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人類由来だった可能性大。“宇宙人探し”プロジェクトで見つかった信号の分析結果が発表される

sorae.jp / 2021年11月1日 21時0分

パークス天文台の64m電波望遠鏡(Credit: S.Amy, CSIRO)

【▲ パークス天文台の64m電波望遠鏡(Credit: S.Amy, CSIRO)】

昨年暮れから今年初めにかけて、地球外知的生命体探査(SETI:search for extraterrestrial intelligence)プロジェクト「ブレイクスルー・リッスン」が赤色矮星「プロキシマ・ケンタウリ」の方向から人類のものではない電波信号を検出した可能性があるとして話題になりました。プロキシマ・ケンタウリは「ケンタウルス座」の方向およそ4.2光年先にある太陽に最も近い恒星で、これまでに2つの太陽系外惑星が見つかっています。

今回、「BLC-1」(Breakthrough Listen Candidate 1)と呼ばれるこの信号に関する詳細な分析結果が2つの研究グループから発表されました。発表によると、BLC-1は地球外文明につながるものではなく、人類の文明活動に由来する地上で生成された電波の干渉だった可能性が高いようです。

■アンテナがプロキシマ・ケンタウリを向いていない時も含めて同じ特徴を持つ信号が複数検出されていた

研究グループによると、BLC-1はオーストラリアのパークス天文台にある64m電波望遠鏡によって2019年4月29日に取得された、プロキシマ・ケンタウリ方面の観測データに含まれていました。信号は982.002571MHzを中心とした針のように鋭く狭い範囲の周波数帯で、約2.5時間に渡って検出されたといいます。

関連:謎の電波信号の正体は? “宇宙人探し”プロジェクトが発見した信号の分析が進行中

ブレイクスルー・リッスンでは、電波による地球外知的生命体探査を「干し草の山から針を探すようなもの」と表現しています。ここでいう「針」とは地球外知的生命体の技術的兆候(テクノシグネチャー)となる信号で、「干し草の山」は人類の文明活動に由来する信号です。現代の人類はさまざまな周波数帯の電波を活用した文明活動を営んでいるため、観測データには人類由来の信号が大量に含まれてしまうのです。

BLC-1が含まれていた観測データの場合、雑音を取り除いた後に残った分析対象となる信号の数は実に417万2702件に上るといいます。このような大量の「干し草」の中から存在も定かではない「針」を探し出すために、ブレイクスルー・リッスンでは2つの基準を設けて信号をふるいにかけています。

1つ目の基準は「地球の自転にともなうドップラーシフト(ドップラー効果)が信号に現れている」こと。電波の発信源が地球の外にあって、受信装置が地球上にある場合、発信源と受信装置は地球の自転にあわせて周期的に近づいたり遠ざかったりします。すると、救急車のサイレン音が近づいてくる時は本来よりも高く、遠ざかる時は本来よりも低く聞こえるのと同じように、電波信号の周波数はわずかに高くなったり低くなったりといった変化を示します。

2つ目の基準は単純明快で「アンテナを探査対象に向けている時には検出できて、向けていない時には検出できない信号である」こと。信号の発信源が地球外の天体にある場合、アンテナが別の方向を向いている時には信号を検出できないはずです。しかし、信号が地上の発信源による電波の干渉であれば、アンテナがどこを向いていても検出できてしまいます。

ヒルズデール大学のShane Smithさんを筆頭とする第1の研究グループによると、1つ目の基準として信号の発信源が系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」(※)の表面にあると仮定し、予想されるドップラーシフトに適合する信号を研究グループが拾い出したところ、分析対象の数は400万件以上から5160件まで絞り込まれました。ここに2つ目の基準を適用したところ、たった1件だけ分析対象が残りました。これこそが前述のBLC-1だったのです。

※…質量は地球の約1.3倍、公転周期は約11日で、プロキシマ・ケンタウリのハビタブルゾーンを周回しているとみられる

系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」を描いた想像図(Credit: ESO)

【▲ 系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」を描いた想像図(Credit: ESO)】

とはいえ、「プロキシマ・ケンタウリbから送信されたかもしれない電波信号が検出された」からといって、ただちに「地球外文明に由来する電波信号だ」と結論することはできません。2つの基準をくぐり抜けた人類由来の電波干渉である可能性も含めて、より詳細な分析が必要です。

そこで、カリフォルニア大学バークレー校のSofia Sheikhさんを筆頭とする第2の研究グループは、他の時間帯で取得されたものを含めて観測データを洗い直しました。すると、BLC-1と同じ特徴を示す信号が60件ほど見つかったといいます。新たに見つかった信号は、2つ目の基準「アンテナを探査対象に向けている時だけ検出できる」を満たしておらず、プロキシマ・ケンタウリとは別の方向を向いている時にも検出されていました。

また、信号は一定の周波数間隔を空けてデータに記録されており、Sheikhさんは多くの電子機器で一般的に使われている発振器の高調波に対応しているように見えると指摘します。このことは、検出された信号が人類の作り出した機器に由来する電波干渉であることを示唆するといいます。発信源を特定するには至らなかったものの、Sheikhさんは「これらの信号は望遠鏡の近くで生成された人類由来のものであると自信を持って言うことができます」と語ります。

なお、ブレイクスルー・リッスンのもとで観測を行っているパークス天文台では、過去にも施設内の電子レンジに起因する電波の干渉が捉えられていたことがあります。今回も地球外知的生命体の発見につながる信号ではありませんでしたが、BLC-1が人類の文明活動に由来する電波干渉である可能性の高さは、今年初めの段階ですでに複数の研究者から指摘されていました。

ブレイクスルー・リッスンを含む複数の地球外知的生命体探査プロジェクトを進める「ブレイクスルー・イニシアチブ」を創設した資産家のYuri Milnerさんは「今回の結果の意義は、地球外文明の探索が今や成熟した厳正なる実験科学の一分野であることを示したところにあります」とコメントしています。

 

関連:地球外文明探査に大気汚染物質の二酸化窒素が利用できるかもしれない

Image Credit: S.Amy, CSIRO
Source: ブレイクスルー・イニシアチブ
文/松村武宏

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