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宇宙最初期に誕生した「老けた銀河」が見つかる

sorae.jp / 2019年9月11日 22時51分

国立天文台は9月10日、初期の宇宙における「老けた銀河」に着目した馬渡健氏(東京大学宇宙線研究所)らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、The Astrophysical Journalに提出されています。

今回見つかった「老けた銀河」(右)と、同じ銀河の星形成が活発だった若い頃(左)の想像図

■最初期の銀河を見つけるための逆転の発想

およそ138億年前に誕生したとされる宇宙。観測技術の向上により、近年ではその初期の様子が徐々に明らかになってきました。

これまでの観測では、地球からおよそ133億光年離れた銀河「MACS1149-JD1」が見つかっており、宇宙が誕生してから5億年後にはすでに銀河が存在していたことがわかっています。宇宙最初期の銀河はこれよりも前、宇宙誕生から1~5億年という早い時期に誕生したとみられていますが、現在の観測機器で直接見つけることはできません。

直接見つけられないなら別の方法で最初期の銀河を発見できないかと馬渡氏らが注目したのは、若い銀河ではなく年老いた銀河でした。

銀河が形成される仕組みのひとつに「大量の星が一気に形成され、その後は年老いていく」というものがあります。宇宙最初期にこのようなプロセスで形成された銀河があれば、宇宙がまだ若いうちに銀河が老けていくことが予想されます。現在の技術で観測できる範囲内に老けた銀河が見つかれば、そこから銀河が誕生した時期を逆算できるのではないか、というわけです。

■宇宙誕生から3億年頃に誕生したとみられる「老けた銀河」が見つかった

馬渡氏らの研究チームは、ろくぶんぎ座の方向にある満月9個分ほどの広さを持つ「COSMOS」と呼ばれる天域(エリア)に老けた銀河の姿を求めました。COSMOS天域は「宇宙進化サーベイ(Cosmic Evolution Survey)」という観測プログラムにもとづき「ハッブル」宇宙望遠鏡などによって重点的に観測されているエリアで、全天のなかでも良質な観測データが揃っています。

研究チームはハワイの「すばる」望遠鏡やNASAの「スピッツァー」宇宙望遠鏡が観測したCOSMOS天域のデータに加え、「アルマ」望遠鏡を使った独自の観測も実施して老けた銀河の候補を探しました。その結果、近赤外線で明るく輝く3万7000個の天体から3つだけ、老けた銀河とみられる天体を見つけ出すことに成功しました。

その年齢は、宇宙誕生からおよそ10億年しか経っていない時点で、すでに7億歳に達していたとみられています。このことから、今回見つかった3つの銀河は宇宙が誕生してから3億年が経った頃(今からおよそ135億年前)に誕生したと推定されました。間接的ながらも、最初期に誕生した銀河を見つけることに成功したのです。

ただ、これらの銀河が本当に老けているのかどうかを判断するには、より詳細な観測が必要です。研究チームは、2021年に打ち上げが予定されているNASAの「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡であれば確認できるとして期待を寄せています。

遠方銀河の観測から系外惑星の大気観測まで幅広い研究分野から期待されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、無事に運用が始まることを祈りたいです。

 

Image Credit: 国立天文台
https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190910-alma-mawatari.html
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/beta/190910.html
文/松村武宏

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