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国際宇宙ステーション、接近するデブリを回避するため緊急の軌道変更を実施

sorae.jp / 2020年9月23日 17時49分

2018年10月にソユーズ宇宙船から撮影された国際宇宙ステーション(Credit: NASA/Roscosmos)

NASAは日本時間9月23日、国際宇宙ステーション(ISS)において未確認のスペースデブリ(宇宙ゴミ)との接近を回避するための軌道変更(デブリ回避マヌーバ)が同日6時19分に実施されたことを発表しました。ロスコスモスはISSがデブリと衝突する危険性が高い「レッドゾーン」にあったとしており、緊急の回避マヌーバが必要と判断されたとしています。

ISSに滞在している第63次長期滞在クルーの宇宙飛行士3名は万が一の場合に備えて「ソユーズ」宇宙船がドッキングしているISS後方のロシア区画で待機していましたが、実際に飛行士たちが危険にさらされることはなく、デブリは同日7時21分にISSから1.39km以内を通過していったとされています。

軌道の変更はISSの最後部にドッキングしているロシアの無人補給船「プログレスMS-14」のエンジンを2分30秒間噴射することで行われました。NASAのジム・ブライデンスタイン長官によると、ISSのデブリ回避マヌーバは今年に入って3回実施されたといいますが、ISSとの衝突が懸念される危険度の高いデブリの接近は過去2週間だけでも3件あったといいます。

■接近したデブリはH-IIAロケット40号機の一部の可能性も

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのJonathan McDowell氏は、今回ISSに接近したデブリ(同氏によるとデブリの国際衛星識別符号は「2018-084CQ」)が三菱重工の「H-IIA」ロケット40号機に由来するものだとしています。

The debris object that ISS avoided is now available on SpaceTrack as 2018-084CQ, 46477, from the breakup of Japan's H-2A F40 rocket stage. At 2221:07 UTC it passed within a few km of ISS at a relative velocity of 14 6 km/s, 422 km over the Pitcairn Is in the S Pacific pic.twitter.com/2T3yFQoFMT

— Jonathan McDowell (@planet4589) September 22, 2020

日本時間2018年10月29日に打ち上げが実施されたH-IIAロケット40号機には、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号(GOSAT-2)」、アラブ首長国連邦(UAE)ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)の観測衛星「ハリーファサット(KhalifaSat)」、それに国内の大学が開発した小型衛星4基が搭載されており、打ち上げは無事成功しています。

関連:温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」の打ち上げ成功

McDowell氏によると、軌道上に残されたH-IIAロケット40号機のロケットステージは残った燃料を使い切るための運用が行われたものの、2019年2月に何らかの理由で分裂。確認されたデブリのうち5つはすでに大気圏へ突入したものの、残る72個が現在も軌道を周回中とされています。

また、米空軍で宇宙状況把握の任務にあたる18 Space Control Squadronは、H-IIAロケット40号機の打ち上げで生じたデブリのひとつ(国際衛星識別符号「2018-084C」)が分裂し、関連する53個のデブリが確認されたことを今年の7月に発表しています。

#18SPCS has confirmed the breakup of H-2A DEB (#43673, 2018-084C) on July 12, 2020, at 0844 UTC. Tracking 53 associated pieces – no indication caused by collision. #spaceflightsafety #spacedebris

— 18 SPCS (@18SPCS) July 14, 2020

打ち上げに使われたロケットの一部や何らかの理由で運用を終えた人工衛星がデブリ化する問題はH-IIAに限らず、どのロケットや衛星でも起こり得ます。近年ではスペースXの「スターリンク」のように数千~数万の衛星で構成される衛星コンステレーションが構築されつつありますし、2019年にはインドの人工衛星破壊実験によって追跡できるものだけでも60個のデブリが生じており、衛星と衛星、あるいは衛星とデブリの衝突に対する懸念が高まっています。

数を増すデブリを除去したりデブリを生み出したりするのを防ぐための取り組みは、国内外で進められています。三菱重工とJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の打ち上げに使われていた「H-IIB」ロケットの2段目を安全な海域に制御落下する実験を行ってきました。不要になったロケットステージを制御できるうちに落下させてしまえば、後にデブリ化するのを防ぐことができます。

また、今年6月にはスカパーJSATがデブリ除去の事業化を目指すことを発表。人工流れ星の実現を目指すALEも、JAXAと共同で衛星のデブリ化を防止する装置の共同実証を行うことを今年の3月に発表しています。

 

関連:スカパーJSAT、デブリ除去サービス事業に着手。レーザー搭載衛星を開発へ

Image Credit: NASA/Roscosmos
Source: NASA / ROSCOSMOS / TASS
文/松村武宏

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