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地上の石油・ガス探査から宇宙観測まで。ESA・企業連携によるガンマ線検出器

sorae.jp / 2020年6月9日 21時0分


高温・高エネルギーの宇宙を観測するために開発されたガンマ線検出器が、欧州宇宙機関(ESA)の「Technology Transfer」(技術移転)のプロセスにより石油やガスの探索、放射線のモニタリングに活用されています。

ガンマ線は電磁波の中でもっとも短い波長、もっとも高いエネルギーを持ちます(下図)。宇宙ではブラックホールの周辺や超新星爆発、非常に加熱されたガスのような高温の物体から発せられています。しかし地球上でも自然界や人間が作った放射性元素からガンマ線が発生しており、ノルウェーの検出器メーカー「Integrated Detector Electronics AS」(IDEAS)はそこにビジネスチャンスを見出しました。

電磁波の種類と波長・周波数・エネルギーの対応。ガンマ線は図の右端。Credit: ESA

IDEAS社は放射線の検出・イメージング(画像化)の回路やシステムを専門としており、宇宙分野の仕事もしていますがそれ以外の顧客とのビジネスも行っています。最初の画像は「ROSSPAD」という検出器ですが、IDEAS社のCEO(最高経営責任者)であるGunnar Maehlum氏によるとこれは「将来のガンマ線天文学のミッションのための純粋な宇宙関連プロジェクトとして始まった」といいます。それがESAの「Technology Development Element」と呼ばれるプログラムの支援を受け、宇宙以外へ応用するための機器開発のために資金援助を受けることができました。

設計の鍵となったのは「シンチレーション結晶」と呼ばれる物質です。シンチレーション結晶はガンマ線を可視光に変換することができ、変換された光を増幅して8ピクセル×8ピクセルの電子機器へ読み出して処理します。Maehlum氏は「ESAの支援により徐々にですが充分に設計を改善し、低コスト・低い消費電力で空間・時間・波長での高い分解能(識別する能力)を発揮することができました」と語っています。

ESAでは企業と連携し、宇宙分野での技術を地上でのビジネスに活用するため、実現性の調査や技術の検証、デモを実施しています。「私たちのケースでは検出器は大きなシステムの一部品として購入されますが、電力制御装置やマイクロコントローラー(機器を制御するための部品)、データを分析するための組み込みソフトウェアなども必要でした」(Maehlum氏)。その後、技術移転プロジェクトの成果は新しい製品となり、IDEAS社から販売されることとなりました。産業への応用には様々なものがあり、ガンマ線を放出する放射性廃棄物がある場所での環境モニタリングや、石油やガスの探査といったものがあります。石油やガスの探査をする際には、石油・ガス・水を識別するためにガンマ線が使われています。

石油・ガス探査のイメージ。Credit: ESA

IDEAS社は宇宙分野での仕事を離れたわけではなく、現在、そして将来の天文学のミッションへの仕事を続けています。今度は地上で培ったノウハウの宇宙への応用が期待されます。

 

Image: ESA
Source: ESA
文/北越康敬

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