次々に見つかる系外惑星。「GJ 357 d」には液体の水が存在するかも
sorae.jp / 2019年8月2日 21時31分
太陽系外惑星発見のニュースが相次いでいます。NASAは7月31日、うみへび座の方向およそ31光年先にあるM型の恒星「GJ 357」に3つの系外惑星が見つかったことを発表しました。
発見したカナリア天体物理研究所(IAC)のRafael Luque氏らによる研究結果は論文にまとめられ、Astronomy and Astrophysicsを通して公開されています。
■きっかけは「TESS」の観測データ発見のきっかけは、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」でした。TESSは惑星が主星(恒星)の手前を横切るときに主星の明るさが減少する「トランジット」を利用していますが、今年の2月にGJ 357の手前を3.9日ごとに横切る系外惑星らしきものをTESSの観測装置が検出したのです。
Luque氏らのチームはGJ 357における系外惑星の存在を検証するために、公転する惑星の重力によって主星の位置がわずかに前後へ揺れ動く様子を捉える「視線速度法」という手法を使いました。南米チリのラスカンパナス天文台、スペインのカラーアルト天文台、そしてハワイのケック望遠鏡による観測データを1998年までさかのぼって調べたところ、GJ 357には全部で3つの系外惑星が存在することを突き止めたのです。
■3つの系外惑星は地球よりも質量が大きめTESSがキャッチした一番内側の「GJ 357 b」は、地球に対して22パーセント大きなサイズと1.8倍の質量を持っていて、公転周期は3.9日。平衡温度(大気の存在を考慮せず、主星から受け取るエネルギーと惑星が放射するエネルギーだけを考慮したもの)は摂氏254度と高温なため、研究チームからは「ホットアース」と呼ばれています。
すぐ外側を公転する「GJ 357 c」は地球の3.4倍の質量を持ち、公転周期は9.1日。平衡温度は摂氏127度と見られています。1か月近く同じ場所を観測し続けるTESSなら発見が期待できる公転周期なのですが、公転軌道がGJ 357 bに対してわずかに傾いていて(研究チームは1度未満と予想)、地球からはトランジットが観測できない可能性が指摘されています。
そして、今回見つかった系外惑星のうち一番外側を公転する「GJ 357 d」は、地球の9.1倍の質量を持ちます。公転周期は55.7日なので、地球からトランジットが観測できる軌道だとしても、TESSの観測期間内ではそれが起こらなかったのでしょう。
なお、トランジットが観測されていないGJ 357 cの直径は、今のところまだわかっていません。GJ 357 dも同様ですが、仮に岩石質の惑星であるとすれば、その直径は地球と同程度から2倍の範囲におさまるだろうと予想されています。
■GJ 357 dには液体の水が存在する可能性も注目は、GJ 357 dの温度です。GJ 357 dの公転軌道はハビタブルゾーンに入っていて、太陽系で例えれば火星と同じくらいのエネルギーを主星から受け取っています。算出された平衡温度は、摂氏マイナス53度です。
平衡温度では、大気中の二酸化炭素や水蒸気などによる温室効果が考慮されていません。もしもGJ 357 dが十分な大気を持っていれば、温室効果によって実際の温度は平衡温度よりも高くなり、地表に液体の水が存在する可能性があります。また、地球の9倍の質量があるのなら、今も融けた状態にある金属のコアを持ち、そのダイナモ作用によって磁場が生じている可能性も高まります。
NASAが「Promising World(有望な世界)」と表現するGJ 357 d、そこにどのような環境が広がっているのかを知るためには、大気の観測が欠かせません。2021年打ち上げ予定の「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡などによる、将来のより詳しい観測が待たれます。
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Chris Smith
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/confirmation-of-toasty-tess-planet-leads-to-surprising-find-of-promising-world
文/松村武宏
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