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太陽系外の岩石惑星と恒星の組成にみられる相関 「すばる望遠鏡」などの観測により初めて示される

sorae.jp / 2021年10月22日 21時0分

太陽に似た星の周囲で形成される惑星と、その材料である岩石や分子を描いたイメージ図(Credit: Tania Cunha (Planetário do Porto - Centro Ciência Viva & Instituto de Astrofísica e Ciências do Espaço))

【▲ 太陽に似た星の周囲で形成される惑星と、その材料である岩石や分子を描いたイメージ図(Credit: Tania Cunha (Planetário do Porto - Centro Ciência Viva & Instituto de Astrofísica e Ciências do Espaço))】

ポルトガル天体物理・宇宙科学研究所(IA)や久留米大学などの研究者からなる国際研究グループは、地球のように岩石を主体とした太陽系外惑星と、その系外惑星が周回している恒星の化学組成に相関がみられることを示した研究成果を発表しました。発表では、岩石惑星を形作る元素の組成が恒星とよく似ていることが知られていたのはこれまで太陽系が唯一であり、今回の成果は同様の相関が太陽系以外にもみられることを初めて示したものだとされています。

■恒星と系外惑星の鉄含有率にみられる相関を初めて示す

恒星は、ガスや塵が集まっている低温の分子雲のなかでも特に高密度な部分(分子雲コア)が、自らの重力で収縮し始めることで誕生すると考えられています。誕生したばかりの星はガスや塵でできた原始惑星系円盤に囲まれていて、円盤の一部は惑星を形成し、残りは星へ落下していくとみられています。

同じ材料から形成された恒星と惑星の組成は似ていることが考えられます。研究グループによると、太陽系では岩石惑星を形作るケイ素・鉄・マグネシウムといった元素の組成が太陽と似ている(※)ことが知られていました。ただ、この相関が確認されているのは太陽系が唯一の例であり、他の惑星系に関しては似ているはずだと推測するに留まっていたといいます。

※…後述するように水星は鉄の含有率が高いことが知られています

今回の研究対象となった系外惑星のひとつ「かに座55番星e」を描いた想像図(Credit: ESA/Hubble, M. Kornmesser)

【▲ 今回の研究対象となった系外惑星のひとつ「かに座55番星e」を描いた想像図(Credit: ESA/Hubble, M. Kornmesser)】

今回、研究グループは特徴がよく研究されている「かに座55番星e」など太陽系外の岩石惑星21個を選び出し、推定された鉄の組成を主星である恒星と比較しました。

これらの系外惑星は半径と質量の値が測定されているため、平均密度を割り出して鉄の含有量を推定することができます。また、恒星の組成は天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を捉える分光観測を行うことで調べることが可能です。分光観測では天体に存在する原子や分子が電磁波に残した痕跡(輝線や吸収線)を検出し、天体を構成する物質やその割合に関する情報を得ることができます。

国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」をはじめ、ハワイのマウナケア山頂、チリのラ・シヤ天文台やパラナル天文台、カナリア諸島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にある様々な望遠鏡の観測データを分析した結果、系外惑星とその主星の組成に相関があることが初めて示されました。つまり、主星の鉄含有率が低ければ系外惑星の鉄含有率も低く、主星の鉄含有率が高ければ系外惑星の鉄含有率も高くなるといった相関関係が、今回初めて明らかになったのです。

研究を率いたポルトガル天体物理・宇宙科学研究所のVardan Adibekyanさんは「地球型惑星の組成は、太陽系で知られていたのと同様に、中心星の組成と強く結びついていることがわかりました」と語ります。

■水星が高密度な惑星になった理由の解明につながることが期待される

ただし、恒星と系外惑星の鉄含有率にみられる相関は単純なものではないようです。研究グループによると、主星の鉄含有率が近い系外惑星どうしを比較すると、推定される系外惑星の鉄含有率には幅があるといいます。また、主星の鉄含有率が高い惑星系では非常に高い鉄含有率を持つ高密度な岩石惑星が存在する場合があり、鉄含有率が同じだとしても組成が異なる岩石惑星が形成される可能性を示唆しているように見えるといいます。

次の図は、今回調べられた岩石惑星の鉄含有率(縦軸)と主星(中心星)の鉄含有率(横軸)を示しています。主星の鉄含有率が同じでも惑星の鉄含有率には幅があることや、地球に似た鉄含有率を持つ惑星のグループ(水色)と高い鉄含有率を持つ高密度な惑星のグループ(灰色)のあいだにギャップがあることがわかります。

主星である恒星(横軸)と岩石惑星(縦軸)の鉄含有率を示した図。地球(Earth)の鉄含有率32%は太陽系(Solar System)とほぼ同じだが、水星(Mercury)は70%と高い(Credit: 国立天文台, Adibekyan et al., 2021/Instituto de Astrofísica e Ciências do Espaço)

【▲ 主星である恒星(横軸)と岩石惑星(縦軸)の鉄含有率を示した図。地球(Earth)の鉄含有率32%は太陽系(Solar System)とほぼ同じだが、水星(Mercury)は70%と高い(Credit: 国立天文台, Adibekyan et al., 2021/Instituto de Astrofísica e Ciências do Espaço)】

太陽系の場合、水星の鉄含有率が他の岩石惑星と比べて高いことが知られています。発表によると、塵が集まってできた原始惑星どうしの衝突・合体による惑星形成のシミュレーションでは鉄含有率が非常に高い高密度な惑星の存在を再現できないといい、高密度な惑星とそのほかの惑星では形成過程に違いがあるのではないかと予想されています。

Adibekyanさんは、高密度な系外惑星の形成を理解することは、水星が高密度な惑星になった理由を理解することにつながると期待しています。

 

関連:「奇妙な角度の原始惑星系円盤と軌道面」を持つ若い連星系を発見

Image Credit: Tania Cunha (Planetário do Porto - Centro Ciência Viva & Instituto de Astrofísica e Ciências do Espaço)
Source: Media 国立天文台 / カナリア天体物理学研究所(IAC)
文/松村武宏

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