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はやぶさ2、カメラ故障など現状や成果を発表。8月以降にカプセル全国巡回展示も

sorae.jp / 2021年4月28日 17時37分

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2021年4月21日、記者説明会を開催し、小惑星探査機「はやぶさ2」の現状と成果を発表しました。機体に一部故障が見られること、様々な手法を用い科学的成果が上がっていること、カプセル全国巡回展の展示施設公募が始まったことが述べられました。

はやぶさ2 機体の現状

拡張ミッション段階の「はやぶさ2」は設計寿命を超えて運用をしている現状で、故障や劣化が発生しているとのことでした。本サイトの【解説】「はやぶさ2」拡張ミッションは、あらゆることが実験に(2020/07/27)で触れていますが、設計寿命越えの機体は何が起きてもおかしくない状態ですし、そもそも拡張ミッションはあらゆる事が実験対象となっています。ですから今回の故障についても「新たな知見が得られた」と考えるべきでしょう。

・サンプラーホーンモニターカメラ(CAM-H)の故障

分離カメラ制御部(CAM-C)が故障したことによって、CAM-Hの撮影ができなくなりました。CAM-Cは、分離カメラ(DCAM3)およびサンプラーホーンモニターカメラ(CAM-H)の制御を司っています。DCAM3は人工クレータ生成実験(SCI運用)に先立ってリュウグウ上空で切り離され既に運用が終わっていますが、CAM-Hは探査機本体に付いています。

CAM-Hは、「はやぶさ2」プロジェクトを応援する一般からの寄付金を充てて搭載されたカメラで、探査機底面を向き、サンプラーホーンを写せるようになっています。最大の成果は、リュウグウ表面へのタッチダウンの瞬間を捉えたことでした。

故障の原因は放射線による劣化と考えられ、正常に起動せず、撮影もできない状況です。これまで原因調査と復旧可能性の検討を行ってきたのですが、プロジェクトとして故障と判断したということでした。プロジェクトからのコメントを記します。

CAM-Hは、「はやぶさ2」を代表する大きな成果のひとつとなりました。CAM-Hは皆様からの寄附金により実現しました。ご支援いただきました皆様に、心より御礼申し上げますとともに、この素晴らしい達成感を共有したいと思います。

CAM-Hのラストショット。2019年10月16日撮影(Credit: JAXA)

【▲ CAM-Hのラストショット。2019年10月16日撮影(Credit: JAXA)】

・その他の不具合や故障

姿勢制御用のスラスタ噴射部を保温するヒーターでも一部故障が発生しているものの、バックアップ手段により回復できているとのことです。引き続き省力運転で目標天体へ向けて運用を続けて行く予定です。

科学的成果

・リュウグウ試料の分光観測

持ち帰ったリュウグウのサンプルを、初期記載の一環として分光観測という手法で観測した結果、水酸基(OH基)を含む、あるいは有機物(-CH)や炭酸塩(-CO3)を含むと考えられる粒子やが見つかっているとのことです。

これらは、観測した粒子が間違いなくリュウグウから持ち帰ったものである証拠であり、それが太陽系の初期の物質であることを示しています。引き続き分析を行って言うとのことですから、今後の成果に期待が持てます。

赤外線分光観測の概念図(Credit: JAXA)

【▲ 赤外線分光観測の概念図(Credit: JAXA)】

リュウグウ試料の分光観測結果の一例(Credit: MicrOmega/IAS/CNES)

【▲ リュウグウ試料の分光観測結果の一例(Credit: MicrOmega/IAS/CNES)】

・リュウグウ上の含水鉱物分布

光学航法用の望遠カメラ(ONC-T)の感度ムラを補正し、リュウグウ表面に分布する含水鉱物にわずかにムラがあることを確認したとのことです。成果は2021年5月15日出版予定のICARUS誌にて報告予定で、オンラインでは2021年1月29日に公開されています。

・Improved method of hydrous mineral detection by latitudinal distribution of 0.7-μm surface reflectance absorption on the asteroid Ryugu(英文論文)

なお、カメラの感度ムラはその形状から「ネコ模様」と呼ばれていたとのこと。

【▲ 記者説明会資料より(Credit: JAXA)】

・地上望遠鏡による偏光観測

2020年9月から12月にかけ、地上の4施設の望遠鏡を用いた観測が行われ、小惑星リュウグウは太陽系小天体の史上最大値を更新するほどの高い偏光度が観測されました。この結果は、リュウグウ表層にある石や砂の鉱物組成や粒のサイズなど、特徴的な表層の状態を反映していると考えられています。

持ち帰ったサンプルの偏光度測定を行えば理由が分かると期待されており、また小型着陸機MASCOTの撮影したリュウグウ表面の写真などと付き合わせることで、サンプル採取時に失われてしまうリュウグウの表層構造の再現ができる可能性もあるとのことです。偏光度を用いた表層状態の調査が実証されると、直接探査に頼らずに天体表面状態の推定ができるようになります。すると、数多くの天体進化の履歴を追跡できるようになり、太陽系の起源と進化の解明に大きく貢献することになる、と期待されています。

カプセル巡回展の公募開始

JAXAは「はやぶさ2」再突入カプセルの全国巡回展示を8月以降に開始する予定と発表しました。

4月27日(火)募集開始、5月21日(金)募集締め切りで、結果通知は6月18日(金)の予定です。

詳しい情報は本日付プレスリリース 小惑星探査機「はやぶさ2」帰還カプセル展示の協力団体公募について(JAXA) に掲載されています。

新型コロナウイルス感染症の猛威は予断を許さない状況ですが、明るいニュースゆえなんとか開催して欲しいと願っています。

 

※一部誤字脱字を修正いたしました(4月28日23時)

Image Credit: JAXA、MicrOmega/IAS/CNES
文/金木利憲

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