでいくことが確認できるという。参加者も初めての体験に戸惑いながら、少しずつ感覚を身に付けていたようだ。

以下の点に注意しながら走ることで、無駄な力を使うことなく、楽に走れる。

・ふくらはぎの力が抜けていることを確認する
・ヒールUPによって脚で地面を蹴らない走り方を心がける
・コア(=体幹)を使って姿勢と前傾をキープする

「スピードは後からついてきます。まずは基本の走り方を身につけることが重要ですよ。」と中島先生。力に頼らなければ疲労は少なく、長い距離も楽に走ることができるのだ。

4)腕の使い方

ランナーの走り方を見ると、腕を小刻みに上下させたり、あるいは左右に振ったりと様々な動きになっている。しかしチーランニングでは姿勢におけるアライメントと同様に、腕もまた進行方向に振っていく。

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中島先生は、「ゴムボールを両腕の間に置いて、その横を擦るようなイメージで振ってください」と教えていた。そのうえで、さらに次のようなポイントに注意していく。

・コンパクトにしっかりヒジを曲げる
・手の平は蝶々がいると思って握りつぶさないように優しい握力を保つ
・ヒジと手が肋骨の横を通るイメージで振る
・引くときに力を入れて前にきたときは脱力させる
・肩は真っ直ぐに

そのうえでリズムを取り、ケイデンス(1分間あたりの回転数)を90に維持して走る。電子メトロノームなどを利用すると、リズムが掴みやすいとのことだ。

正しい身体の使い方を覚えよう!

中島先生はチーランニングを通じて、『正しい身体の使い方ができると、楽にパフォーマンスを上げることができる』という意識浸透をランナーに促進させたいと語ってくれた。

「昨今は、実に様々なランニング法の学習機会が増えています。手段は何でも良く、私はたまたまチーランニングを教えているだけ。それも1つの手段に過ぎないんです。」
何より大切なことは、正しい身体の使い方にある。チーランニングは、それを強く感じさせてくれるメソッドといえるだろう。

ランニングと長く、楽しく関わっていくうえで、試してみる価値はありそうだ。最後に中島先生から頂いた、ランナーの皆さんへ向けたメッセージで締めくくろう。

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「生き方と同じく、ランニングにも多様性があります。速さを求めても、仮装などで楽しさを求めても、あるいは健康のためでも良いでしょう。5kmでも100kmでも、走ることができた喜びは同じ。自分とランニング、そこに他人を介在させると他人との比較が始まり、ランニングが楽しくなくなりますよ。楽しさなくして得るものなし。No fun no gain!」

(取材・文/しらべぇ編集部・三河賢文 http://sirabee.com/author/masafumi_mikawa/ )

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