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地表から失われた火星の水、その多くが地殻に取り込まれている可能性

sorae.jp / 2021年3月23日 23時16分

火星探査機「バイキング」のオービター(軌道船)が撮影した約100枚の画像をもとに作成された火星の全体像(Credit: NASA/JPL-Caltech/USGS)

火星探査機「バイキング」のオービター(軌道船)が撮影した約100枚の画像をもとに作成された火星の全体像(Credit: NASA/JPL-Caltech/USGS)

火星の地表はとても乾燥していますが、かつては海が形成されるほどの水が液体として存在していたと考えられています。火星では液体の水が形成に関与したとみられる地形も見つかっており、一部の水質は生命の生存に適していた可能性も指摘されています。

火星表面の水は、主に大気の上層から宇宙へと散逸することで失われたと考えられてきました。しかしカリフォルニア工科大学のEva Scheller氏らの研究グループによると、地表に存在していた水のうち30~99パーセントが今も火星の地殻に閉じ込められている可能性があるようです。

■水は宇宙に散逸しただけでなく地殻にも取り込まれているかもしれない

研究グループはアメリカ航空宇宙局(NASA)によるこれまでの火星探査ミッションや隕石のデータをもとに、時代とともに変化した火星の水の量や現在の火星における大気や地殻の組成を分析しました。特に注目されたのは、水分子を構成する水素とその同位体である重水素の比率です。

水素の大半は陽子1つの原子核を持ちますが、自然界にごくわずかに存在する重水素は陽子1つと中性子1つでできた原子核を持っています。研究グループによると、中性子を持つ重水素よりも持たない水素のほうが軽くて大気から散逸しやすいため、大気を通じて水が失われたとすれば重水素が占める割合は増えることになるはずだといいます。

分析の結果、水が大気から散逸しただけでなく粘土や含水鉱物の形で地殻の内部にも取り込まれたとすれば、重水素の割合や過去に存在していた水の量を説明できることがわかったといいます。研究グループによると、火星には地表全体を100~1500mの深さで覆うほどの量の水(地球の大西洋を満たす海水の半分ほどの体積)があったものの、循環していた水の量はノアキス紀(約41億~37億年前)に40~95パーセント減少し、約30億年前には現在のレベルに達したとされています。

プレートテクトニクスがある地球の場合は地殻が沈み込んだり新たに生成されたりしており、地殻に取り込まれた水は火山活動などによって大気中に放出されることで循環しています。いっぽう、火星ではプレートの運動が存在しないため、一度地殻に取り込まれた水が再び放出されることはなく、地表が永続的に乾燥する環境に至ったと研究グループは考えています。

 

関連:太古の火星の水はなぜ失われたのか? 砂嵐が関係していた可能性が浮上

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/USGS
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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