火星の衛星表面から”火星地表のサンプル”を採取できる可能性が示される
sorae.jp / 2020年1月18日 11時20分
現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、火星の衛星表面からのサンプル採取と回収を目指す「火星衛星探査計画(MMX:Mars Moons eXploration)」を進めています。今回、火星の衛星から火星そのものの地表サンプルを間接的に採取できる可能性を示した研究成果が発表されました。
■フォボスに降り積もった火星地表の物質は従来予想の10~100倍に達する見込み火星に隕石が衝突すると、物質の一部が宇宙空間に巻き上げられ、時には地球にまで到達することがあります。火星の表面にかなり近いところ(高度6000kmほど)を周回している火星の衛星「フォボス」にも、隕石衝突によって巻き上げられた物質の一部が降り積もっていると考えられてきました。
今回、兵頭龍樹氏らの研究チームは、過去5億年のあいだに火星へ衝突した隕石によって巻き上げられた物質が、どれくらいフォボスに到達したのかをシミュレーションによって詳しく解析しました。その結果、フォボスの表面に到達しうる火星由来の物質は、従来の予想より10倍から100倍も多い可能性が示されました。
この研究で注目されているのは、JAXAが推進中のMMXによるサンプル採取です。MMXではフォボスあるいはもうひとつの衛星「ダイモス」の表面から10グラム以上のサンプルを採取し、地球へと持ち帰ることを計画しています。
研究チームでは、火星への隕石衝突はあらゆる地域で起きているため、フォボスの表面には火星地表の広範囲からさまざまな時代の物質が降り積もったとみています。フォボスの表面から10グラムのサンプルを採取できれば、そのなかには火星の各地から巻き上げられた微粒子が30粒以上含まれると研究チームは推定しており、火星各地の過去5億年に渡る地質的な情報が得られる可能性に期待を寄せています。
欧米による火星地表のサンプル採取ミッションでは、今年打ち上げ予定のNASAの火星探査車「マーズ2020」がサンプルを容器に入れて一旦保管し、2026年に打ち上げ予定の別の探査機がこれを回収、2031年に地球へと持ち帰ることが予定されています。
いっぽうJAXAが主導するMMXでは、探査機を2024年に打ち上げて、フォボスまたはダイモスから採取したサンプルを2029年に地球へと持ち帰ることが予定されています。火星の衛星から火星地表由来の物質を採取することができれば、間接的にではありますが、フォボスやダイモスに由来する物質とともに人類初となる火星地表のサンプル回収がMMXによって実現するかもしれません。
Image Credit: 東京工業大学
Source: 東京工業大学
文/松村武宏
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