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「星のゆりかご」のシミュレーションデータを3Dプリント技術で立体化

sorae.jp / 2021年9月24日 10時38分

シミュレーションで再現された星形成領域の分子雲を3Dプリントした球体(Credit: Saurabh Mhatre)

【▲ シミュレーションで再現された星形成領域の分子雲を3Dプリントした球体(Credit: Saurabh Mhatre)】

こちらの画像に写っている綺麗なビー玉のような幾つもの球体、実は天文学的に大きな意味を持っています。これはカリフォルニア大学サンタクルーズ校のNia Imaraさんたちが3Dプリント技術を利用して作成したもので、球体の直径は8cm。樹脂で作られた球体の模様には、宇宙のガスと塵の集まりである分子雲(molecular cloud)についてのシミュレーションデータが用いられています。

分子雲では特に密度の高い部分(分子雲コア)が重力で収縮することで、星の赤ちゃんと言える原始星が誕生すると考えられています。やがて成長した原始星の中心では水素の核融合反応が起こるようになり、恒星としての生涯が始まります。分子雲から新たな星が形成されている領域は星形成領域と呼ばれますが、この球体は「星のゆりかご」とも表現される星形成領域のシミュレーションを文字通り手に取って観察できる作品なのです。

Imaraさんはフラットアイアン研究所のJohn Forbesさんやハーバード大学のJames Weaverさんと共同で、分子雲の進化を左右する3つの物理プロセス(乱流・重力・磁場)の影響を調べるために実施された9通りのシミュレーションをもとに、高解像度なマルチマテリアル(複合材料)3Dプリントの技術を利用してシミュレーションデータを立体化させました。天体物理学者であり芸術家でもあるImaraさんは「星が形成される場所の構造を視覚化し、物理的なプロセスをよりよく理解できるようにするためのインタラクティブなツールを私たちは求めていました」と語ります。

分子雲のシミュレーションデータを3Dプリントした球体は断面を観察することもできる(Credit: Saurabh Mhatre)

【▲ 分子雲のシミュレーションデータを3Dプリントした球体は断面を観察することもできる(Credit: Saurabh Mhatre)】

3Dプリントされた球体のうち、明るい素材の部分はシミュレーションが示す分子雲の密度が高い場所、暗い部分は密度の低い場所を表現しています。Forbesさんによると、立体化された分子雲のシミュレーションは見た目の素晴らしさだけでなく、通常の方法では見ることが難しい構造にも気付くことができるといいます。

たとえば、シート状の構造は断面がフィラメント状(繊維状)に見えるため、2Dで再現した断面図や投影図ではシート状であることを識別するのが難しいといいます。また、2つの領域を結びつけるような連続した構造があったとしても、2Dの視覚化では結びついていることに気付かないかもしれません。

いっぽう、分子雲のシミュレーションデータを物理的に立体化すれば、研究者が手に取って様々な角度から構造を確認することができます。Weaverさんは「シミュレーションごとの細かな違いを2Dに投影されたデータから読み取るのは難しいことが多かったのですが、3Dプリントされた立体物では明白でした」と語ります。

Imaraさんたちは、将来は3Dプリントされた分子雲のシミュレーションデータにさらなる情報を組み込むべく色を追加することや、オリオン座分子雲のように地球から比較的近い分子雲を立体化することも考えています。また、3Dプリントされたデータに教育や広報活動のツールとしての可能性を見出したImaraさんは、自身が教える天体物理学のコースで使用することも計画しているそうです。

 

Image Credit: Saurabh Mhatre
Source: カリフォルニア大学サンタクルーズ校
文/松村武宏

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