ISSの新モジュール「プリチャル」11月の打ち上げに向けて準備が進む
sorae.jp / 2021年8月25日 10時45分
こちらはロシアの国営宇宙企業ロスコスモスが国際宇宙ステーション(ISS)に向けて2021年11月に打ち上げる予定のノードモジュール「プリチャル(Prichal)」(露:Причал、バース(停泊場所)の意味)です。カザフスタンのバイコヌール宇宙基地では、プリチャルの打ち上げに向けた準備が進められています。
プリチャルは合計6か所にドッキング機構を持つ比較的小さな球形のモジュールで、2021年7月にISSへドッキングしたロシア区画の多目的実験モジュール「ナウカ(Nauka)」の下部(天底側)に結合されます。ドッキング機構のうち1つはナウカとのドッキングに使用されるもので、残る5つは有人宇宙船「ソユーズ」、無人補給船「プログレス」、新たなモジュールなどのドッキングに対応します。
現在バイコヌール宇宙基地では、プリチャルおよび特別仕様の補給船「プログレスM-UM」が地上試験を受けています。プログレスM-UMは自力で飛行する能力を持たないプリチャルをISSまで輸送しドッキングさせる推進モジュールの役割を果たすもので、ドッキング後にプリチャルから切り離され、大気圏に再突入して廃棄されます。8月18日にはプリチャルを搭載したプログレスM-UMを打ち上げるためのソユーズロケットもバイコヌール宇宙基地に搬入されました。
プログレスM-UMは通常のプログレス補給船から貨物の収容スペースを取り除いたような姿をしていて、貨物のかわりにプリチャルを搭載します。なお、過去には小型研究モジュール2「ポイスク(Poisk)」やドッキング室「ピアース(Pirs)」の打ち上げとドッキングにも、同じような特別仕様の補給船が用いられたことがあります。
■ロシア独自の宇宙ステーション建設に向けた動きもISSロシア区画のドッキング能力を向上させるプリチャルの打ち上げ準備が進むいっぽう、ロシアはISSの後を見据えています。7月31日に開催されたロスコスモスの科学技術評議会の幹部会に関する発表によると、2028年までの運用が計画されているISSロシア区画は老朽化が目立ち、2024年以降の運用ではリスクがさらに高まることが指摘されています。また、地球近傍における宇宙インフラの継続的な開発を途絶えさせないために、ロシア独自の宇宙ステーション「ROSS」(Russian Orbital Service Station、直訳すれば「ロシア軌道サービスステーション」)の建設が提案されているとロスコスモスは付け加えています。
ロシアではISSロシア区画の運用と平行して、ROSSを構成する最初のモジュールの建造がすでに始まっています。ロスコスモス代表のドミトリー・ロゴージン氏は4月20日、ROSSの基礎となる最初のモジュールがRSCエネルギア社で建造されている様子をTwitterに投稿しました。このモジュールはもともとISSロシア区画へ2024年に追加することが計画されていた「科学電力モジュール(NEM)」で、ロゴージン氏によると2025年の打ち上げに向けた準備がRSCエネルギアで進められています。また、打ち上げには新型の「アンガラA5」ロケットが使われる予定です。
Первый базовый модуль для новой российской орбитальной служебной станции уже в работе. Ракетно-космической корпорации "Энергия" поставлена задача в 2025 году обеспечить его готовность к запуску на целевую орбиту. pic.twitter.com/CYa5o7yk4y
— РОГОЗИН (@Rogozin) April 20, 2021▲ROSS最初のモジュールの製造風景をシェアしたロゴージン氏のツイート▲
タス通信によると、ROSSは近年注目されている北極海航路を重視して、北極の上空を90分ごとに通過する傾斜角97~98度の軌道に建設されるといいます。ただし、先のロスコスモスの発表では、ROSSをISSの一部もしくは独立した宇宙ステーションとして検討することを科学技術評議会が勧告したとされており、ROSSがロシア固有の宇宙ステーションとして建設されるかどうか現時点では不透明です。ROSSは今夏のうちに概念設計が始まるとされており、地球低軌道における日米欧とロシアの協調の行方が注目されます。
関連:ISSへの統合作業進む新モジュール「ナウカ」エンジン誤噴射時にISSを1回転半させていた
Image Credit: Roscosmos
Source: Roscosmos / TASS
文/松村武宏
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