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リュウグウとベンヌの起源と歴史に迫る研究、天文学者ブライアン・メイも参加

sorae.jp / 2020年6月11日 22時5分

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」がサンプルを採取した「リュウグウ」と、今年の10月にNASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」によるサンプル採取が実施される予定の「ベンヌ」。

今回、2つの小惑星が早い段階でそろばん玉(あるいはコマ)のような形になっていた可能性とともに、同じ天体の破片から同時に形成され得る過程を説明した研究成果が発表されています。

■形成後の早い段階でそろばん玉のような姿になっていた

小惑星リュウグウ(右)とベンヌ(左)(Credit: ESA)

Patrick Michel氏(コートダジュール天文台、フランス)らの研究グループは、直径100kmクラスの小惑星が衝突によって破壊された場合を想定し、その破片からより小さな小惑星が形成される複雑な過程を数か月かけてシミュレートしました。その結果、リュウグウやベンヌにみられるそろばん玉のような姿は、比較的早い段階で形成されることが明らかになったといいます。

小惑星のように小さな天体は、太陽光から受ける圧力や天体が放射する熱の強さが場所によって異なるために生じる「YORP効果」によって、自転速度が変化するとみられています。研究グループによると、リュウグウやベンヌもこの効果によって自転速度が徐々に速くなり、表面の物質が遠心力によって高緯度から低緯度の地域に集まることで、数百万年ほどかけてそろばん玉のような形になったと考えられてきたといいます。

しかし、日米の探査機による観測では尾根状の赤道付近に大きなクレーターが確認されており、クレーターが形成されるよりも前の段階ですでにそろばん玉のような形になっていたことが示唆されていました。今回のシミュレーション結果は、母天体(ある天体のもとになった天体)の破片が集まってリュウグウやベンヌが形成された当初か、あるいは形成から100万年未満という比較的短い期間におけるYORP効果によって、現在のようなそろばん玉に似た形になっていた可能性を示すものとなります。

■リュウグウとベンヌは形成当初から水和レベルが異なっていた可能性

衝突後の影響を再現したシミュレーションの初期段階におけるステレオグラム。上段は平行法、下段は交差法によって立体視できる。色は衝突による加熱のレベル(赤色ほど強く青色ほど弱い)を示す(Credit: Brian May and Claudia Manzoni)

また、今回のシミュレーションではリュウグウとベンヌにおける水和レベルの違いについても説明されています。

リュウグウとベンヌは同じ母天体の破片から形成されたきょうだいのような小惑星である可能性が指摘されており、どちらも水を取り込んだ含水鉱物の存在が確認されていますが、取り込まれている水の量はリュウグウのほうが少なく、ベンヌのほうが多いという違いがあるとされています。研究グループによるシミュレーションの結果、母天体のどの部分の破片から形成されたのかによって、リュウグウとベンヌに含まれる水の量の違いを説明できることが示されています。

研究グループでは、リュウグウとベンヌが同時に形成されたと仮定した上で、「母天体の中心に近い部分の破片からリュウグウが、表面に近い部分の破片からベンヌが形成された」か、あるいは「母天体の破壊につながった衝突地点に近い部分の破片からリュウグウが、衝突地点から離れた部分の破片からベンヌが形成された」という2通りの可能性が考えられるとしており、はやぶさ2とオシリス・レックスによって地球に持ち帰られるサンプルの分析に期待を寄せています。

なお、今回の研究にはロックバンド「クイーン」のギタリストであり天文学者のBrian May(ブライアン・メイ)氏も参加しています。母天体で起きた衝突後の影響を分析するステレオグラムの作成に携わったメイ氏は「小惑星の形と水和レベルはその起源と歴史を探る上で役立ちます」とコメントしています。

研究に参加したブライアン・メイ氏(Credit: ESA)

 

Image Credit: ESA
Source: アリゾナ大学 / ESA
文/松村武宏

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